第2話 精霊の少女
朝からしこたま飲んで、夕刻には宿屋へと帰ってきた。そしてそのままベッドにドサリと倒れ込む。すると後ろで少女の声が聞こえた。
「お兄さん。私に力をちょうだい」
酔って回らない頭。俺は適当に頷いた。
「あぁ。好きなだけ持ってけ」
すると弾んだ声が聞こえた。
「いいの!」
俺は寝返りを打って、仰向けになる。
「あぁ」
すると、体から何かが抜け落ちていく感覚がした。急激に寒くなる。俺はベッドの中に潜り込んだ。
「本当はもっと欲しいけど…… これ以上はお兄さんが死んじゃうから。また次回ね!」
そんな声が聞こえたが、俺はそれについての意味を考える思考を放棄した。眠いし気持ち悪いしで、さっさと眠かったからだ。
「おやすみ」
誰にともなく呟いた。そんな俺の言葉に返事があった。
「おやすみなさい」
※
※
※
深夜。嘔吐感で目が冷めた。急いでトイレにバタバタと駆け込んで吐いた。
「気持ち悪りぃ」
しばらくトイレでぐったりしていたら、またクスクスと笑い声が聞こえた。
「何なんだ?」
戸惑っていると目の前に少女が現れて言った。
「解毒する?」
何のことだと思った。少女が言う。
「気分が悪いんでしょ? 解毒したら楽になるよ?」
どうやら目の前の少女は酔いを覚ましてくれるようだ。俺は頷いた。
「あぁ。頼む」
すると、気分の悪さは消えて頭もスッキリとしてきた。目の前の少女は消えない。だから俺は尋ねた。
「お前はいったい何なんだ? 悪魔か何か?」
少女がニッコリと笑って頷いた。
「そう呼ぶ人たちもいるね」
俺は首を傾げる。
「そうじゃない人もいるのか?」
「うん。昔は精霊と言われてた」
「精霊ねぇ」
「うん。知らない?」
「いや。精霊の話は知ってる。契約した人に力を授けてくれたりするんだろ?」
少女がコクコクと頷いた。
「うんうん。そうそう。それだね」
「実在したのか」
「うん。まぁ最近は私達が見える人も、私達が気に入る人もほとんどいないけどね」
「ふぅん?」
少女が肩をすくめてクスクスと笑った。俺は問う。
「力って、どんな力なんだ? さっきの解毒がそれか?」
すると少女は首を傾けて答えた。
「色々できるよ。解毒はその一端だね」
「ふぅん」
俺は説明を続けてと先を促す。
「お兄さんがすることは二つ。私に何をして欲しいのか。明確に頭の中でそのイメージをすること。その代償として私に力を捧げること。だね!」
「チカラ?」
「うん」
「なんだそれ?」
「お兄さんの魂には精霊の因子と呼ばれる特別な力があるの」
「へぇ。それがあることで俺に何か利点ってあるのか?」
「うん。お兄さんが精霊に愛されやすくなるという利点があるよ」
「愛されやすくねぇ。どうせならもう少し年上の姿だったらなぁ」
すると少女は肩をすくめて言う。
「それが望みなら力をちょうだい。望みの姿に変わったげる」
俺は少し考えて質問をした。
「精霊の因子から得られる力とやらは失くなったりするのか?」
「うん。有限だね」
「なら、その話は無しだ。勿体ないからな」
「そっか。残念」
そう言って精霊の少女は消えたのだった。
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