きっとこの恋は

むらさきざとう

第1話

ある日の事だった。俺がおかしくなったのは。交際している彼女が、男だって知った時からであった。

振り返るこの数日、何気なく彼女、いや彼の部屋に行った時のことだった。

この学校は寮制だから、連絡を入れるのが面倒になった俺は、そのまま彼の部屋に行ってしまったのだ。

インターホンを押し、彼の部屋に入った時、俺は見てしまった。

彼が、男である証拠を。

お風呂上がりだったらしく、雑に羽織ったバスタオルだけでは、隠しきれずにいた。

俺は驚きのあまり、その場に倒れ込んでしまった。

「だ、大丈夫?」

彼は、心配そうに俺を覗き込むが、俺はそれどころじゃなかった。

男であることもそうだが、少し興奮している自分が信じられなかったのだ。

「あ、ああ。大丈夫だ」

俺は平静を装って、立ち上がる。

「ど、どうしたの?いきなり……」

バレていない事に賭けて、いつも通りを装う彼の姿が、とても愛しく思えた。

あの日はそのまま帰ったからあいつはバレてないと思ってるのだろうか?俺はバレていない事に賭けて、いつも通りを装う。

あれから少し経つが、あいつは良くも悪くもいつも通りだ。

いつも通りスカートを履いて、いつも通りに過ごす。

もうこれで、いいような気がしてきた。俺は、あいつが男であると知ってもなお、あいつを好きなんだ。

だから、この思いに蓋をしよう。

もう、忘れてしまおう。

そう思ってはいるものの、やっぱり、あいつの事が頭から離れない。

そんなある日、屋上に呼び出された。彼女、希光のぞみにだ。

「ねえ、どうして最近、私を避けるの?」

悲しそうな目で俺を見つめてくる。

「そ、それは……」

俺は言葉が出なかった。

だって、言ってしまったら、もうこの関係では居られないかもしれないから。

「やっぱ、あの日の事?」

希光の言うあの日がいつなのか、そんなのわからない。でも、多分あの時だろう。

今しかない。希光にこの事を話そう。

話さなきゃ、いけないんだ。

「なぁ、希光」

「やっぱ、あの日の事か、」

言葉が遮られる。

希光が何を考えてるか、全くわからなくて怖い。

「……あれでしょ?パピコ、1人で食べちゃったから……」

……え?「は?パピコ?」

「うん、そうくんが2人で分けようと買ってきたやつ全部食べちゃったやつ、あの時はごめんね?」

「お、おう」

なんだよそれ!俺の気持ち返してくれよ!!

バレてることバレてないのか、?

「怒ってない、?でも、あの時はごめんね、?」

「あ、ああ。別に大丈夫だ、その事は。」

とりあえず、バレてはいないようだ。

今、俺の気持ちは伝えるのは無理だよな、?

「あ、あのパピコ、また今度2人で分けような?な?」

「っ!うん!約束!」

希光と俺は指切りをした。

「あ、今日掃除当番なんだった、!ごめん私先帰るね!」

「お、おう。またな」

希光と俺は、屋上をでる。

希光、俺、お前が男でも好きみたいだ。



……バレてないのかな?

颯くん、まだ私の事好きでいてくれてるよね、?

バレてたらやだな〜、私が男ってことがバレてることがバレてること。

颯くんの考えてる事、分からないや。

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