第3話 毎朝の日課と怒る美少女
ピロロロロ‼︎
耳元で鳴るスマホのアラームにより、強制的に意識が覚醒した。
「さて本日の天気は……雨じゃないな」
毎朝五時に起床して15キロのランニングをしている。
これも幼い頃から過酷な訓練を受けてきた日課の一つだから辞めようと思っても辞めれないのだ。全裸姿からジャージを着て、リビングのソファーで寝ているだろう由梨を起こさないように慎重に階段を下りた。
「毎日朝起きてランニングして、ジムに寄り筋肉を鍛える。日頃のトレーニングが生死を分けるってね……」
こんな平和な国なのだから、そこまで大した揉め事もないだろうが。
軽くストレッチをして、腕時計のタイマーをスタートさせて時間を測る。こういうのはダラダラ走っても意味ないのだ。時間を短縮出来る度に、身体能力が向上したなという実感を得られる。
「さて今日も頑張りますかね!」
そう言って俺は引越してきて決めたコースを走るのだった。
****
「ただいま~」
時間は七時だ。そろそろ由梨も起きているだろうから
「おかえりなさい」
「おう。由梨、ソファーで寝るの止めろって。それじゃ身体が休まらないだろ?」
「いいのよ。私は亮と違って、学校に行ってるわけじゃないから、家でノンビリ出来るもの♪」
「クッ、羨ましい……」
「でも学生生活を望んだのは貴方でしょう?ほら朝ごはんの支度するからシャワーを浴びて来なさい」
「は~い!」
やはり由梨は俺の母親みたいだなと思いながら風呂場へ向かった。
「そんなに母性強いかな……」
由梨が小さく呟いていたのを俺の聴力は聞き逃さなかった。
****
相変らず燃費の悪すぎる俺の身体は由梨が作った豪勢な朝食を食べて、学校へと向かった。
ガヤガヤと騒がしい朝の教室。転校生で来たばかりだが、既に俺という印象が大人しいイメージが付いているからか、最初より話しかけられなくなった。でも話しかけられるって嬉しいんだけどな……自分からだと何をネタに話せばいいか分からなくってよ。全くこれじゃコミュ障高校生じゃないか……。
だが、俺にも出来ることをするのだ。まずは挨拶だ。万国どこもで挨拶は重要なのだから。
「グッドモーニング!」
『え……』
『今話したの松田君?』
『松田君ってそういう面白発言するキャラだったんだ』
おっと……緊張のあまり英語で話してしまった。改めて挨拶をしよう。
「お、おはようございますぅぅ!」
緊張で少し声が裏返っていた。今まで数々の修羅場を乗り越えてきたのに、何故ここで……。
教室にいるクラスメイト達も笑いながら俺に挨拶を返してくれた。
ふぅ……これで少しは話しかけて貰えるといいな。
俺の特技も考えてきたんだ。仕事柄碌でもない技術ばかりしか磨かれてないけど、ポーカーとかなら得意だ。なんなら由梨にしか負けない!それくらいの自信がある。由梨はエスパータイプだから俺の考え読まれるからダメなのだ。
クラスメイト達と話す内容について頭で色々考えていると、学年のマドンナが教室に近づいてきた。俺のシックスセンスの一つである嗅覚は誤魔化せないぜ。君から漂う香水とシャンプーのいい匂いが教室に近づく程濃くなっているのが分かるからな……なんか変態みたいだから、これ以上は止めておこう。
「みんな、おはよう!」
そういえば昨日コンビニで事件があったけど、彼女は大丈夫なのだろうか?
少し彼女へ視線を向けると、俺の方をガン見していた。
な、なんで、コッチを見てくるんだ。
白井に釣られてクラスから視線が俺の身体中に刺さるように向けられていた。
俺と白井の座席は少し距離があるからか、此方に白井が歩み寄ってきた。
「松田君、昨日はありがとう。でも何であの後逃げたのかな?私に教えなさい!」
『え、白井さんと転校生に何かあったのか?』
『逃げるって転校生何をしたんだよ……』
不味い変な誤解を生んで、友達が出来なくなるのは困る。
だが正直に話さないと真面目な白井は納得しないだろう。
ここは嘘偽りなく話すしかない!
「ら、ラーメン食べに行ってんです……」
「松田君……あんたラーメン食べるためだけに面倒事を私に押しつけたのね?」
「そう怒らないでよ。それにラーメン食べるだけって言っても人気店だよ?事件後に事情聴取されると待ち人の行列出来るし仕方ないさ!」
「あ、あんたねぇ……」
おっと不味い。白井の表情を見る限り明らかに怒っていた。
てか、この娘気が強い性格だよな……。
「そんなことより、今日の昼食一緒にラーメンでも食べる?」
俺は最初の友達が出来るかもと思って、本日の昼食に誘う。俺の昼食はもちろんカップラーメンである。最近は色々な種類に手を出していて、今ハマっているのはカレー味だ。
キンコンカンコン!
「……少し話しただけで分かったわ。あんたが不誠実な男だってことがね!期待して損したわっ!」
少し声を荒げて白井は俺に話して、自席へと戻っていった。
クラスメイト達が俺達の話を黙って聞いてから、静まりかえっていた。
ご、ごめんって……俺だって、あそこまで怒るとは思わなかったんだよ。
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