第30話:ファンクラブ結成?

門を通り抜けると、見覚えのある姿が目に入った。年配の衛兵ガレスさんだ。槍を片手に持ちながら、門の近くで周囲を見回している。


「ガレスさん、お久しぶりです」


僕が声をかけると、ガレスさんは振り向き、にっこりと笑った。


「おや、リオヴェルスじゃないか。無事に戻ってきたみたいだな」


「はい。今日は採取依頼を受けてきたんです。森の浅部で少しヒールグラスを集めました」


「そうか、初仕事ってわけだな。それにしても、ラフィナちゃんも一緒だったのか?」


ガレスさんはラフィナの方に視線を移し、優しい目で彼女を見た。ラフィナは少し緊張しながらも、小さく頷く。


「えっと、リオお兄ちゃんと一緒に頑張りました……!」


その言葉にガレスさんは感心したように頷き、声を低くして言った。


「そりゃ立派だ。お前さん、なかなか根性があるな。よくやったぞ、ラフィナちゃん」


「ありがとうございます……!」


ラフィナは顔を赤らめながら、恥ずかしそうに微笑んだ。その様子を見て、ガレスさんも満足そうに頷く。


「リオヴェルス、お前もなかなか面倒見がいいじゃないか。いい兄貴分だな」


「そうですかね。ラフィナが頑張ってくれるから、僕も助かってます」


そんな軽いやりとりをしている間に、ラフィナの表情が少しほころんでいくのが分かった。彼女にとって、自分が褒められることはまだ慣れていないことなんだろう。


「それじゃあ、達成報告に行ってきます。またどこかでお会いしましょう」


「おう、気をつけてな。街の中でも気を抜くなよ」


ガレスさんに見送られながら、僕たちは冒険者ギルドへ向かった。


ギルドに入ると、昼下がりの空気が漂う中、冒険者たちの話し声や笑い声が響いていた。僕たちは受付のカウンターに向かい、女性職員に声をかけた。


「採取依頼を完了しましたので、報告に来ました」


「お疲れ様です。では、採取したものを確認させていただきますね」


職員さんが手際よく袋の中身を確認し、ヒールグラスをひとつひとつ丁寧にチェックしていく。


「とても状態がいいですね。どれも傷が少なく、丁寧に扱われています」


彼女の言葉に、ラフィナが少し得意げな表情を浮かべた。僕は微笑みながら、彼女に目配せする。


「ラフィナが一緒に手伝ってくれたおかげです」


「本当に?すごいですね、ラフィナちゃん。初めてでここまで綺麗に採取できるのは、なかなかないことですよ」


「えっ、私、そんな……」


ラフィナは赤くなりながら、小さな声で否定する。職員はそれを見てさらに笑みを深めた。


「いやいや、本当に偉いぞ。君みたいな子がもっと増えれば、ギルドも明るくなるってもんだ」


職員の明るい声に、近くで手続きをしていた冒険者たちもこちらに注目してきた。ラフィナの様子を見ていた一人が、ぽつりと呟く。


「……あの子、なんか癒されるな」


「分かる。こういう純粋な子を見ると、世の中まだ捨てたもんじゃないって思うよな」


「俺、あの子に変なことする奴がいたらぶっ飛ばすわ」


「おいおい、俺もその時は手伝うからな」


そんなやり取りが聞こえてきて、僕は思わず苦笑いを浮かべた。ラフィナは自分が注目されていることに気づいていないのか、それとも気づかないふりをしているのか、ただもじもじとしている。


「ラフィナ、大丈夫だよ。みんな、君を褒めてるんだ」


僕が優しく声をかけると、彼女は小さく頷いてまた俯いた。その様子に、周囲からまた笑い声が漏れる。


「やっぱりあの子、守ってやりたくなるな」


「お兄ちゃんも、しっかりした人みたいだしな。良いコンビじゃないか」


冒険者たちの和やかな雰囲気が、ギルド全体に広がっていた。初めての依頼を無事に終えた達成感と、温かい空気に包まれて、僕たちは少しだけ疲れを忘れることができた。


「さて、次の準備もしないとな。ラフィナ、今日はよく頑張ったね」


「うん……ありがとう、リオお兄ちゃん」



そんな声がちらほら聞こえる中、僕たちはさらに買取の相談をした。


「あと、森でトゲオオカミを一匹倒したので、その買取もお願いしたいです」


「トゲオオカミ、ですか。では、素材を確認させていただきますね」


僕がストレージから素材を取り出すと、職員さんは目を丸くした。


「状態が素晴らしい……傷も少なく、魔力の残留も強いです。解体が非常に丁寧だったのが分かりますね」


「ありがとうございます。ラフィナと二人でやりました」


その言葉に職員さんは驚きの表情を浮かべ、ラフィナの方を見た。


「ラフィナちゃんも解体を?それはすごいですね。本当に頼もしいパートナーですね」


「えっと……リオお兄ちゃんが教えてくれたから、できただけです……」


ラフィナはますます赤くなりながら、視線を少し逸らしている。その様子に、周りの人たちがさらに微笑みを浮かべ、和やかな空気が広がった。


「素晴らしい成果でした。報酬も合わせて後ほどお渡ししますので、少しだけお待ちくださいね」


職員さんが素材を持って奥へ向かう間、僕たちはロビーで少し休憩することにした。ラフィナが僕の隣で小さな声でつぶやく。


「リオお兄ちゃん、みんな優しいね……」


「そうだね。ラフィナが頑張ったからだよ」


彼女の手を軽く叩いて、僕は優しく微笑んだ。その瞬間、彼女の笑顔がさらに輝きを増した気がした。



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