閑話:星を見送る夜(エルシア視点)

夜空に輝く星々が、広がる海の向こうに目を向けさせる。この島に来た時からずっと見てきた光景だけど、今日はどこか違う気がする。


焚き火が揺れる音、笑い声、魔物たちの跳ね回る姿――すべてが島での日々を思い出させてくれる。だけど、心の中には別れの影が落ちていた。


リオヴェルス。あの不思議な人は、私の退屈な生活をを一変させた存在だった。




用事があってこの島に来た時、彼の魔法に巻き込まれてしまった。誤解から攻撃をしてしまったが、彼は私の攻撃を意にも介さず、誤解を解こうとしていた。


その姿に私も呆気にとられ、すっかり敵対心も落ち着いたのを覚えてるわ。


そして、彼の行動や言葉を見ているうちに、私の中で少しずつ変化が生じた。何かを成し遂げようとする意志。何事にも楽しそうに向き合う姿――それは、私が長らく忘れていたものだった。



ものを作り、魔法を練習したり、魔物を浄化し、島を救ったりと彼と過ごした日々は、本当に濃厚だった。彼の隣でいると、すっかり新鮮さも忘れていた私も自然と笑顔になれた。


とんでもないことを成して心臓に悪いことも度々あったけどね。


でも、それも今日で終わり。


彼は旅立った。そして私は見送らないといけない。





「エルシアはどうするの?」


彼にそう聞かれた時、言葉がすぐに出てこなかった。無理にでも彼に付いていきたいと思った。だけど、それはできない。


契約に縛られた私は、彼のように自由に生きることはできない。


「ごめんね。私はここに残らなければならないの」


そう告げると、彼の瞳に少しだけ影が差すのが見えた。それを見て、胸が痛くなった。




でも彼は、そんな私に優しい言葉をくれた。


負担をかけたくなかったから黙ってたけど、彼にはお見通しだったみたいね。


「また戻ってくるよ。絶対に」


その言葉に、私は微笑むしかなかった。彼の約束を信じたい。そして、いつの日か再会するその時を楽しみに待つことにした。




別れの宴が開かれた夜、私は笑顔を作りながらも、どこかで彼との最後の時を意識していた。


だけど、彼は行くべき道を見つけた。その旅を邪魔するわけにはいかない。




朝が来た。彼が空に飛び立つその時、私は最後まで手を振り続けた。


「待ってるわ。だから、絶対に無事で帰ってきて」


声に出すのはこれが限界だった。彼の背中が小さくなり、やがて見えなくなった時、私は一筋の涙を流した。


私に任せられている役割のため、私から会いにいけることはないでしょう。


人にこれほど感情を揺さぶられたのは何時ぶりかしら。

リオの持つ力に影響されたのかもしれないわね。別に悪い気はしないけども。


考えてみると正直心配するだけ無駄な気もしてくるわ。

とりあえず私は私のやることに集中しないとね。


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余裕が出来たのでとりあえず序章分は全部公開しました。

続いて一章に突入です。

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