第11話:作るぞ!新拠点

「これをこうして……あっ、そっちの木材、もっとこっちに寄せてくれない?」


「はいはい、分かったわよ。でも、次はあなたも少し手を止めて休みなさいよ」


エルシアが魔法で木材を運びながら、僕を窘める。それでも、僕の手は止まらない。


ルミも得意の魔力操作で木材の加工を手伝ってくれて、作業は驚くほど順調に進んでいた。



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気づけば日が暮れ、僕たちは焚き火を囲んで一息ついていた。


「それにしても……思った以上に進んだな」


僕は作りかけの拠点を見上げる。最初は雨風を凌げるだけの簡素な小屋を作るつもりだったのに、今では立派な一軒家になりつつある。


エルシアが腕を組んで小屋の全体を眺めながら呟く。


「……というか、これ、小屋どころか家になってない?」


「そうかな?まだ途中だけど、まあ使いやすいようにいろいろ足したらこうなっただけだよ」


僕は無邪気に答えたが、エルシアはため息をついて続ける。


「いやいや、台所に魔道具を組み込んだ“調理台”とか、川から水を引いて作った“水道”とか、普通はこんなもの一日で作らないのよ!」



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どうにも僕は凝り性らしい。

確かに、気づけばいろんなものを作っていた。


まず、ルミの魔力を借りて川から水を引き込み、それを蓄えるタンクを作った。魔道具を応用して水を浄化する仕組みも加えた結果、いつでもきれいな水が使えるようになった。


「これ、便利でしょ?あっ、エルシア、次はお湯も出せるようにしようと思うんだ」


「もう十分すぎるほど便利よ!普通の家でもこんな設備はそうそうないわよ」


さらに、木材を加工して作った棚や机も配置済み。物を整理するための収納スペースも完備している。



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「ほら、あそこには道具を置けるスペースを作ったよ。道具が増えたらもっと拡張できるし」


「……本当に考えが尽きないわね。これ、普通の生活どころか、どこかの貴族が住んでる家みたいよ」


「そうか?でも、もっと便利にできそうな気がするんだよね」


「……いや、もうこれ以上はやめなさいってば」


エルシアが呆れたように笑いながら僕を見ている。その横でルミは小さく鳴き、尻尾を振りながら僕の作業をじっと見守っていた。



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夜が更ける頃、僕たちは完成したばかりの家に入った。


外はまだ木のフレームがむき出しの部分もあるけれど、中に入ればとても居心地がいい空間になっている。


焚き火代わりのランタンが温かい光を放ち、収納スペースには綺麗に整頓された道具や本が並んでいる。川の水音が遠くで聞こえ、静かな時間が流れる。


「どう?これならしばらく快適に過ごせそうでしょ?」


僕が得意げに言うと、エルシアは微妙な顔をしながら答える。


「……正直、ここまで便利だと驚きを通り越して呆れるわ。でも、まあ……快適ね」


「お前も気に入ったか、ルミ?」


僕がルミに声をかけると、彼は満足げに尻尾を振り、僕の足元に寄り添った。



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エルシアが呟く。


「普通はこんなものを作ろうなんて思わないわ。魔法や魔道具の知識があっても、ここまで実現できる人は見た事ないもの」


「まあ、楽しいからいいでしょ?」


僕は笑いながら答え、焚き火の明かりで輝くルミの毛並みを眺めていた。



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