第9話:ものづくり
魔法や武術を磨きながら、本から知識を吸収し、気ままに過ごす日々が続き…
気づけば、僕はものづくりにどハマりしていた。
最初は本で覚えた魔法を実践して、どんな攻撃ができるのか試してみたり、魔物を追い払うための技術を磨いていた。でも、ある時ふと本の片隅に載っていた「道具を作る技術」に目が留まった。
それが始まりだった。
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「これ、作れるんだな……」
僕は本に描かれた道具の図解をじっと見つめた。それは、木を削って作った弓と矢のイラストだった。
「作ってみたいな。道具を作れば、もっと生活が便利になるかもしれない」
その衝動のまま、僕は森の中に入り、適当な枝や石を集めてきた。そして、本の説明を頼りに道具を作るための作業を始めた。
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「この枝を削って……石をここにはめ込むのか?」
手元を眺めながら、初めての試みで少しだけ緊張していた。横ではルミが興味津々に僕の作業を見守っている。
「ルミも気になるのか?」
ルミは大きな尻尾を振りながら、小さく鳴いた。
「まあ、見てなって。これが成功すれば、次はもっと凄いものを作れるかもしれない」
僕は枝を削る手を止めず、慎重に形を整えた。そして何とか完成させた弓を見て、一人で頷く。
「よし、これで弓はできた……次は矢か」
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こうして道具を作る楽しさに目覚めた僕は、それからというもの毎日のようにものづくりに没頭した。
川辺で石を拾って槍の先に加工したり、木の枝を組み合わせて簡単な罠を作ったり。森の中で拾ったあらゆるものが、僕の手にかかると道具になっていった。
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「エルシア、見てよこれ、なかなかいい出来じゃない?」
僕は作りたての槍をエルシアに見せた。
「……あなた、ついこの前まで魔法や戦闘の訓練に夢中だったのに、今度はものづくり?本当に飽きないわね」
エルシアが呆れたように槍を眺める。その横で、ルミが槍をくんくん嗅いで興味を示している。
「どう?ルミも気に入ってるみたいだよ」
「気に入ってるというより、ただ興味があるだけでしょう。でも、確かにいい出来ね」
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時には木を削って弓を作り、時には金属っぽい石を火で加工して即席の刃物を作る。
「ふむ、この辺をもっと削れば鋭くなるな……」
ルミがじっと僕の作業を見つめ、時折尻尾を振っている。まるで「そこもう少しやれ」とでも言いたげだ。
「そんなに見つめるなよ、緊張するだろ」
「くふんっ!」
ルミは鼻を鳴らし、少しだけ僕から離れた。
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「次は何を作ろうか……あの本に載ってたあれを試してみるか」
僕は木を削る手を止め、本の中から興味深いページを見つけた。そこには複雑な機構を持つ装置が描かれている。
「これが作れたら、もう一人前の職人だね。世界基準ではどうか分からないけど。よし、やってみよう!」
エルシアが呆れたように肩をすくめる。
「本当に次から次へとよく思いつくわね。でも、確かにあなたの手先は器用だし、こういうことが向いているのかも」
「でしょ?これを作れば、もっと生活が便利になる……いや、楽しくなるかもしれないね」
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こうして僕は、ものづくりの日々に没頭していった。魔法や戦闘技術を磨くことも重要だったけれど、それとは別の楽しさを発見した瞬間だった。
「よし、次は何を作るかな……どんな道具だって作れる気がしてきたぞ!」
狐がその言葉に応えるように小さく鳴き、僕の足元で丸まる。その姿を見て、僕はまた新しい挑戦に胸を躍らせた。
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気づけば、僕はすっかりものづくりにハマっていた。
川辺に設置した水車で歯車を回し、そこから連動して簡易的な研磨機まで作り上げたのだ。
「よし、これで石を削れるぞ!」
僕は完成した装置を眺めて満足げに頷く。木のフレームに取り付けられた石の板が水車の力でぐるぐる回り、適当な石を削るのにちょうどいい速度で動いている。
ルミが尻尾を大きく振りながら装置に近づき、興味深そうに歯車を覗き込んでいる。
「どうだ?すごいだろ?」
「……いや、すごいというか、信じられないわね」
横で装置を見ていたエルシアが、ため息混じりに呟いた。
「リオ。普通の人間でもこれを作るのは大変なことよ。それを、魔法なしで、こんな短期間に作ったの?しかも、本に載ってた程度の知識だけで?」
「うん、なんか作ってたらどんどん楽しくなっちゃってさ。こういう仕組みを考えるのが面白いんだよ」
僕が得意げに言うと、エルシアはじっと僕を見つめる。
「……リオ。あなた、魔道具って知ってる?」
「……マドウグ?」
「知らないのね。魔道具は、マナを使って便利な機能を発揮する道具のことよ。例えば、この歯車の仕組みも魔力を使えばもっと簡単に動かせるわ」
その後も説明を受けたが、ミスリルや、アダマンタイトみたいな魔法金属や、魔物の体内で時折生成されている魔力の結晶…魔結晶みたいなマナと親和性の高い物質を素材として作られるようだ。
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エルシアの言葉に僕は目を輝かせた。
「それ、本当に便利なの?だって、魔力を使うなら魔法みたいなものでしょ?」
「違うわよ。魔道具は、一度作ってしまえば誰でも使えるのが特徴なの。魔法みたいに扱いが難しくないのよ」
「え、それすごいね!もっと詳しく教えてよ!」
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エルシアは焚き火の横に腰を下ろしながら、小さなため息をついた。
「……本当にあなたって、どこまでも好奇心旺盛ね。まあいいわ。魔道具は、魔力を込めることで動く道具よ。例えば、火を使うもの、風を起こすもの、水を浄化するものなんかがあるわね」
「水を浄化……って、それって飲み水をもっと綺麗にできるってことか?」
「ええ、そうよ。実際に王都なんかでは、魔道具が生活のあらゆる場面で使われているわ」
人間の体はそこまで丈夫ではないから飲み水一つにも気を使わなければいけないらしい。
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その説明を聞いて、僕は完全に心を奪われていた。
「それ、作れたりするの?いや、きっと作れるよね!だって魔法の知識を応用すればいいんでしょ?……あっ、じゃあこの歯車の仕組みと組み合わせたら、魔道具で動力を補えるんじゃない?」
僕はその場で考えを巡らせ、すぐに本を開いて魔道具について調べ始める。
「ちょっと……せめて休憩くらい挟みなさいよ。あなた、本当に止まらないのね」
「だって楽しいんだよ!魔道具と物理の仕組みを組み合わせたら、もっと凄いものが作れるじゃないか!」
ルミもそんな僕の勢いに合わせるように尻尾を振り、小さく鳴いた。
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「……まあ、あなたならそのうち魔道具の常識も覆しそうだけどね。でも、魔力の扱いが難しい部分もあるから、無理はしないでね」
「分かってるよ。ほら、次は何を作るか考えよう……水をもっと効率よく使う仕組みとか、いいかも!」
僕の無邪気な発言にエルシアは苦笑しながら、静かに焚き火の火を見つめていた。
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