第4話:魔法の基本と謎の精霊

森の中では風の音が心地よく響き、木々がざわめく。だが、魔法の練習をするには少し狭すぎる。


「もっと広い場所がいいな」


僕は本を閉じて立ち上がった。魔法の練習は順調だが、次の挑戦にはもう少しスペースが必要だ。建物の近くでは、生き物や環境に影響を及ぼすかもしれない。


「……砂浜に行こうか」


砂浜なら何かあっても迷惑をかけにくい。波の音も心を落ち着かせてくれる。



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海辺は昼間の光を浴びてきらきらと輝いていた。波が静かに打ち寄せ、白い砂がさらさらと風に流れている。この場所なら思う存分試せそうだ。


「さて、やってみるか」


魔法。この世界では基本的に「火、水、風、土」の四つの属性に分類される。それぞれ独自の特性を持ち、生き物には必ず一つ以上の適性があると言われている。僕もどこかに適性があるはずだが、それがどの属性かはまだ分からない。


火は力と破壊、水は癒しと柔軟さ、風は自由と速度、土は堅実さと防御――それぞれが基礎だ。そして、さらに複雑な属性に派生することもできるが、適性がなければ使いこなすのは難しい。


さらに、魔法のエネルギーである「魔力」は、周囲の自然からも引き出せるが、自分自身の魔力を使って一から作り出すこともできる。どちらかというと自身の魔力を使うほうが一般的らしい。



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まずは風の魔法。周囲の空気を感じながら、魔力を練り上げてみる。


「風よ、渦を巻け」


手のひらで魔力を回転させ、少しずつ速度を上げていく。すると、空気が渦を巻き、小さな竜巻が生じた。


「よし、成功だ」


竜巻は砂を巻き上げながら前方へと進む。風の魔法は動きが軽快で、扱いやすい印象だ。



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続いて水の魔法に挑戦する。手をかざし、波打ち際の水を引き寄せながら、自分の魔力を加えて形を整える。


「水よ……形を変えろ」


海から引き上げた水が、手のひらで球体となり、次に渦を巻き始めた。


「おお……できた」


水の魔法は柔軟で、応用範囲が広いが、扱いには繊細な技術が必要だ。特に水を操りながらさらに別の動きを加えるのは、初心者には難しい。



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「次は火だな」


僕は手をかざし、魔力を振動させて火の球を作り出す。火は破壊力に優れているものの、消えないように維持する必要があるため、消耗が激しい。


「よし……いける!」


手の中で赤い火の球がゆらゆらと燃え始めた。それを軽く放り投げると、砂浜でぱっと弾けて消える。


「これはこれで面白いな」


火の魔法は制御が難しいが、その力は破壊的だ。一歩間違えれば周囲に被害を与えてしまう。



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最後は土の魔法を試す。砂浜の砂を使いながら、魔力を練り上げて形を作る。


「土よ、形を作れ」


魔力で砂を硬化させ、柱のような形にする。さらにそれを崩し、別の形に変える練習を繰り返す。


「これもなかなか……」


しかし、その時だった。背後から微かな気配を感じた。振り返ると、魔法に関する本で軽く記されていた青白い光を放つ透き通った生物――精霊が現れていた。


「精霊……?」


僕が驚いている間に、制御しきれていなかった土の魔法が暴発しかけた。勢いで生じた衝撃波が精霊を直撃し、その場に倒れ込ませてしまう。


「しまった……!」


僕は急いで駆け寄り、精霊の様子を確認した。透き通る体に傷はないが、意識を失っているようだ。



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「どうすれば……」


何ができるだろうか、と僕は焦りながら回復魔法の基本を思い出した。回復魔法は火、水、風、土のそれぞれに存在するが、適性が必要なうえ、使いこなすには高い技術とセンスが求められる。


僕は精霊の体に手をかざし、水属性の回復魔法を試みることにした。


「……乱れた流れを整えるんだ」


魔力を静かに送り込み、精霊のエネルギーの流れを整える。すると、彼女の体が淡く光り始めた。


「……これで少しは大丈夫なはず」


精霊の体が徐々に安定し、穏やかな状態に戻る。目覚める様子はないが、危険な状態ではなくなったようだ。


「ごめん……僕のせいだな」


反省しながら、僕は精霊のそばで見守ることにした。魔法の力を学び始めたばかりの僕にとって、今回の出来事はその責任の重さを痛感させるものだった。



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「もっと力の加減を覚えないと……」


静かな波の音を聞きながら、僕は自分の未熟さを噛みしめた。同時に、この力を正しく使えるように、もっと学び続ける必要があると感じた。



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狐がそっと僕の膝に頭を乗せ、安らぐように目を閉じた。小鳥も近くの岩に降り立ち、静かに羽を休めている。


「君たちも、見守っていてくれるんだな」


僕は小さく微笑み、再び精霊に目を向けた。目覚めるまで、ここで見守るしかない。僕にできることはそれだけだ。


僕は精霊のそばで彼女が起きるのを待った。その中で、自分の魔法に対する責任と、もっと力を制御するための必要性を強く感じていた。



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