第43話:母なる海から生まれる疲労と喜び

夏、暑い夏。


こんな真夏日にはプールにつかりながら真っ青な海に思いをはせる。


「あー海行きてー。」


「海?」


「教科書に載っている海ですか?」


「うん、海。」


海の幸たべてー。


段々口が悪くなっていくー。


「海の幸が食べてみたい。真っ青な海で泳いでみたい。」


「いいですね。冷たいのかな?」


「海かー行ってみてーな!」


行ってみたいなー海。


こっちの世界に来てから一度も見たことないなー。


というか本当に青色なのかな?


七色に輝いてたりしない?


見て見たーい!




「パパー!海見て見たーい!」


「「見たーい!」」


ということでみんなでおねだりをしてみた。


フロージもヘディンもノリノリだ。


「うーん、そうだな~。旅行となると経費と時間がかかるからな~。」


「皆で行きたい!海に皆で行きたーい!」


「カノイが我儘言うなんて珍しいな。うーん、そうだな、皆で行くか!」


「やった!」


言ってみるもんだな!


「ちょうど夏場の食料調達についてどうするか悩んでいたところだしね。」


「え?」


食料用達?




「ということで!夏の狩猟祭開催だー!」


「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」


「どうしてこうなったー!」


夏の狩猟祭って何!?村人全員で何してるの!?


い、いや、皆で行きたいって言ったのは私なんだが、子供たち全員でって意味だったんだが!?


皆で海に遊びに行く作戦は失敗……失敗?まぁ失敗したわけだが、代わりに夏の狩猟祭なるものが開催されてしまった。


なんでも海にはびこる魔物を狩って食べるらしい。


いや魔物いるんかい!


そりゃそうか。広大で人があんまりいない海が安全なわけないよね。


……もういっそのこと狩り尽くしてから遊ぶか!


「うおー!やるぞー!」


「あ、カノイ達子供は釣りでもしていなさい。」


「あ、はーい。」


狩猟祭に子供は参加不可なのであった。




そんなわけで釣りをしているわけなのだが、


「カノイ様ー!なんかトゲトゲしたやつ釣れました!」


「カノイ様、牙がギザギザなやつ。」


「カノイ様!なんか毒々しい色の奴が釣れました!」


「なんで皆危険なのしか釣らないの?」


ねぇなんで?そんなのしかいないの?


鰯とか鯵とかいないの?


いないかー異世界だもんなー!


せめて食べられそうなのを釣りたいのだが……


「カ、カノイ!これは大物だぞ!」


「リボルの竿、折れそうなくらい引っ張られてますよ!」


「なんだってー!?」


いったい何を釣る気なんだ!?


やめろよ鮫みたいなのとか鯨みたいなのとか釣るの!


「うおりゃー!」


ざばーんと釣れたのはなんか、鮪みたいな魚だった。


え、美味そう。


「お?こいつは鮪じゃないか!食べられる奴だぞ~。あ、他のは毒があるからやめとけよ~。」


やったぜ!ということで鮪(異世界産)を食べてみることにした!


「「ファイア!」」


「よく焼きですね。」


「焦げ焦げー!」


「焦げー!」


「大物だからな、外側はこれくらい焼いたほうがいいんだよ!」


外の皮を剥ぐとペールオレンジのの身がこんにちは!


うーん美味しそう。


「ということでさっきファイアでついでに焼いといた焼き塩でいただくぞ!」


「お塩も焦げ焦げー?」


「この焦げが美味しいんだよ~。」


それでは実食!


「これは!」


「うまい!美味いよこれ!」


「焦げの香ばしさが身の生臭さを相殺してくれていてとっても食べやすいです!」


「お魚って美味しいんだね!」


これだよこれ!鮪のステーキ!懐かしいなー!


刺身が残ると次の日に焼いて食ったっけ!


「お兄ちゃん?泣いてるの?」


「にーちゃ、痛いところあるの?」


「え?」


あれ?どうやら私は泣いていたらしい。


久しぶりに懐かしいもの食べたからかな。


ちょっと、懐かしくなってしまった。


「うーん、痛いところはないかな~。ちょっとこの味に感動しちゃて。」


「しょうがねーな!カノイ!いっぱい食べていいぞ!」


「そうですね!カノイ様、たんとお食べ下さい!」


「ははは!ありがとう、皆!」


前世でも現世でも、いい縁に恵まれているな。


改めてそう思った。




「おーい!みんな帰るぞ~!」


「「「はーい!」」」


なんやかんやで楽しかった海への遠征はおしまい!


楽しかったなー!偶にならこういうのもいいよな!


唯一の心残りは泳いだりできなかったことくらいか。


「いや~大量大量!これなら毎年海の狩猟祭を開催してもいいかもな!」


「え」


マジで、毎年やるの?


それは……まぁ楽しいしいっか!


「よーし!来年こそは海で泳ぐぞー!」


「「「おー!」」」


カノイ・マークガーフ、10歳、望郷に浸った夏の出来事である。

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