第38話:国家情勢は難しい
9歳の春。
全国で異常気象が発生しているということで我が家もなかなかに大忙し。
といっても水がない地域に急に雨が降ったとかで乾燥地帯用の食物が根腐れしたとか。
足りない分を他の地域で賄うため家も多少の年貢を納めなければいけなくなったわけだ。
だ、誰のせいやろうな。
幸いなことに水不足のほうが深刻だったため何やら国家ぐるみの怪しい宗教が雨乞いをしていたらしく、現状「神のお恵みじゃ!」「我々の祈りが通じたんじゃ!」と吹聴してくれているらしい。
ありがたやありがたや?
まぁそんなわけで、被害と呼べる被害は最小限に、今後も同じような気性が続く可能性を示唆する学者の存在もあり、今後も継続して冬を安全に過ごせそうだ。
よかった。もっと深刻な被害とかが出てきたらどうしようかと思った。
やっぱり責任のとれない規模のことはするもんじゃないね。
さて、今日も今日とて生誕祭を楽しみに行こう!
「ケビン!ナンシー!マット!おかえりなさい!」
「カノイ~誕生日おめでとうな~。」
「ただいま~元気そうでよかった~。」
「フロージとヘディンも大きくなったな~。」
隣国に旅立っていた冒険者達が帰ってきた!
これは大ニュースだ!
隣国の情報を仕入れるチャンスでもある!
「ということで隣国のお話教えてー!」
「おしえてー!」
「えてー!」
「ははは、変わらないなお前達!」
「いいわよ!私達の調べてきたこと、教えてあげる!」
「ちょっと難しいかもしれないけどな。」
わーい!冒険者の話大好き!
「まずね、隣国までの道中がひどかったわ。」
「モンスターだらけでな、普通に死にかけたことも何度か。」
ふむふむ、やっぱり森の奥のほうは危険なんだな。
覚えとかないと。
「そして隣国に着くと、門があってな、旅人だろうと商人だろうと通行手形がないと通してもらえないんだ。」
「旅行でいく、なんてこと滅多にないだろうけどもしも訪ねる時があれば覚えておかないとね。」
ふーむ、通行規制があるのか。
なかなかに用心深いな。
「国家としては軍事国家に近い印象だ。定期的に軍のパレードが行われていてな。なかなかに圧巻だぞ?」
「その反面、物資は外部に依存しがちな感じだな。産地を確認したら、地元産のものがほとんどなかった。」
うーん、貿易で賄っているのか、侵略しているのか、どちらかによって脅威度が変わってくるな。
「今のところはどこかに戦争吹っ掛けようって感じじゃなかったわね。」
「やるとしても、森を超えなきゃいけないこっちは優先順位が低いだろうな。」
「そっかーよかった。」
「カノイは怖がりだなぁ。」
「ま、問題が起きたら私達も助太刀するわ。」
「"今は"大丈夫ってだけだからね。いつかはここも危なくなるかもしれない。その覚悟は持っていないとね。」
うぅ、戦争とかにならないといいなぁ……。
それにしても軍事国家か。脅威ではあるが、同盟を組めれば心強いな。
今自国の戦力がどのくらいなのかは知らないが、決して戦闘に特化しているとは言えないだろう。
なんせ辺境伯領の規模が精鋭50名そこらしかいないのである。
軍備に力を入れているのなら家はもっと栄えているはずだ。
豊かな国が強い国なわけではな。
それは私の元居た世界でもいえることだった。
まぁ今は攻め込んでこないという情報だけでありがたい。
戦争は、無いほうがいい。
仲良し作戦でも慣行するか?
いや、一介の領主代理では役不足だな。
よし!忘れよう!
今日はお誕生日!遊びに遊ぶぞー!
「ケビン!ナンシー!マット!今年も遊んでくでしょ?」
「おう!」
「もちろん!今年こそ勝つわ!」
「冒険者の底力!見せてやるぜ!」
カノイ・マークガーフ、9歳、国家情勢について少しだけ考えさせられた春の出来事である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます