第36話:ハロウィンの大本は収穫祭と悪霊払い
「新しいお祭りを作ろう!」
そう提案したのは森に入れず暇を持て余していたリボルである。
「それも!大人達が参加しちゃいけない子供だけのお祭り!」
「えー準備が大変そうだなぁ。」
「怒られないかなぁ。」
「なんだよお前ら!カノイが提案するときはいっつも賛成するくせに!」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ、リボル。」
「カノイ……どう思う?」
「え?うーんそうだなぁ。」
この季節はご存じの通り狩猟祭に収穫祭に大人達は大忙しだ。
しかし、新しくお祭りをするとなると保護者の監視が必要となるのは請け合いだ。
正直お願いしに行くわけにもいかないと思うのだが……。
「お祭り!フロージも手伝う!」
「ヘディンも!」
「よーしよしそうか~お祭りしたいか~お兄ちゃん頑張っちゃおうかな~!」
「カノイさぁ。」
「カノイ様ちょろ過ぎです。」
でも何のお祭りにしようかな~。
秋だしハロウィン?ハロウィンいいな~でもお菓子を毎家庭で準備するのはなかなかに難しいのでは?
砂糖がないこの地方では木の実を使って甘味を作るが、各ご家庭にそれを求めるのはどうなんだろう?
森に出る機会も多いし大丈夫か?
そうなると収穫祭の後の開催が必須だな。
まずは周知、事前に予告しておいて、事前の準備を呼びかけるところからだな。
よーし、
「とりあえず狩猟祭が始まる前に皆にお菓子を準備してもらうか!」
「お菓子ー?」
「お菓子好き~!」
「今年はお菓子をもらうお祭り、しような~!その名もハロウィン!」
「「「ハロウィン?」」」
「トリックオアトリート!」
「「「トリックオアトリート!」」」
「はいはい、こんなおばあちゃんのところにも来てくれてありがとね。」
そんなこんなで収穫祭の夜、ハロウィンの始まりだー!
今日中に村中の家を訪ねて回ることになっているのでみんな急ぎ足だ。
仮装ももちろんばっちり!
私とフロージとヘディンはヴァンパイア!
リボルは狼男……はトラウマで拒否されたので猫男に変更!
ヴァイスとシュバルツは魔法使い!
トムはゾンビ!
グルートはフランケンシュタインの怪物!
なぜか参加しているファンとジェイルとエイルは急だったのでシーツを被った典型的幽霊だ!
うん!かわいいね!
お菓子をもらいに行く家々の人達も可愛らしい子供達の姿にニコニコしている。
子供達のお祭り、ということだったが大人もなかなか楽しめているようでよかった。
「お菓子が用意できなかったらいたずらだぞ!」
「明日一日お家が子供の遊び場になっちゃうよ!」
「トリックオアトリート!お菓子くれないといたずらしちゃうぞ!」
そんな感じで悪戯の内容は「子供達に家を占領される」である。
最初はカトブレパスのフンを投げ入れるだの足を引っかけて転ばせる等々色々と危ない提案が多かったので安心安全でちょっと迷惑なくらいに抑えた結果この悪戯内容になった。
1日子供の遊び場になるなんてかわいいものであるが、作業や仕事に手がつかないという意味ではちょっと迷惑だ。
しかし、事前に予告していたためか、トリートをもらうご家庭はなかった。
何なら「いつでも遊びに来ていいのよ?」なんて暖かいお言葉までもらってしまった。
ありがたやありがたや。
「お菓子いっぱいねー!」
「ねー!」
「こんだけあれば冬の間もお菓子には困んねーな!」
「そうですね。皆さんそういったことも考えて、焼き菓子を多めに準備してくださったのかも。」
「美味しいがいっぱい。うれしいね!」
「うん!お兄ちゃんもいっぱいもらえてよかったね!」
「あたし達飛び入り参加だったんだけど、ちゃんと用意されてたわ。」
「読まれてるな。大人になっても参加すること。」
「読まれてるね。大人ってすごいなぁ。」
「こんなに食べられるかな……?」
収穫は上々!あとやることはっと、
「よーし!最後にご先祖様にお祈りだ!」
「お祈り?」
「ご先祖様?」
「ご先祖様に『いつも見守ってくれてありがとうございます。私達は元気です。』って伝えるんだよ。」
「やるー!」
「よくわかんないけどやるか!」
本当は子供に仮装させてあの世に連れてかれないようにしたり、悪霊を払うお祭りなんだけど、私達にはこれくらいでちょうどいいのだ。
多分ご先祖様強いだろうし、護って下さっているだろう!
カノイ・マークガーフ、8歳、村に新しい祭りを作った秋の出来事である。
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