第28話:読めない名前は普通に困る

予定より少し遅れましたが、我が家に第三子が生まれました!


「あーうあ?」


「赤ちゃん!にーによー!」


かわいいとかわいいがコラボしてる!


フロージは弟が生まれる前からもうお兄さん気分だった。


もしかしたらこの子の初めて喋る言葉はにーにかもしれない。


ちなみにフロージの最初の言葉は「ごはん!」だった。


争いを産まない元気な言葉だ。


正直私も最初の言葉ににーにと言わせようとしていたが、ごはんといわれてしまえばしょうがない。


そうだな、ごはん大好きだもんな。うぅ。


「あらあら、フロージちゃんがにーにならカノイちゃんは何になるのかしら~?」


は!そ、そうだ!にーには私のはずだ!


フロージがにーにになるのなら今後にーにが二人になってしまう!


「にーに?……うー……お兄様?」


「うぐぅ!」


かわいい!かわいいが!急にそう呼ばれるとなんか突き放された感が!


「ちょっと固いな~、無難にお兄ちゃん、でいいんじゃないか?」


パパナイス!


「フロージ~、お兄ちゃんだぞ~。」


「うん!お兄ちゃん!」


はいかわいい!弟グランプリ審査員特別賞受賞!


「よし!今日からフロージがにーにだ!」


「うん!フロージ、にーに!」


「よかったわね~カノイちゃん、フロージちゃん。」


「さて、それじゃあ名前を決めようか。」


カーン!バトル開始である。


「やっぱりかわいい名前がいいんじゃないかしら~。ちっちゃいくてかわいいし。」


「フロージ、かっこいい名前のほうがいい!」


「意味のある名前のほうがいいよね。」


「うーん語感が良くて覚えやすいほうがいいな~。」


名づけ、それは子供の人生を決める大切なこと。


名づけ、それは家族の中で誰が一番良い名前を思いつくかの戦い。


「リリーとかマリーがいいんじゃないかしら!」


「カトブレパス!ケルベロス!」


「ライト、ルーチェ、エードラム。」


どんどんと候補が上がってくる。


いや、フロージはかっこいいと思うものを上げてるだけだな。


そうだな~私が名づけるとしたら、


「ヘディン、かな。」


「ん?カノイ、名前はどういう意味だ?」


「ヒーローだよ。まだ小さくて弱い子だけど、いつか立派な子に育ってほしいから。」


そう、この子は実は未熟児として生まれてきた。


だからこそ、大きくなるころには元気に好きなことをして生きてほしい。


だから、ヒーロー……英雄という意味の名前をあげたいと思った。


「ヘディンか、いい名前だな。」


「カノイちゃん!この子のことをそんなに考えてくれているのね!とってもいい子!」


「おー!ヒーロー!かっこいい!」


どうやらみんな納得してくれたらしい。


私は新しい弟を抱き上げて告げる。


「よし!今日から君はヘディンだ!よろしく、ヘディン。」


「あー!」


「あらあら!もう気に入ってるわ!」


「よかったな、カノイ」


「お兄ちゃんフロージも!フロージも抱っこする!」


にぎやかな家族に囲まれて、たくさんの愛情に包まれて、強く、大きく育ってくれよ、ヘディン!


カノイ・マークガーフ、6歳、新たな家族の名付け親となった秋の出来事である。

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