第29話:冒険者ってもっと慎重なものじゃないのか

今年の冬はちょっとした問題が起きた。


なんとこんな吹雪の中、お客様がやってきたのだ。


「いや~助かりました。モンスターを狩っていたら急に吹雪いてきてしまって。」


「そうですか、冒険者なら、このあたりの気候について知らなくても納得だ。」


そんなことを話しているのは大人3人のグループと父と執事達。


何かあったときのために私達は合図があるまで自室に籠っているように言われている。


こんな時に何ができるか?


そう、ステータス確認である。


「2進数つらいよぅ……。」


0と1の文字の羅列を読み上げながら一人部屋で愚痴る。


問題はないが、単純にめんどくさい。


なんとか自動で翻訳したりできないものか……パソコンもないのに無理か。


「えーっと、ケビン、戦士、ナンシー、魔法使い、マット、スパイ……スパイ!?」


来た!めんどくさいの来た!


どうしよう、というかどこに対してのスパイだ!?


ステータス画面に人物詳細みたいな機能がないのが悔やまれる。


クソゲーか!


し、しかし、さすがにこの吹雪の中なら情報収集どころじゃないだろう。


でも、もし父上の首を取りに来たタイプのスパイだったら?


背筋がひやひやする。


やばいよやばいよ。


そんな情報を抱えて悶々としていると、扉が3回トントンと叩かれる。


出てきていいという合図だ。


いいのか?本当にいいのか?


安全確認の完了と判断した理由はなんだ!?


私は恐る恐る部屋の外に出た。


「こんにちは~。かわいいお子さん達ですね!」


「こんにちは。しばらくお世話になる冒険者のものです。こちらがケビン、私がナンシー、そしてこっちがマット。」


「よろしく。俺達は王都から来たんだ。何か面白い話でもできればいいんだが。」


ほう?王都から来た、と?


なら、他国のスパイの可能性は低いか?


いや、まだ油断はできんな。


「フロージはね!フロージっていうの!」


フロージ!?いい子だから挨拶に行っちゃった!?


「カノイ~、珍しいな、お前が人見知りするなんて。」


「あらあら、カノイちゃんお外の人が初めてだから恥ずかしいのね~。ゆっくり仲良くなっていきましょう?」


うわー受け入れ態勢が整っている。


本当に大丈夫なのだろうか?


カノイ・マークガーフ、6歳、初めて外の人間に遭遇した冬の出来事である。

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