第27話:水浴びって言うと行水っぽくなる
「あーつーいーなー!!!」
リボルが突然叫びだした。
暑さに脳をやられたか……かわいそうに。
「おいカノイ!かわいそうなものを見る目で見るなよ!」
おっと気持ちが視線に漏れていたか。いけないいけない。
ポーカーフェイスポーカーフェイスっと。
「熱いのは当たり前だろ~夏なんだから。」
「当り前じゃねえよ!涼しい夏があったっていいだろ!?」
たしかに?涼しい夏が存在してもいいのでは?
デバッグモードで何とかできたりする?
…………は!だめだだめだ!
能力はむやみに使ってはいけないと何度も言っていたじゃないか!
危ない危ない……どうやら私も大分
脳がやられているようだ……。
「そんなことになったら農作物が育たなくなってしまいます。」
「そ、そうだよ。それに涼しい夏なんて来ないって。」
「なんだよカノイ~ちょっといいかもって目してたくせに~。」
なんだと?どうやら視線に感情がのりまくっているらしい。
どうしよう、政治とかできなさそう。
あ、働かなければいいだけか。
「でも確かに今年は特に暑いね。」
「だろ~?夏過ぎるって。」
なんだその暑が夏いみたいな名詞は。
ちょっとわかっちゃうだろ。
「暑い夏……は!」
「どうしましたカノイ様?」
「なんか思いついたのか!?」
そうだ、そうだよ!
暑い夏といえばあれしかないじゃないか!
「水浴びしよう!」
「「え。」」
さて、ここでなぜ彼らがえ、なんて言ってくるのかをお教えししよう。
今世において水とは危険なものである。
例えば真水を飲んだ人が寄生虫に犯されて危うく死にかける、なんてことが頻発していた。
それ以外にも水が目に入ったら失明した、水から大量のモンスターがわいてきた、等々エトセトラエトセトラ。
とにかくこの世界の水とは危険なものである。
そのためどんな時も水に触れる場合は細心の注意を払い、飲み水や風呂の水は絶対に沸かして使わなければならないのだ。
え?なら真水につかるのは危険じゃないかって?
いやいや皆様お忘れか?
我々には魔法があるじゃないか!
「ウォーター!」
「つべたっ!」
「カノイ様!?なぜリボルに攻撃を!?」
「…………つべたい。」
「……え?」
「………………よし!風呂行こう風呂!」
「ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター」
「あぁ、カノイ様がウォーターを打つだけの人に……。」
「カノイ~がんばれ~あとちょっと~。」
そう魔法がある。だが水属性は私だけである。
初級の魔法しか使えない私は大方ウォーターマシン……。
お風呂一杯の水をくむのに結構な時間がかかるのだった。
「きゃ~カノイ様~かっこいい~。」
「カノイ様さいこ~」
「カノイ様ばんざ~い!」
こちらは先に水につけられているファン、ジェイル、エイル。
見事にふにゃふにゃである。
「そろそろいいんじゃね?」
「そうだね!カノイ様も涼みましょう!というか休憩しましょう!」
「お、おう、つかれた……。」
魔力って偉大だ。
私は普通よりちょっと多い魔力量に感謝した。
「じゃあせーので行くぞ!せーの!」
ざぶーん!
水が盛大にこぼれる音がする。
この瞬間が最高に気持ちいい!
「うわっぷ!なにすんのよ!」
「あはは!頭から思いっきり被ったー!」
「は、鼻に水が……。」
「うぇーい!さいこー!!!」
「やっちゃ駄目なことって楽しいよね!」
「あ~生き返った~。」
最高だ~プールだこれ~。
もっとこれは開かれるべき文化!
というか水魔法使いもっと存在するべき!
「ということでプール開放することにします!」
「やったー!」
「助かる~!」
「皆にも教えなきゃ!」
へへ~これでみんな幸せ…………。
「あらあらカノイちゃん?何をしているのかしら?」
そこには鬼がいた。
「は、はい、皆のためにプールを作ってました。」
「あら~魔法の練習?いいわね~家の風呂場で?」
「は、はい、皆のために水を……。」
「あら~じゃあちゃんと責任をもって水を張るのよ?お掃除もお願いね?」
「は、はい」
くぅ、子供なのに仕事が増えた……。
「安心しなさいカノイ様!」
「大丈夫だよ、俺達も手伝うから。」
「僕たちのためにやってくれたことだもん。」
「まかせろ!」
「一緒に頑張りましょう。」
「み、みんなぁ!」
「あらあら~カノイちゃんは皆に慕われてるのね~。うれしいわ~。」
よかった、私皆のために頑張ってよかった!
カノイ・マークガーフ、6歳、季節の風物詩とちょっと面倒な習慣を作った夏の出来事である。
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