第26話:大人だって遊んでいいじゃない
さて、6歳の誕生日。
そろそろただの鬼ごっこだけでは芸がないのではないかなんて思っているとジェイルとエイルから衝撃の事実を告げられる。
「そういえば俺ら来年で成人だったわ。生誕祭も今年で遊びおさめか~」
「そっか、来年からはもう大人だもんね」
なん……だと……!?
衝撃の事実、いや、確かに歴史の授業かなんかで昔は成人年齢が低いと聞いていたがもう成人だと!?
確かジェイルとエイルは今年で11歳だった気がする。
つまり来年12歳……12歳!?12歳で成人!?
確かに学校とかもなくもっぱら労働力として働いている彼らが成人するといってもほとんど何も変わらないだろう。
だが、待ってほしい。
来年から「はい、遊べません」とはならんだろう。
というかさ、大人ってなんで遊ばないの?
いや、大人の遊びをしているよって言えばしてるんだけどさ。
本気で駆けまわったり、本気で隠れたりできなくなるのは何故?
羞恥心?こちとら29で公園のブランコで本気出して骨折した子供大人やぞ!?
あ、はい、すみません、甥っ子と遊んでたんです。通報しないで。
そう、年下の子供と遊んで”あげる”という建前がないと大人って遊んだりできないのだ。
悲しきかな時間の流れ。
それにしたって12は若すぎるよ~。
もっと遊ぼうぜ~。
せめてお祝いの席でくらいさ~。
……うん?待てよ?
お祝いの席?みんなお休みだよな?
じゃあさぁ。
「みなさーん!きょうは無礼講でーす!」
「ど、どうしたんじゃカノイ様。」
「カノイ様は元気だね~。」
よし!皆こっちを見たな!じゃあ始めるぞ!
「今からマークガーフ一家が鬼となり村人全員を追いかけまーす!マークガーフ村隠れ鬼の始まりでーす!」
あ、みなさんご存じ?
この村の名前はマークガーフ村です。
村人約50名の比較的小さな村です。
全員が戦闘能力を有しているつよつよ村。
そんな奴らが本気で鬼ごっこするとなりゃそりゃあ面白いことになるぞ!
「最後まで生き残った人にはアイスキャンディーをプレゼント!皆!私と遊んで!」
「……アイスとあっちゃ本気を出さざる終えんなぁ。」
「今日はカノイ様のお誕生日だしねぇ。」
「よし!久しぶりに本気出しちゃうかな~!」
村人たちは皆くすくすと笑いながら参加を表明してくれる。
「カノイ……よーしやるか!」
「あらあら!私も参加していいの?楽しみだわ~。」
「フロージいっぱいつかまえるよ!」
うちの家族もやる気満々だ!お母様は妊娠中なのでほどほどにしといてください!
「……えへへ!これでまだ遊べるね!ジェイル!エイル!」
「……しょうがねぇな!そんじゃ、もうちょっと遊んでやるか!」
「カノイ様は優しいね。僕も……もっとみんなと遊んでいたいな!」
そうだ!子供にお願いされたら大人は答えなくちゃいけないんだよ!
ということで村人全員で本気で遊ぶが生誕祭の恒例となった。
私の生誕祭だけではなく子供達の生誕祭ではその子供の遊びたい遊びに大人も含めて全員付き合うのだ!
いいじゃないか!大人が本気で遊んだって!
偶になら許されるさ!誰に否定されるわけでもないしね!
そんなこんなで本気の遊びを始めた結果、日が暮れるまで見つからない村人がいたのは別の話。
……皆本気出し過ぎだって!
カノイ・マークガーフ、6歳、祭りごとに初めて手を出した春の出来事である。
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