第25話:自由に歩き回れるとどんな場所でもテンション上がるよね
今年の冬は何とも騒がしい。
毎年恒例フロージの誕生日、今年はフロージが歩き回れるようになったため準備中にフロージが訪ねてくることが多い。
「にーに!フロージおたんじょうびなの!なにしてるの?」
「フロージの誕生日祝いを作ってるんだよ~。」
今年は木の実を凍らせたアイスボールだ。
クーラーボックス程度の冷気より家の外に放り投げたほうがいいんじゃね?などと危うく命がけになるっところを執事達に止められた。
申し訳ない……弟のこととなるとつい気が動転してしまって。
色鮮やかな凍った木の実を覗き込んでフロージは目を輝かせる。
「うわ~きれいね~。おいしいおいしい?」
「うん、美味しいはずだよ~。楽しみに待っててね。」
「きれいなおいしい!たのしみ!」
はい、かわいい。
満足したのかフロージはメイド達のもとに駆けていく。
使用人達はフロージにおもちゃの積み木をプレゼントするらしいと聞いている。
角を削って安全に遊べるようにした自信作だとか。大量の積み木が入った大きな箱を見て、まだ中身を知らないフロージがきゃっきゃっとはしゃいでいる。
これはプレゼントの送り甲斐がある。
パタパタと歩き回っては「おたんじょうびなの!」と猛アピールをする姿は健気でかわいらしい。
く~、これが本当の子供らしさか!
とりあえずなんにでもにこにこしていた過去の自分を振り替えり、ちょっと反省する。
まぁ手のかからない子だったから許してほしい。
フロージは子供だがとてもいい子だ。
前世の私のようにわがままばかり言ったり、意味もなく泣いたりすることもない。
賢く、強く、とってもいい子。
次子がそんな子だと、長子としてしっかりしなければと改めて考えさせられる。
来年にはさらに下の弟が生まれるのだ。
気を引き締めねば。
そう思うと同時に、フロージもお兄ちゃんになるのか~、という考えに至る。
やばい、なんか泣きそうになってきた。
冬籠り中とは思えないほど盛大なお誕生日会。
お腹いっぱいご飯を食べて、木の実アイスを食べたフロージは今日一番の笑顔でこちらを向く。
「にーに!おいしいよ!」
かわ良い子!
「よかったな~フロージ。今日は全部食べていいんだぞ~!」
「うーんとね、あのね、ちょっと残す。」
その時私の頭に雷が落ちる。失礼、雷は実際には落ちていない。
目の前がちかちかと点滅しただけだ。
「どどどどどうしたんだい?フロージ?美味しくなかった?」
「ん-ん!おいしいよ!でも、でもね!」
何かを決心したかのような顔でフロージはこう言った。
「フロージおにいちゃんになるから!にーにみたいにおとうとにおいしいをあげるの!」
はい、泣いた。号泣。
「あらあらまあまあ!フロージちゃんはいい子ね!」
「フロージはもう立派なお兄ちゃんだな!」
「にーに?なかないで?おたんじょうびだよ?」
「フロージ……お兄ちゃん、お兄ちゃんな、うれしくて泣いているんだ。本当に、生まれてきてくれてありがとう……!」
神様、いるかもわからない神様、今この瞬間だけは家にこの子を使わせてくれたことを感謝します。
カノイ・マークガーフ、5歳、人生で初めて神の存在を認めそうになった冬の出来事である。
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