第24話:理想とは、高く持って然るべきものである

5歳の秋、狩猟祭と収穫祭の終わった後、一人のご老人のお葬式が行われた。


亡くなったのはいつも畑で葉野菜の世話をしていたご婦人。


カラッとした性格でケタケタと笑う姿が印象的なおばあちゃんだった。


「にーに、葉ばーば寝てるの?」


「うん、ながーく頑張ったからすっごく眠いんだ。ゆっくり寝かせてあげよう。」


葉ばーばことフェルトさん、天命60歳、息子と孫達に囲まれた穏やかな死に目だったという。


きっと私の目指す理想の人生に一番近かった人がフェルトさんだろう。


それにしても60とは大往生だ。


この世界においての寿命はご長寿さんで50がほとんどらしい。


前世で考えると短いが、大きな医療施設等がない今世においては妥当、いや、かなりご長寿だ。


なによりも戦死や事故死することもなく、大きな病気もなく、60年を生きるというのはとても奇跡的なことの積み重ねなのだろう。


私の前世を考えても、やはり長い。


よし、彼女を目標として定めよう。


私の夢に近かった目標が具体性を帯びてくる。


まずは60年生きること。これは老衰のためには必須といっていい条件だ。


事故死や戦死をしないこと。これは能力を駆使すれば何とかなる……かもしれない。


そして、大きな病気をしないこと。前世では成人病一歩手前だったが今世では健康体でいることを心がけよう。


あぁ、そのためには、


「サラダが食べたいな。」


「フロージも!葉ばーばのお野菜たべる!」


「そうだね、葉ばーばのお野菜は体にいいからね。いっぱい食べようね。」


最後に、何か、1つでもこの子達のために残せたらいいな。


改めてフェルトさんの偉大さを感じながら私達は墓地を出る。


願わくば、順番は守られることを、強く望む。


いや、皆にも長生きしてほしいな。


目指すはご長寿村!だね。


カノイ・マークガーフ、5歳、人生の目標を定めた秋の出来事である。

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