第23話:生命の神秘って想像以上に闇深いんだね

夏、それは暑い季節。そんな夏にお暑いニュースが到来!


母上、子供作るってよ!


わーい、弟だ~!


などと浮かれるのもものの一瞬、はて、と思い出す。


そういえば無性なのにどうやって繁殖してるんだ?


いや、エッチな意味で知りたいわけではない、


エッチなこともウェルカムだが、そもそもないものは出せないのではないだろうか?


今えげつない下ネタ言ったな。


まぁいい、とにかくどうやって増えるのか、知りたい!


好奇心が押さえられない!


「パパ~赤ちゃんはどこから来るの?」


「お?カノイは勉強熱心だな!じゃあ明日見に行くか!」


見に行く?え、何を?赤ちゃんが来るところを?下ネタか?


そんなこんなでもやもやむらむらしているとつれてこられたのは教会ことヴァイスとシュバルツの家。


ここで何をするのか……神に祈りでも捧げると赤ちゃんを授かるとか?お伽噺か。


「よくぞいらっしゃいました。お待ちしておりましたぞスヴェン様。」


「あぁ、例のものはあるか?カノイにも見せてやりたくてな。」


「ええ、準備は整っております。」


そう言って教会の裏庭に通されればなんとも神々しい、いや、禍々しい?大きな木が一本ポツンとたたずんでいた。


「木?」


「そうだよ。いいかい、カノイ。赤ちゃんって言うのはな、この木に血を捧げると種を授かるんだ。」


…………はい?


「では神官!お願いします!」


「あいわかりました。スヴェン様!お覚悟を!」


そう叫び合うと神官は鋭利な刃物、ナイフを取り出して父に飛びかかった。


いや嘘だろ!?


そうして切りつけられた父の腕からはどくどくと血がこぼれ落ち、土を濡らしていく。


「こ、こうして血を捧げると、木に実がなってな。それを食べると妊娠するんだ。神官、治療魔法を……」


「もう少し入れた方が元気な子に育ちますよ。我慢です、スヴェン様。」


神官も父もにこにことしながら、いや、父はちょっと顔色悪いな。それでも笑いながら私に子供の作り方をレクチャーしてくれる。


いや邪教かよ!?


某一大宗教っぽいものがあんまりないな、とは思っていたけれど家庭を持ちたければこんな邪教に強制入信とか聞いてない!


そもそもなんだその木の実!?どくどく動いてて気持ち悪いぞ!おぇ!


ちなみに以前あったリーベン家のシュバルツ事件は翌年の春先に食べる計画をしていた木の実を間違って冬ごろに食べてしまっていたのが原因だとか。


いや間違えるかい!


そんなこんなでどのご家庭も定期的に血を捧げに来ては、次の子を何時産むかを計画するものらしい。


え?じゃあ父上のズバッと切られたのは?


あれは父上のような血気盛んな若者限定の一回で木の実を実らせる方法らしく、普段は健康に支障がでないよう少量ずつ捧げに来るのが正しいそうだ。


いや、父上も横着せず地道に実を作れよ、こわいよ。


そうしてできた木の実を持って帰ると母が出迎えてくれた。


「あらあら!今回の木の実は綺麗な赤ね~きっと美人な子が生まれるわ~。」


そう言ってまだ生きているっぽい木の実をパクパクと食べる母上に私は恐怖しか覚えなかった。


ひ、ひぇ~。


ま、まぁなにはともあれ来年の今頃には新しい弟が生まれてくる予定だ!


フロージと楽しみにしながら1年を過ごそう!


カノイ・マークガーフ、5歳、なぜか人の血の臭いに慣れた気がした夏の出来事である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る