第10話 人形化の解除方法
棒人間の不思議な生命体みたいなのはビームを反射させた後、そのまま消滅した。
しかし、この不思議な生命体のことよりもオランチアは百花の心配をする方に気を取られていた。
「大丈夫ですか!!」
「百花ちゃん話せますか?」
私はすぐに彼女と会話ができるか確認を取ってみた。
『……。 あれ……? うち……?』
「百花ちゃん私の声が聞こえる……?」
『そ……そこにい、いるのはオランチアちゃん?』
どうやら、二人目のお人形さんが誕生したようだ。
「エへへ…… お人形さん二人目~♪」
なんて言ってる場合ではなく、すぐに元の姿に戻さないと!!
とは言うものの、この私でも人形にした人を元の姿に戻す方法は未だに見つけていない。
もう人形にしてから何日も経っているリベアナですらまだ元の姿に戻っていないため、時間経過では戻らない可能性も十分考えられる。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
ここで解決しなければ私は社会的に殺されてしまうのだから。
「ねえ。 百花ちゃん……。 もしかしたら私はあなたを元の姿に戻せないかもしれない……。 でも、私ができる最善は尽くそうと思うから私を信じて……。」
『う……うん。 が……がんば……って』
私は彼女を元の姿に戻す方法を考えてみた。
「そう言えば、人形にビームを当てたらどうなるんだろう?」
まだ人形にしたリベアナに一度もビームを当てたことはない。
試しにもう一度ビームを彼女に当ててみることにした。
【マジカル♡ハートビーム】
私は両手でハートを作り、精神を統一した。
そして、しばらく時間を置いてから人形に向かって小さいビームを撃ってみた。
「どうかな?」
『……。』
「やっぱり、ダメか……。」
どうやら、ビームをもう一度当てても元の姿には戻らないらしい。
その後も何度も色々な方法を試してみたが、どうしようもなかった。
「ううぅぅぅ……。 どうしよう……。 これはまずい!!」
オランチアは膝をついてガクガクと怯えだした。
このまま、元の姿に戻せなければ私はどうなるんだ……?
私は最悪の場合、刑務所行きなのか……。
そんな何か嫌な予感が体を震えさせた。
「いや……待てよ。 よく考えたら……。」
まだ相手を人形にできる能力を知っているのは人形になった二人だけだ。
つまり……。
「これ、周りから怪しまれなけばバレることなくね?」
そう考えたオランチアはすぐにカバンと百花の人形を持って、D棟を出た。
◇ ◇ ◇
「あ……。 あの……。 うち……元の姿に戻れるんかな……。」
「うん……。 きっと戻れるよ。」
オランチアは道場の受付カウンターまで戻ってきて、次回の稽古の予約を取った。
「セイント・クォーツさんはどうなされましたか。」
訓練員が突然そう尋ねてきたので、ビクっとオランチアは振り向いてこう答えた。
「急用らしくて、裏口から帰りました……。」
「はい。 そうですか。」
オランチアは人形にしたことがバレるのではと警戒しながら道場から出て、出来るだけ人気のない道を選びながら自宅まで帰ろうとした。
既に外は暗くなっており、携帯を見たら午後の七時前になっていた。
「いやあ、稽古やってただけでもうこんな時間……。 早く帰らないと……。」
実はオランチアこと義弘は既に体力的に限界が近づいている。
ハートビームで多くのエネルギーを消費してしまったので、このまま自宅に帰らなければ体力がそこを尽きて初日の時のように元の姿に戻ってしまう可能性があるのだ。
(このままだと、百花にも正体がバレてしまう。)
そしてオランチアが急いで帰る途中――
※※※※※
「……。」
「ねえ……。」
「え……。 誰?」
近くで誰かがオランチアに話しかけてきた。
それと同時に時間が停止したかのように音は静かになり、周りは動かなくなった。
周りがまるでモノクロのような色の存在しない世界に見える。
オランチアはすぐに周りを見回したが、誰も人はいなかった。
「その子をあなたは助けて上げて……。」
「え……。 どうやって……?」
「彼女に向かって、こう言いながらハートを作りなさい。」
【
※※※※※
「え……」
私はすぐに百花の人形を持って、近くの公園の椅子の上に持っていき、あの台詞を言って、ビームを撃つポーズを取った。
【あなたを開放してあげる】
オランチアの手からハート型の不思議な光が溢れ出て、彼女の人形に注がれた。
すると、百花の人形が眩く光り始めて――
「あ……あれ……? 私……元にも、戻った?」
そこには百花ことセイント・クオーツがいた。
「あ、元の姿に戻ったんだね……。」
オランチアは力を使い果たして、元のおっさんの姿に戻ってしまった。
俺はこの時、自分は終わったと確信した。
「あ……。 ご、ごめん。 元の姿はおっさんなんだ……。 自分の本名や身分を自己紹介の時に後ろめたい気持ちで言わなかった理由はこういうこと…… だったとさ……。」
俺はなんとしても言い訳で誤魔化したかった。
もう平常心ではいられなくなって、今すぐにでも時間を戻す能力が欲しいと願った。
「あの……。 すまん……。 無理だと思うけど、出来れば他の人には内緒にして欲しい……。」
「うん。 他の人には言わないよ。」
「え?」
「だって、うちにとって大事な友達だもん。 友達を大切にするのが魔法少女……でしょ?」
俺は人形にした時に彼女を戻すことができなくても良いと思っていた。
それなのに、この子はなんと俺のことを友達と言ってくれた。
俺は思わず、泣きそうになってしまった。
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