第5話 魔法少女道場に行ってみよう!!
「もう朝か……。今日は仕事も休みで時間があるぞ!!」
昨日はお愉しみだった。
久しぶりに良い体験ができたことと朝の調子が良かったことに義弘は満足感を得ていた。
「おはよう! リベアナちゃん!」
「もうお前の顔なんて見たくねぇ……。」
「そんなあぁ……。 酷いよぉ……。 グスン……。」
「そういうウソ泣きも含めて気持ち悪ィんだよ!」
俺は気分に乗ってリベアナを飾っている部屋に入って挨拶をしてみた。
反応は……まあ、予想通りだった。
「流石にあんなことしたらこうなるか……。」
とりあえず今日は休みだし、何か家でゲームでもするかなと言いたいところだが、リベアナのフィギュア化がいつまで続くか分からない現状、そんな悠長なことをやっている場合じゃない。
もう既に昨日、情欲に負けてあんなことをした時点でリベアナとの良好な関係を築くことは不可能なわけだから仮に元の姿に戻られたら、俺の首が飛ぶのは確定だろう。
「まずはもう一度、魔法少女になって戦闘力を上げる訓練をしなくては……。」
一応、魔法少女オタクであった俺は社会的な魔法少女の制度も理解している部分はある。
魔法少女成り立てである俺にとって打って付けとなる場所と言ったらあそこしかない。
「そうだ!! 魔法少女道場に行ってみよう!!」
◇ ◇ ◇
「確かこの辺りにこの街の道場があったはず……。」
ネットで調べた地図が正しければ、この辺に道場があるとのことなので周りを確認すると三人の学生服の女の子が近くの施設に入っていくところを見かけた。
「ねぇ。 今日の訓練は風魔法の続きをする?」
「うちはまだ、あの魔法……まだ使えこなせない……。」
「私はもう使いこなせた自身はあるな。」
どうやら、あの三人は魔法少女のようだ。
そして、その施設の上には思いっきり【魔法少女道場】と書かれていた。
「うおぉ!! 子供の頃、よく見に行ってた道場よりも何倍も大きいや!!」
魔法少女道場とは主に魔法少女達の訓練施設である。
ここには様々な階級の魔法少女が集まり、見習いから一流と呼ばれる幅広い層が日々練習に勤しんでいるのだ。
また、戦闘教育機関と呼ばれる国家の組織の傘下に位置する組織であり、他にも騎士育成所や魔道戦士開拓機構と呼ばれる組織もそれに属している。
「とりあえず、この姿だと訓練員に相手にされない。 変身しよう。」
「愛の力よ! 私のものとなりて! マジカル・オランチア!」
そう言って、俺……じゃなくて私は人気の無い道場の付近でオランチアに変身し、入り口に入った。
「とりあえず、訓練員に私の事情を少し話そう。」
訓練員とは主に戦闘教育を行う教育官で魔法少女道場の場合は11歳から34歳の魔法少女経験者だけがなれるという規則だ。
そして、道場によって制服は多少違うがその多くはエロ可愛い学生服やスーツのような服装である。
受付カウンターにはちょっと可愛さが残る二十代前半くらいの女性が座っていた。
その女性はオランチアが受付の用事を済ませようとカウンターに来るのを察してこちらを見つめた。
「あのー すみませーん。 私ここで訓練したいのですが大丈夫でしょうか?」
「わかりました。」
「ちょっと聞きたいことがありますがあなたは魔法少女登録書を持っていますか。」
「いいえ。 持っていません。」
「では、まず国の法律に従って魔法少女登録書を発行してもらいましょう。 この道場からでも手続きは可能ですので今から初めてもよろしいでしょうか。」
「じゃあ、お願い致します。」
社会的に魔法少女になると言っても、やはりそれなりの手続きは必要だ。
アニメみたいにすぐに周りから認められれば良いのに……。
◇ ◇ ◇
「とりあえず、後は料金を八千円払って登録の手続きは終わりっと。」
「オランチアさんには一ヶ月の間、仮登録書を渡すので毎回この道場に来る時は忘れずに持ってきてくださいね。」
「はいんッ!!」
どうやら、正式な魔法少女として扱われるにはだいたい一ヶ月掛かるらしい。
魔法少女登録書が直接手元に届かない限り、限定的な活動しかできないようだ。
「一ヶ月かあぁ……。」
リベアナの復活がもし一ヶ月以内なら私の人生は終わりだな……。
まあ、そんな最悪の状況ばかり想定してはいけない。
稽古は今日からできるのだから今から強くなっていくんだ。
「よっしゃー! とりあえず、どんな稽古しようか!」
「まずは基本的な戦いから始めてみてはどうでしょうか? 魔法の使い方や技の名前もしっかり教えましょう。」
「分かりました!」
「良い返事ですね。 気合が入ってるの感じられますよ!」
「それと自己紹介を忘れていたので今ここでしますね。」
「私の名前は
「分かった! 美々香ちゃんって呼ぶね!」
美々香は私を見つめながら笑顔で答えてくれた。
「では、自己紹介も終わったことだし私についてきてね。」
そう言って、美々香が私を訓練所まで連れていってくれた。
途中にも訓練所があり、その中で強そうな魔法少女たちが思いっきり戦っていたが、美々香はそのまま素通りして更に先に進んでいった。
「オランチアさんはまだ魔法少女になったばかりなのでD棟の訓練所に行きましょう。」
「魔法少女によって、使える施設も変わってきますか?」
「まだ魔法少女成り立てはD棟で稽古の特訓するのがこの道場での大筋になっています。」
どうやら、始めて練習する人に配慮してくれる優しい子のようだ。
それに相まって、大人らしい上品さを持ちつつも、何処となく幼さの残る可愛らしい顔立ちがとても良い。
もし、私が普段の肉体の時に接していたら思わず、見惚れてしまうだろう。
「顔面点数は87点……。 フヒヒ……。」
「ん? ちょっと顔が赤くなってるけど大丈夫?」
「あッ べ……別に風邪ではないので大丈夫です……。」
どうやら、女性の肉体になった今の状態でも見惚れてしまったようだ。
その可愛さと制服姿は反則だよぉ……。
「さあ、D棟まで着きました。 そのままお入りください。」
D棟の中は小さいとは言われていたものの、体感だと自宅のリビングの十倍くらいの広さはあるお部屋。
今の自分が戦うには充分な広さではあった。
「変身! 笑顔の指導者! シャトリエーゼ!」
美々香と部屋に入り、私が中を見回していると彼女が変身をした。
彼女がどのような魔法少女になるのか気になるな……。
「うぐ……こ……これはっ!?」
想像以上の可愛さであった……。 鼻血が出てしまうくらいに……。
茶色のセミロング、思いっきり肩を出したドレスによって見える巨乳とチョコレートを意識しているであろう衣装のバランスがとても良い。
また、可愛いらしいデザインのミニスカも高評価の領域に達していてロンググローブを付けた右手には可愛らしい杖が握られていた。
「あらら…… 本当に大丈夫ですか。 顔が赤いですよ?」
「だ……だって……。」
「まあ、別に体調が悪そうな感じじゃないし、大丈夫かな?」
「それじゃあ、稽古始めっよか!!」
「あ、はい。」
そう言って、魔法少女シャトリエーゼに変身した美々香は右手の杖から小さい光の弾を出現させて浮かばせる芸当を私の前で披露した。
「な、なんか今光った……?」
「ええ 私は光魔法を使うのが得意でしてね。」
「凄いな。」
魔法少女と言っても戦い方はいくつかある。
オランチアがこの前、リベアナと戦った肉弾戦術もあれば杖を使った魔法で敵を射撃するような戦い方もある。
「実は前に戦ったことがあって、その時は殴り合いをメインにしたの。」
「うむ……。 なるほど、そうなると戦い方は結構ハードだったのかな。」
「はい。 めっちゃ戦った後、痛かった。」
そう言うと、シャトリエーゼは右手に持っていた杖を近くの端っこに置いた。
「割と殴り合いは好きではないのですが……。」
「え……? ちょ…ちょっと……。」
シャトリエーゼはどうやら、格闘家っぽいやり方で私と戦おうと考えているようだ。
「いや、ちょっと待って……。 あの時はそういう戦い方しか思いつかなかっただけなので……。」
「あら……。 そうですか。 じゃあ、普通に魔法を使って遠距離戦の稽古をします?」
「できればそちらの方がいいかな。」
「じゃあ、今回は上手に魔法が使える稽古をします。」
魔法を使う稽古……。
恐らくは精神を集中させてエネルギーを出したり、動かす訓練になるのかな。
「まず、最初は人差し指を指してみて。」
「こう?」
「うん。」
「じゃあ、次はちょっと指に力を込めて光っているのを意識して。」
そうすると、不思議な光がオランチアの指先から現れた。
もうちょっと力を込めてみたらその光は更に大きくなった。
「ふぁ! なんかすごい!」
「おお!! 大きい!! それじゃ、その人差し指を壁の近くにある的に向けて思い切って引いてみて。」
「こんな感じ?」
その瞬間、光の弾が物凄い速さで真っ直ぐに飛んでいき、的が木端微塵に壊れた。
「おっと! あなた思った以上につよー! 普通の子なら始めたてはそんな威力にならないよ!」
始めてだけど、それなりに上手くできたようで良かった。
この調子なら割と魔動力の応用とかもすぐに覚えられたりして……。
「あの……。 結構先の話になると思うのですが、この調子で頑張れば魔動力を応用した魔動技とかも覚えることってできますかね?」
オランチアが少し不安そうに質問する。
「そうだね! もしかしたら他の人よりも早く取得できるかも?」
シャトリエーゼは壊れた的を魔法の力で修復させて、もう一度光の弾を作るようにオランチアに命じた。
「さっきの弾は思いっきり飛ばしちゃったみたいだけど、今度はもうちょっと力を抑えるように飛ばしてみてね。」
そう言われたのでオランチアはさっきよりも人差し指に力を込めずに精神をより強く集中させた。
「さっきよりも光の弾を上手に動かせてる……。 これなら……。」
そして、オランチアは的に向かってさっきよりも弱めに力を引いて弾を飛ばしてみた。
弾はヒュッと飛んでいき的を貫通した。
「オランチアちゃん強いね! この調子で行けば登録書が届く前に見習いランク卒業できちゃうね!」
「えっ? 見習いランクってそんなに簡単に卒業できちゃうの?」
「あなたはセンスがあるからね!」
ちょっと意外だなと私は思っている。
まあ、褒められるのは嬉しいけどね。
「すいません。 魔法少女ってもっと、その…… 強いイメージがあったのですが……。」
魔法少女と言えば、物凄い強さで世界を救うイメージを先行して考える義弘ことオランチアにとってはどうやら驚きがあるのだ。
「うーん。 確かに魔法少女は普通の魔力を持たない人間より強いけれど……。」
「アニメのキャラクターやテレビに載るような子はかなり上澄みの方だからねぇ。」
オランチアは思いっきりガッツポーズを取った。
自身の将来の有望さに自信が出てきたのだ。
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