第4話 人形の彼女たち

「さあ、着いた着いた。 思った以上に怪我の回復が速くて良かった!!」


 治療魔法は義弘が思った以上に強力な効果があった。

 あんな致命的な傷を負っても二日、三日で完治してしまうのだから、魔法というものが如何に凄いのかを義弘は思い知らされる。

 

 義弘は病院で三日目の夕方に完治したことを医師から診断され、無事に自宅に戻ってくることができたのだ。


『お前みたいな奴でも一応心配してくれる家族がいるんだな。』


「そんな言い方は失礼だぞ。 お前だって家族はいるだろう。」


『私の姉は魔獣契約をした人間で魔法少女狩りだ。 他にも私と同じ同胞がいる。』


『いつしか、私の安否を心配している仲間にお前は殺されるだろう。』


「ひィ!! 怖い!!」


 義弘はリベアナに仲間がいることを知り、少し怖気づいた。


『てか、誰もいなくね。』


「そんなことはないさ。 妻たちは必ず僕の帰りを見守ってくれている。」


 そう言うと義弘は人形になったリベアナをリビングまで持っていき、テーブルの上に置いた。


『おい。 どこ触ってんだこの変態!!』


「おっと失礼。」


 そして、義弘はリビングの電気を付けてソファーの方に向かっていった。

 人形になったリベアナは身動きが取れない姿でも顔が向いている方を見ることはできる。

 

 このリビングには至るとこに女の子の人形や何かのゲームの美少女のポスターが貼っており、ソファーの上にアニメのキャラクターのような姿をした人形が座っている。 


「うわ~~~~~~ん! シトラス・エリサ~~~~!!」


『うわぁ…なんだこいつ……。』


「寂しくなかったかい? エリサ……。 でも、もう大丈夫だ……。 僕は無事に帰還した……。」


『こ……こいつ人形と会話してやがる……。 あははは、きめぇ』


 リベアナは等身大の人形を泣きじゃくりながら抱いて接吻を交わしている義弘を嘲笑う。

 しかし、義弘はどうやら等身大の人形との会話に夢中なようでリベアナの笑い声は聞こえていないようだ。


「とりあえず、エリサちゃん。 これから荷物の整理してお風呂入ってくるから、少し待っててくれ。」


 そうして、義弘は荷物の片付けとリビングの掃除を始め、その後はすぐにお風呂に入っていった。



◇ ◇ ◇



「ぴか☆ぴかぁ~~~☆やっぱり普段使っている風呂が一番良いなぁ。」


 義弘は風呂から戻ってきた。

 義弘は今日もフィギュアと人形で遊ぼうとしている。

 

「今日はもう七時過ぎだし、さっき買った弁当でも食って人形遊びでもするか。」


 義弘は晩飯を食べた後、リベアナの人形をそのまま持って、二階の奥の部屋に連れ込んだ。 


『おえっ……。 なにこれ……。』


「ここはね、元々僕がいずれ出会う運命の人を迎えるために作った部屋だったんだ。 まあ、結局その運命の人はこの現実には存在しなかったのだがね。」


 部屋の中は一階のリビングが更に極まったオタク部屋になっており、六畳程度の大きさである。

 ここの部屋に入って一瞬でヤバさを感じたのが部屋全体がピンク色で覆われていることだ。

 ベッドはまるでアニメのお姫様が寝るようなデザインになっており、クローゼットや小さいテーブルも痛々しい造形をしているとリベアナは感じた。


「さあ、これからはここが君と僕の生活する場所になるよ♡ 一緒に仲良く暮らしていこうねリベアナちゃん♡」


 そして、義弘は部屋の中のクローゼットから人形用の衣装を取り出した。


「じゃじゃーーーん!! この服めっちゃ可愛い!! リベアナちゃんにピッタリ!!」


『お前、その服を私に着せんのか。 やめてくれよ。』


 義弘は重度の美少女オタであるため、ダッチワイフや1/3ドールのための服も一通り揃えているのである。


「うんうん。 やっぱりリベアナちゃんに合いそうな服はこの辺だなぁ……えへへへ♡」


 義弘がクローゼットから出してきた服はアニメの学生服、メイド服、魔法少女風の服と言ったオタクの好き好むような服ばかりだった。


『おいおいぃ……。 もっと普通の服ないのかよぉ……。』


「一応はあるとはいえ、どれも君のサイズには合わないね。」


 そう言うと、義弘は私が着ていた戦闘時に着ていたコスチュームを外して学生服を着せた。


「えへへ……。 リベアナちゃんまだ大人って感じじゃないのにイイ体型してるね♡」


『ひゃっ!』


「えへぇ♡」


『お前ッ!!』


「生まれて初めて……。 生身の女の子の裸を拝めて触れたの……♡ あっ…… でも今はフィギュアだから生身ってわけじゃないか。」


『この男、マジで最悪……。 早くなんとかしたい……。』


「うわあ!! めっちゃ似合ってるうぅぅ!」


 白いセーラーカラーと黄色いリボンに合う絶妙な茶色のセーラー服、赤ピンク色のチェック柄のミニスカ、黒ニーソ、学生が良く履くようなローファーの学生服を一式で私は着せられた。


『私の通っていた学校の制服よりはマシだな。』


「どう? 気に入ってくれた?」


『キモイ』


「酷い……。」


『まあ、この服自体のデザインはそこまで悪くはないけど……。』


 そして義弘は部屋から出ていき、巨大な学校の教室の模型を部屋に持ってきた。


『お……お前何持ってきてんの!?』


「何って言われても教室の模型としか……。」


「この模型は僕が可愛がっている彼女たちのためのものなんだ。」


 義弘は教室の模型の中に椅子と机をいくつか置き、今度は私と同じくらいの大きさの人形を持ってきて、私と一緒に席に座らせた。


「えへへ……。 これから授業の時間でぇ~~す♡」


 そう言うと、義弘は黒板の前に置いた席に他の人形よりも少し大人っぽく作られている顔と体型の人形を置いて、ニヤニヤと笑い出した。

 大人っぽい人形以外は全員、リベアナと全く同じ衣装を着せられて、大人っぽい人形には女性向けのスーツを着せた。 


「さあ、僕の愛するメリィ先生!! 今日は可愛い転校生が入ってきましたよ!!」


 義弘はそう言うと、手を使ってメリィ先生と呼んだ大人っぽい人形を歩かせてリベアナの前まで運んできた。


「さあ、今日の授業はリベアナちゃんの転校祝いをクラスのみんなで迎えることだよぉ!!」


 そう義弘が言うと周りに置いた学生服の人形達もリベアナの前まで持ってきて、リベアナを机の上で仰向けにさせた。

 大人っぽい人形の口を私の口の上に乗せ、リベアナの胸を揉むような形で他の人形の手を置かせたり、リベアナのスカートの中に顔を突っ込ませてきた。


『ちょっ……。 おい!! この変態がぁ!!』


「ああぁぁっ…………。 リベアナちゃん可愛いぃん♡」


 リベアナは義弘の考えていることが分かってしまった。

 リベアナは義弘の気色悪い趣味にこれからも付き合い続けなければならないのかと考えてしまい、精神的頭痛に悩まされた。


「これこそ百合の楽園……。 女子校の生徒の友情と愛を今回は上手に表現しました。 さぁ、もっと楽しみましょう……。」



◇ ◇ ◇



「はぁ……。 リベアナちゃん……。 また遊ぼうねぇ。」


『マジでキモかった……。 オェ……。』


「そんな酷いこと言わないでね♡」


 義弘はマスターベーションが終わると部屋にあった人形や教室の模型を片付け始めて、部屋を出ていった。

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