第2話 人形化の魔法少女

 義弘は憧れの存在であり、自分の手には一生届かないものに自分自身がなってしまったという悦楽に浸っていた。

 生まれ変わった自分の姿に見惚れて、自制心を抑えられなくなってしまった。


「あははははは!! 俺の人生の夜明けが来たあぁぁぁぁ!!」


 絶頂を迎えて、徐々に冷静さを取り戻す義弘。

 しかし、まだ魔法少女になれる力を手に入れたとは言え、すぐにその力を使うことはできない。


「とりあえず、元の姿に戻って会社に戻るか……。」


 そう言えば、魔法少女から元の姿に戻るには掛け声が必要だとか……。

 とりあえず、何か唱えればよいのだろうか。


「なんかあそこにいる魔法少女様子変だよね。 何か怪しい。」


「おーい。 僕たちのために今日も仕事頑張れよー。」


 さっきのおかしな行動を取り続けたこと、公園で魔法少女が吞気に飯食ってるところから周りから怪しまれている。


「こうなったら一旦、この場を離れよう。」


 ということであまり人がいなそうな場所に行くとした。


   

◇ ◇ ◇



 魔法少女の身体能力なので街の郊外に来るのにそこまでの時間はかからなかった。                             

 しかし、変身解除という根本的な解決ができたわけではない。


「マジでどうすれば解除できるんだこれ! 何か解除するための合言葉でもあるのか!」


 魔法少女衣装の胸元にあるリボンに装着されているコンパクトが怪しかったので弄ってみたが特に何も起きなかった。

 また、魔法少女らしく、自分の名前を言って「変身解除!!」と叫んでみたが、こちらも特に変化なし……。

 マジでこのままじゃ、休憩終わりまでに会社に戻ってこれない!

 もういっそのこと、この格好で会社に戻ろうかと考えた。

 言い訳としては何か公園で変身するための呪文唱えたらこんな姿になっちゃいました的なこと言えばいいかなと思ったりもする……。


「いや、流石に無理だな!!」


 時間的にじっくりと考えている暇もない。

 俺が街の外れで焦っているとぬいぐるみのマスコットキャラクターのようなもの四体とへそ出してるミニスカの露出度の高い女の子一人がこっちのほうに向かっている。 

 髪型は金髪のツインテールでキリッとした顔立ちとつり目が相まって気の強そうな雰囲気を醸し出している。

 年齢的に恐らく、ティーンエイジャーだろうか。


「なんかのコスプレのイベントかな。 いや、いくら街の近くだからと言って人の気配がないところでそんなことしないか。」


 だがそんな吞気なことは思ってられなかった。 

 それはこの周辺がつい一週間前にTVのニュースで魔獣の被害にあった場所であり、ここの近隣住民はみんな違う地域に避難してしまったという事件があった場所だからだ。

 

 確かこの事件の首謀者は魔獣契約によって特殊な力を得た人間だと言われているが……。


「おい。 お前魔法少女だろ?」


「うん。まあ一応。」


「ならさっさとここで死んでしまいな!」


 そう言うと、彼女が小鎌のような形をした武器を出してマスコットのキャラクターと共に襲ってきた。

 恐らく、この少女は魔獣契約によって特殊な身体能力と異能力を持っていることだろう。

 そしてその周りにいるマスコットぽいのはみんな魔獣だと考えられる。


「うおっと! 危ない!」


「ちっ」


「お前いきなり襲い掛かってくんなよ!」


「はあ? お前何言ってんだ。 魔獣側が魔法少女を躊躇なく殺すのは当たり前だろ。」


「まあ、確かにそれはそうなんだがね。 私はまだこの姿で上手に体を動かすのには慣れてないんだよね。」


「へえ。 そうかい。 なら簡単に始末できそうだなあぁ!!」


 そう彼女が言うと思いっきり小釜を地面に突き刺した。それと同時に地面から衝撃波のようなものが出てきた。


「実際に戦ってみると敵からの攻撃がこんなにスリルあるなんてな。 しかも。コンクリート思いっきり割れてるし。」


 こんなことを口では言ってるが本当はちょっと衝撃波の速さが早くて冷や汗が出ている自分がいる。


「お前本当は戦い慣れてるだろ。 魔法少女成り立てがこんな強くないからな。」


「いやいや、本当に今日魔法少女になったばかりのおっさんだから!」


「あっ? おっさん?」


「変な子から魔法少女になれる力貰ったんだよ。」


「お前、意味不明なことばかり言ってるな。 魔法少女になれるのは若い女の人だけだし、魔法少女を生み出せる力を持ってる魔法少女は特別な力を持ったごく一部の天才に限られている。 お前のような奴が大層な人から力を譲り受けたようには見えないがな。」


「なんか色々と酷い言われようだな。」


 まあ、流石に中身おっさんだし、生まれてきて魔法少女と直接近くで会話したことすらロクにないのは事実だけどさ。


「魔法少女見習いとは言え、やはり戦闘能力の高い個体はいるもんだ。 そろそろこちらも本気でやるとしよう。」


 いやいや本気って、かなりヤバいのでは!? 

 さっきの衝撃波早かったし、あれよりも早くて殺傷能力の高い技来たら流石に無理だろ!


「くっそ!! 変身解除できなくて退職日どころか命日になってしまう!! 何としてでもこの状況を突破せねば!!」


 しかし、絶望などしている場合ではない。

 魔法少女としての新しい人生が始まったというのにここで終わる訳には行かない。 


「さあ、今度は私のターンよっ!!」


 そう言うと同時にオランチアは思いっきり少女の方に向かって走っていった。

 どの道、ここで死ぬことになっても自分の人生は人に誇れたようなものでもないし、大切な思い人はみな二次元の彼女だけだ。


「ふんっ!! そのまま走ってきて肉弾戦をしようとは……。 やっぱりただのカモだぜ!!」


 そして、私は女の子に一方方向に走って殴りかかる振りをして彼女に近づいた瞬間に軌道を変えた。


「ふふふ……。 まさかお前を真っ先に倒そうなどと私は思ってたのかな。」


「なにっ!!」


 まずは、少女の周りにいる魔獣から倒す! 雑魚処理はRPGゲームにおける基本だ!


「食らえ!!」


「ピュギューーーン!!」


 魔獣は奇妙な悲鳴を上げて倒れて動かなくなった。

 そして、それと同時にすぐ近くにいた魔獣にも思いっきり飛び蹴りした。


「ピュギューーーン!!」


 二匹目も無事に撃破できたようだ。


「くっ!! 中々やるな!!」


 そう言うと、彼女は本気の力を開放して力を溜め始めた。

 それと同時に残りの魔獣二匹と蹴りで倒したと思った魔獣が立ち上がって一気に襲い掛かってきた。


「くっ まだあいつら生きてたか。」


「流石に思いっきり殴っただけでも瀕死に追い込められそうな雑魚敵とは言え、一度に攻められると手間がかかる!!」


「お前のような貧弱な魔法少女など雑魚数匹で十分。」


「くっそ!! 負けるものかああああぁぁぁ!! うおおおおおぉぉぉ!!」


 流石に命がかかっているし誰も周りに見てる人がいないので、魔法少女成り立て初心者のオランチアは可憐な乙女を演じることができなかった。

 いつかは可憐な乙女を演じて戦いたいな。


「ピュギューーーン!!」


「ハアハア……。 なんとか魔獣は全員倒した……。 後はお前だけだ。」


「よおし。 もう力を蓄えるための時間稼ぎはできた訳だし、お前を殺すことは造作もない。」


「そろそろ決着と行きますか。 私も全力で戦う。」


 私…………というより俺は幼少期に魔法少女道場と呼ばれる専門機関で毎日のように魔法少女を目指す少女を眺めていた。

 実戦経験がなかったとしても、魔法少女系のアニメグッズも集めまくったガチガチのオタクで多少は戦い方の知識も持っている。 

 

 さあ、三十年間の人生の経験を生かす時である。


「食らえ!! 魔法少女!!」


 そう彼女が叫び、思いっきりこちらに飛んできて小鎌を振りかざす。

 そして、私がそれを上手く避けて彼女の間合いを取り、思いっきりパンチを決める。

 だが彼女もすぐに受け身の態勢を取り、パンチの衝撃を緩めて耐えきるとすぐさま私の肩に向かって勢いよく小鎌を振りかざした。


「なっ!!」


 オランチアはすぐさま防御の体制を取り、彼女の小鎌から自分を守ろうとした。 

 自分のすぐ目の前で思いっきり降ってくるのをとっさの判断で理解したが体はそれを避け切ることはできなかった。


「ぐぁ"ぁ"」


 思いっきり小鎌がオランチアの右肩に刺さってきた。

 あまりの痛みで攻撃を躊躇ってしまった。

 魔法少女になろうが生身の肉体に思いっきり、刃物が突き刺さる痛みには耐えられなかった。 


 魔法少女の戦ってる場面やアニメの知識があるなどと考え、調子に載った瞬間にやられる惨めな中身おっさんの魔法少女である。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


「あっははは!! どうやら今まで思いっきり身体をやられたことがないみたいね!! やっぱただの雑魚じゃん!!」


 小鎌を刺された右肩は思いっきり血が溢れている。

 魔法少女と言う戦士の力を手に入れたとは言え、精神力はただの弱気なサラリーマンであることには変わりはない。

 元々戦闘訓練を受けてきた軍人でもなければ、武闘家として戦闘経験がある訳でもない人間には耐えることができなかったのだ。

 そして彼女は思いっきり肩をやれられてよろめいた俺の隙を狙って顔面パンチをかましてきた。


「……うぐっ!」


 彼女曰く自身の溜められる最大限の火力で殴られたので思いっきり顔面に激痛が走った。

 痛くて顔を思いっきり抑えたくなってしまった。


「ぅぅゎゎゎわああああああああああ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」


 オランチアはそのまま殴られた反動でしりもちをついて泣いてしまった。

 あまりの激痛に耐えられなかったのだ。


「おいおい……。 いくら女の子だからと言って流石にみっともねえぞ。」


「てめえ!! 俺はぜってえ許さねえ!!」


 思わず、言葉遣いが汚くなってしまった。 

 あまりの痛みと死の恐怖で冷静さを失いかけていた。


「なんかお前、おっさんだみたいなこと言ってたけどそれ本当なん? なんか会話のやり取りしてて確かに女の子ぽくないんだよね。」


 そう言うと、彼女は勝利を確信したのか構えの姿勢をやめてそのままゆっくりと、しりもちをついた状態の俺に近づいてきてこう言ってきた。


「美少女の姿をした戦闘経験皆無のおっさんが赤ちゃんみたいに泣いてるとかマジウケル! ざぁこ♡ ざぁこ♡」


 メスガキ煽りをされるも痛みで笑うことができなかったが、こいつには死んでも勝ちたい。

 魔法少女になって一番最初に戦う相手がこんなので尚且つ負けて死ぬのは人生で一番恥ずかしいとすら思えたからだ。

 それにまだ戦いは完全に終わったわけではない。

 相手は私を敵ではないと思って侮っている。


「ハアハア……。 あ……あぁぁ……。」


「私がそんなに怖くなっちゃったの? 正義を守るために戦うはずの戦士が無様に逃げだすとかめっちゃダっさーい♡」


 オランチアはすぐに近くの路地裏の方に後ずさりをして間合いを取ってから持てる力を使って逃げた。

 一つだけまだ逆転できる可能性に賭けてみることにしたのだ。

 それは夢で出会った少女が最後の方で言っていた必殺技のことである。

 自分は今まで魔法少女たちの必殺技というのを知識として見てきた。

 その可能性から恐らく、胸元で手を合わせて集中力を高めるという動作から恐らくビームを発射するような攻撃方法であろうと予想しているからだ。


「うぅ……。 強すぎる……。 今の私じゃ勝てないわ……。」


「もおー そんな場所に逃げたところで何も意味もないんだからさっさとくたばりなさい。」


ドスッ!! 「グァッ」


 思いっきり腹の辺りを刺された。 

 首を狙えばすぐに殺せるのに。 

 さっさとくたばれと言ってるが本当は私をいたぶってから殺そうと考えているのだろう。 

 サディストめ。


「ぐぅぅ……。」


「中々しぶといねお前。 まあ、見てて面白いけど」


 路地裏の狭い場所まで何とか自分の身体を運んでくることはできたが、今の腹を刺された痛みで逃げて間合いを開けてから必殺技を使うのは難しすぎる。 

 それに彼女も足が早い。


 もうこうなったら、この手段しかない。


 私は死に物狂いで考えた。 

 そして、この状況から勝利を掴むことのできる可能性を一つだけ見出した。


 その方法とは─


「あっ? お前何やってんの」


「これ見て。」


 既に腹を思いっきり刺されてるため、痛みで立てない状態になっていた。

 そして私は胸元に両手を当て、その両手でハートを作った。


「これは『私は屈服して負けました。 あなたに従います。 ラブラブ♡ハート』 っていう意味。 つまり降参ですってこと。」


 そう、オランチアの最後の作戦は時間稼ぎであった。

 こんな惨めな姿を晒し、命乞いをする魔法少女にまだ秘策が残っているとは敵は考えてはいないだろう。 

 その証拠に私が逃げようとしてもすぐに殺さず、いたぶるのを楽しむような攻撃をしてきた。


「ぷっ。 痛みと恐怖で頭がおかしくなっちゃてるよ。 こいつ」


「ごめんなさい。 調子に乗って。」


「まあいいや。 どの道お前を殺さないと示しがつかないんでね。」


 そう言うと、私に止めを刺す一撃を指すつもりと思える構えを取ろうとしてきた。  


(うぐっ……。 思った以上に力が溜まらない……。) 


 こんな状態じゃ必殺技を出す前に殺されてしまう。

 何としてでも時間稼ぎをしなくちゃいけないのに。


「ねえ……。 最後にちょっとだけ聞きたいことがあるんだけど、いいかな。」


「ん? まあ、もう着いた勝負だし少しだけ聞いてやるよ。」


「君なんて名前。」


「私の名前はリベアナ・イーシュリン。 最強の魔獣者を目指してんだ。 あの世で私の活躍を眺めてな!!」


「リベアナ・イーシュリン……。 とても可愛らしい名前だ……。」


 私は両手で構えたハートの中から彼女のパンツを眺めることができないかミニスカに視点を向けていた。 

 一瞬だけ彼女が足を動かした時にミニスカが揺れた。


 パンツの色は白だった。


「しっかり見ると割と好みの服装だなあ。 いいもの見せてもらった……。」


「もうそろそろ終わりにする。 死ね。」


 そう言うと、リベアナは思いっきり小鎌で俺の心臓を狙って振り下ろそうとした―


        

 そして、その瞬間。



 私の手から眩い光が放たれ、凄まじいオーラと風圧が吹きあふれた!!

 路地裏にあった空き缶やゴミ袋は吹き飛ばされていった。


「なっ!! なんだこの力!!」


 リベアナは最初にこの必殺技による光と風圧によって、攻撃の体制を崩した。

 そして、自身もこの凄まじい力を抑えきれない。 

 体内の体力がまるで吸い取られるような感覚が全身を覆った。

 魔法少女の中には絶大な魔動力を操る存在がいるが、如何にそれらを上手く扱うことが大変なのか身を持って味わうことになった。


「お前!! この技を使うために時間稼ぎしやがったな!!」


「そうだ。 とは言えまだ一度も使ったことがないからどんな技かは不明だが。」


「ちっ!!」


 そう言うと、リベアナは思いっきり私から離れようと一気に走っていこうとした。   

 ここは路地裏でも別れ道がなく、両端とも鉄のコンクリートで追われたビルの間である。

 そのため、いくら魔獣契約を結んで超人的な力を持っているとは言え、たったの数秒で周りの壁を壊して道を作ったり、思いっきりジャンプして建物をよじ登ろうとしても簡単に届かないのである。


「くっそ!!」


 リベアナは思いっきり背を向けて真っ直ぐに走って路地裏を抜け出そうとしている。

 その時に私の体からハート型のエフェクトのようなオーラが出始めた。

 根拠は全くないが私の身体から感じる直感が撃てと言っている。


 もう必殺技を出す準備は整った。


「さあ、食らえぇぇぇぇええええええええ!!」


【マジカル♡ハートビーム】


 とっさに口から出た名前で、あまりにもネーミングセンスがなかった。

 しかし、ストレート過ぎて逆に覚えやすい名前であろう。

 そして、それを言うと同時にオレンジ色の光線が一直線に目にも止まらない速さで発射された。


 そして、その光線の先には─


「うわあああぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!」


 リベアナの叫び声とともにオレンジ色の光線で目の前の視界が覆われていった。   

 光線は距離と共に範囲を広げるかのように大きくなっていっき、その光景は自分にとって物凄い衝撃的であり、爽やかな高揚さえ感じられた。


「ぅ…… う……。」


 あまりの威力だったこともあり、その反動で私は後ろの壁に叩き付けられてしまった。

 普通の人間の身体なら失神はおろか、重症にすらなりえると思われるが魔法少女の肉体であったためか、激痛程度で済んだ。


 だがその時、私の体が光始めて身体が大きくなり始めた。

 流石に魔動力を使い果たしたのか、私の肉体は元の中年のおっさんに戻ってしまったのだ。


「ってあれ……。 体が……。」


 元の肉体に戻ったとは言え、やはり全身から来る傷の痛みと出血が抑えられたわけではない。 

 私はヨタヨタと歩きながらゴミが吹き飛んで歩きやすくなったこの路地裏から出ていった。


「はあぁ……。 歩く度に体中から痛みがこみ上げてくる。 あの子はもう死んだのか。」


 路地裏を出たがリベアナの姿はなかった。

 恐らく、肉片すらも残らなかったのだろう。

 いくら普通の人間よりも強度な肉体を持っているとは言え、あんな強力なビームを浴びたら一溜まりないもないのは言うまでもない。

 性格はともかく、声と容姿は中々良かったのだが、もう二度と見れないのは残念だなと少しだけ感じた。


「いや、流石に命を狙ってた相手のことだからそんな風に感じちゃダメだと思うけど!!」


 そんなことを考えながら帰ろうとした時、ふと何か違和感を感じたので周りを見返したらあることに気付いた。

 それはあんな破壊力のあるはずのビームを撃ったのに路地裏や周りにある建物は何一つ損傷がないということだ。

 損傷のある場所はさっきリベアナが衝撃波を放った地面のコンクリートと私が思いっきりビームを撃った時に飛ばされた壁ぐらいだ。

 もちろん、私が殺した四匹の魔獣の死体もまだ同じ場所に残っている。  


「あいつを消し炭にできるような威力のビームを撃ったのだからどこかに跡が残っているはず。」


 オランチアはもう少し周りを確認しながら近くを見回し、確認をしてみた。

 そうすると、下に何かが落ちていた。

 なんだろうと思い、気になったので拾ってみたら─


「こ……。 これは……に………人形……。」


 そこに落ちていたのは自分の家にある1/3ドールに似た形をした人形のようなものであった。

 しかし、義弘が本当に驚いて動揺しているのはそこではなかった。


「こ…………この人形は………。」


 それは人形がさっき命をかけて戦った相手であるリベアナ・イーシュリン本人と言って差し支えない容姿をしていたことである。

 その時に私はあのビームがただの強力な必殺技ではないことを確信した。


 そうあのビームは――



 当てた相手を人形に変えることのできるビーム。



 魔法少女に変身し、相手を人形にすることができるという普通に生きていたら絶対に得られることはないであろう何か特別な力を自分は手に入れてしまったのだ。


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