星降る夜の箱庭~魔女っ子オタクの変身物語~

愛々草子

第一章 人形化の魔法少女編

第1話 夢の中での出会い


「はあ……。 今日も残業が長かった……。」


 今日も仕事に疲れて帰ってきた冴えないサラリーマンである義弘は明日の仕事の準備をしていた。

 帰宅後の夕食は会社の近くのコンビニで買った弁当にしていることが多いが今日は気分転換として自炊した料理を妻と一緒に食べることにした。


「まあ、妻と言ってもアニメキャラの等身大ダッチワイフではあるが……。」


 義弘は重度のアニオタのゲーマーであり、自分が子供の頃から好きだった漫画原作のアニメ『果実の魔法少女たち』に登場したシトラス・エリサのフィギュアを始めとした数多くの漫画やアニメ、ゲームの美少女フィギュアやドールを家中に保管しているのだ。


「さあ、そろそろ妻たちと一緒に夜を楽しむとするか……。」


 義弘の集めるフィギュアや人形はただのコレクションではない。

 義弘にとって、一般的なアニメのフィギュアや二次元のキャラクターをしたダッチワイフはかけがえのない彼女なのである。

 そのためフィギュアやドール達とベッドで戯れて夜を過ごしたりするという他人にはあまり言いたくない趣味を行うための現実の彼女の代替品としてこの男は持っているのだ。


「ふぁ…… みんな可愛い~」


 義弘は未成年が買えないアニメのフィギュアや情欲をそそるような服を着たドール達と共にベッドへと潜り込んでいった。



※※※※※



「ねえ……。」


 誰かがいる。

 気が付くと俺は一人の少女と共に絵の具で描いたような風景の世界にいた。

 水着とセーラー服を合わせたような造形の魔法少女コスに水色の三つ編みヘアーの少女が義弘に対して語りかけてきた。 

 女の子の姿は愛嬌の良さそうな可愛らしい顔立ちをしており、その身体は第二次性徴期を迎え、徐々に女性らしい肉体になっていく段階にいる女の子ような肉付きをしていて、薄く透けているスク水から小さいおへそがうっすらと見える。


「何か俺に用かな」


 義弘に何か言いたそうに尋ねてきたのでそう言い返した。


「少し君を眺めてたら面白そうだから私の力をあなたに与えてみたくなったの」


「ほう……。 それは嬉しい。 是非とも貰い受けたい。」


「じゃあ、あなたには私の力を与えて上げるね。」


 普通なら意味の分からない場所に突然来て、そこにいた明らかに変な子供の言葉を信用するなんて警戒心が無いと考えるが、俺は面白そうだったから即答して貰ってみた。


「そんなすぐに返答してくれる人今までに見たことないわ。」


 そう言うと女の子は手を広げた。

 そして不思議な光に俺は照らされた。


「これであなたに相応しい特別な能力を得ることができました。 今から使い方を教えてあげますね。」


 何というか初対面で非モテの陰キャである俺に対して妙に親切で可愛らしい子だなぁなんて思ったりもするが、細かいことはいちいち気にするだけ無駄な気がする。


「それで能力とは一体どのようなものなのかな?」


「まず、こう言ってみて」


「愛の力よ! 私のものとなりて! マジカル・オランチア!」


 どうやらこう言ってみると能力を使えるようになるらしい。 

 面白い……。 

 試しにやってみせるとしよう!



「愛の力よ! 私のものとなりて! マジカル・オランチア!」



 そう叫んだ瞬間、突然義弘の全身が光出した!!


「な…なんだ! これは!」


 光始めてから急に背が縮んでいってる。

 そして、自分の声もとても高くなり、腕や足が非常にスリムになっていく。

 とても不思議な感覚だ。

 俺は自分の周りを見返した。

 

 そこには……。


「こ、これは!」


 そう、俺はアニメのような魔法少女の着る服を着ていた。

 そして、股間の感覚が妙だ……。


 まさかだが……。


「うおっ! 俺のあそこが無くなっている! つまり、これは……。」


「結構お似合いですね…。」


 女の子が自分の前に鏡を出現させて、義弘の顔を移した。

 そこに映っていたものはやはり……。


「な………なんて美しい体……。」


 髪の毛はオレンジ色で可愛らしいサイドテールをミカンのような形をしたリボンが結んでいた。

 服装は全体的に橙色をイメージしており、ちょっとギザギザした先端があるミニスカのフリルとメイド服のような肩回りのドレスはまさに自分好みの魔法少女のデザインだ。 

 そして、胸元のリボンについてる不思議な力を秘めているであろうハート型のコンパクトがついている。



 俺は魔法少女になっていたのだ!



「これは凄い! 体がとても軽く感じるぞ!」


 そう言って俺はこの空間を飛び回り始めた。

 今まで魔法少女のグッズを買い漁るくらいに好きだった自分が今度は自身が魔法少女として動き回るという喜びに感動を覚えていたのだ。


「魔法少女とはこんなにも運動能力が高いものだな。 これなら魔物も簡単に捻り潰せる」


「私の与えた力によって変身できた気分はどうですか?」


「いやあ、最高だよ。 他にも必殺技みたいなものがあれば完璧だけどね。」


「必殺技もちゃんとありますよ。 両手でハートを作って思いっきり精神を集中させて見てね。」


「よおし……。 やってみせるか!」


 義弘はこの素晴らしい身体で次の人生を送ってやると考え、物凄く希望に満ちていた。

 まるでこんな高揚がずっと続くかのように……。



※※※※※



「…………。 ってあれ……。」



 気が付くと小鳥の鳴き声が窓の外から聞こえてくる。

 そして、布団から顔出すと眩しい温かい光が義弘の顔を包み込んだ。

 どうやら、夢の中で不思議な女の子から魔法少女になれる力を与えられたようだ。

 俺も最近仕事が忙しくてしっかりと寝ることができてないのかもしれない。

 とりあえず、今日も仕事だから朝の支度をしたらすぐに出社だ。


「はあ……。 今日も仕事だあ……。 今日のノルマ的に残業の可能性大……。」


「それは俺たちも同じことなのだから少しぐらい我慢しろ。」


(会社の同僚にこんなこと言われるとは……。)


(いっそのこと本物の魔法少女として世界を飛び回れる人生だったらいいのに……。)


 そんなことを思いながら、会社の窓から空の上を眺めていた。

 そしてお昼の休憩の時間になったので会社のすぐ近くの公園で今日見た夢のことを思い出しながら


「愛の力よ! 私のものとなりて! マジカル・オランチア!」


 と仕事のストレスを全て吐き出すつもりで叫んでみたのだ。


「まあ、こんなこと叫んだところでただの変な人だと思われるだけだと思うがな」


 今日は平日だが小学校が休みなのか、小学生らしき子供が公園に何人かいる。

 別に何とも思わないが、何故かあの小学生達がとても背が高く感じる。


「ねえ、あそこにいる人って魔法少女じゃない?」


「確かにあんな派手な服装をコスプレ会場でもないのにするわけないよな」


 ん? と思い自分の姿を確認したら……。


「まさか、あの夢で力をもらったのは本当だったのか!」


 そう、そのまさかである。

 俺は夢で見た魔法少女の姿と全く同じ姿になっていたのだ!

 それと同時に俺は笑い始めてしまった。

 なぜなら、現実的に考えて絶対に起きえないことが起こっているのだから。


「これで俺の第二の人生が始まるぞ! あはは!」


 人生とは時に不思議なこともあるもんだとなと笑いながら私は公園の中で無邪気な子供のように義弘ははしゃいだ。









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