ACT2.間違った王子様
ACT.2 side-志穂
黒い二つのランドセルに挟まれて、赤いランドセルが一つ。
右隣りには双子の弟、志槻(しづき)。
左隣には幼馴染の葵君。
学校が終わるといつでも3人でこうしてランドセルを並べて帰っていた。
「「「ただいまー」」」
3人は同じように宮部の家の玄関をくぐる。
葵君のお母さんは私たちが小学校に上がった時から働きに出ていて、葵君のお母さんが戻って来るまで、
葵君はいつも私の家が帰宅する家だった。
リビングのテーブルに漢字ドリルと計算ドリルを広げる私達。
これも私たちの日課。
うちのお母さんは厳しくて、ドリルと宿題が終わらないと遊ばせてもらえないから、私たちは帰るなり勉強するのが習慣となっていた。
「うーん・・・あれー?」
どうしても解けない問題にあたって頭を悩ませていると、両隣から覗き込んできた頭が、ゴチンと音を立てた。
「痛っ」
「痛ってー」
志槻と葵君が2人して頭を押さえて涙目になる。
「葵君勉強苦手でしょ、志穂には僕が教えるから葵君は自分の勉強してなよ」
「僕だって志穂ちゃんに教えられるもん」
「志穂は僕のお姉ちゃんだもん!葵君はお隣さんなんだから」
志槻の牽制に、葵君は今にも泣きそうに涙目になる。
「こら志槻!葵君と喧嘩しないの!」
志槻と葵君が喧嘩してお母さんに怒られている。
そんな中に巻き込まれない様に私はそっと二人の間から抜け出してドリルの続きに勤しむ。
男の子達ってどうして直ぐに言い合いしたり喧嘩したりするんだろう。
「だってお母さん!葵君が志穂にべったりしてきてうっとーしーんだもん!
志穂は僕のお姉ちゃんなのに!」
「ぼ、僕だって志穂ちゃんの幼馴染だもんっ」
ギャーギャー、ワーワー、
・・・煩い。
もうすぐ小夜香ちゃんと香苗ちゃんが遊びに迎えに来るのに。
このままじゃ終わらない。
「も~っお母さん!!志槻も葵君も煩くて勉強できないーっ!
志穂自分の部屋で勉強してきて良い?」
「良いわよ。ほら、二人とも!志穂の勉強の邪魔になってるから静かにしなさい!」
2階の自室へ駆け込んでドリルの続きを開く。
ようやく終わりそうになった頃、コンコンと控えめに扉がノックされた。
「はぁい?」
「志穂ちゃんさっきは煩くしてごめんね。あの・・・」
葵君だ。
勉強机の椅子から降りて扉を開く。
相変わらず泣きそうな顔をしている葵君に小さく溜息を吐き出した。
「葵君、志槻と同じ歳なんだし、葵君の方が誕生日早いじゃん。
何で志槻に言いたい放題されてるの?」
「え?だって・・・志穂ちゃんは志槻君と姉弟だし・・・僕は違うから・・・」
「一緒だよー、志穂、葵君の事も兄弟みたいに思ってるよ」
「それはそれで・・・」
葵君が小さくボソッと何かを言ったけど、小さすぎて良く聞こえなかった。
「葵君勉強終わったの?」
葵君が抱えているドリルを見て聞けば、葵君は小さく首を横に振る。
「もー、終わらないと遊べないんだからね!」
葵君の手を引いて部屋の中に連れ込むと隣の部屋から志槻の勉強机の椅子を持ってきた。
「はい、座って」
志槻の椅子に葵君を座らせてドリルを開かせる。
「ねえ志穂ちゃん」
ドリルに向かっていた葵君が鉛筆を握りしめて私を見た。
「志槻君と僕、どっちが好き?」
葵君の唐突の質問に、キョトンと目を丸くする。
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