第48話:B.O.D.Y
「ねぇジン、ちょっとだけ聞いていい?」
タイヤをいじっていると、レイが俺の顔を覗き込んだ。
「ん?レイか、何かわからないことあるのか?」
「いや、わからないことじゃないんだけど……ボディ何にするか決めた?」
あー、ボディか。
確かに決めてないな……さすがにお姉さんのリバティでは難しいのでポリカを使おうと思っていたが。
「あ、私はこれを使う予定です」
横からトモが見せてくれたのは全国大会で俺も使っていた「ウイニングバード」だった。
ミニ四トップの主人公、九堂 突風の最終マシンで飛行機のようなフォルムが人気のボディだ。
「それかっこいいよね、いいな」
「あ、ね、かっこいいよね。この子ならブラックウイング改として羽ばたけそうで」
「なるほど、バードだもんな」
「わたしはこれとこれで迷ってるんだ」
レイが見せてくれたのはアバンテMK2とエアロアバンテだった。
アバンテにはいくつか種類があり、ポリカで発売しているのはMK2、MK3、エアロアバンテの3台。
どれもかっこいいボディだ。
「前にMK2使ってたから今回はエアロアバンテにしたらどうだ?」
「なるほどたしかに……じゃエアロアバンテにしよっと」
せっかくマシンを新調するんだから、ボディも違うものに変えた方が楽しかろう。
アバンテはこれぞレーシングマシンって感じでテンション上がるし。
「エアロ」と名がつくものは空力設計されているからスピードも出るだろうしな。
さて俺はどうするか。
ルキはサンドラだろうし、ハクはソニック確定だ。
ウイニングバードは今回、トモが使うようだし被るのはなんだか嫌だし……。
「あ、よし!これで行くか」
「ジンも決まったの?」
「おぅ、ただお披露目はジャパンカップ当日のお楽しみとしておくぜ」
「えー、よっぽどすごいやつ?」
「まーな!」
ボディはなんとかなりそうだが、俺にはまだ課題があった。
カルーセル自体はトモと作ったスラダンでほぼ安定している。
問題はアイガー下りで、いろいろ手は入れてるが安定しない。
真っ直ぐ降りれず着地吸収できなくて、コースアウトが多いのだ。
何度か試走しているとレーコがぼそりと呟いた。
「アイガー下り安定せんなぁ」
「見てたのか。そうなんだよ、コーナー直後に下りだとなかなか安定しないんだよな」
「両軸はモーターの回転の影響でマシンが傾きやすいから、そこを対処せなな」
「なんか案が……って、いや、敵に塩になるか」
「何言うてんの、水臭い。リアのキャッチャーダンパーあるやろ。あれ、ボディ側に付けると提灯の開度が出てマシンを補正する力が強くなるから試してみい」
「なるほど、ありがとう、やってみるわ」
提灯を付けているアームに直接キャッチャーダンパーを付けてみる。
試走すると、かなり安定するようになった。
「おぉ少し入るようになった!」
「せやろ、あとちょっとで完成やな」
「ありがとうレーコ、恩にきる」
「かまんかまん」
そんなこんなしている横ではハクがマイスターちゃんと一緒にコースを走らせている。
最初はカルーセルで跳ね回っていたが、いつのまにか安定していた。
「すごいなハク、ピボットでカルーセル走れるようになったんだな」
「うん、グリスと締めるネジのとこのゴムの小さいのの負荷のかけ方で随分変わるねー。前お兄ちゃんが言った通り、右をゴム1本、左をゴム2本でグリスで固めにしたら安定しだしたんだよー」
「しっかりカーボンで作り直してるし、こりゃ俺もうかうかしてられないな」
「うふふ、そうよ。ハクさん頑張っているから、本番も良い走りを見せてくれると思うわ」
「えへへー。あとはモーターがどこまで使えるか、調べてみるよー」
みんなのマシンが着実に仕上がってきている。
合宿の甲斐があったもんだ。
しかしなるほど、ピボットも興味深いな。
最後に晩御飯をいただいて合宿はお開きとなった。
「めぐみ君また来てね、おばちゃん寂しいわぁ」
「はは、また遊びにきますね」
「あたし、またおばちゃんの唐揚げと角煮と
ローストポーク食べたいでーす!」
「うふふ、ハクちゃんもまたきてね。ごはんいっぱい作ってあげるから」
「わーい!毎日きまーす!」
「「「それはやめておけ」」」
門を出ておばちゃんとルキに手を振りながらバス停に向かった。
「あとは個別でどこまで仕上がるか、だな」
「ジンと当たっても手加減しないからね!」
「当然だ、つか抜いてる余裕なんてないよ」
「あたしも完走目指すぞー」
「あ、私もまずは完走目指します」
「それも重要だな」
それぞれの想いを胸に、俺たちはジャパンカップ当日を迎えた。
「これがジャパンカップ!」
ーーーーーーーーーー
解説:
・ポリカ
ポリカーボネードという軽くて丈夫な素材。
透明でペラペラだが衝撃で曲がるので壊れにくい。
塗装には基本専用塗料を使用するので注意。
重量がプラボディの1/10ほどになるのでものすごい軽量化が期待できる。
もうボディに穴開けとか必要ないのだ。
ただし全てのボディがポリカで販売されているわけではないので注意。
また、入手難易度が高いレアものも数多い。
・アバンテMK3
初代が丸く、MK2が箱型、MK3は鋭利な鋭さを持つデザインとなっている。
アバンテ系ボディでもっとも人気のあるボディだと思いますが、入手が難しい。
標準商品化がもっとも望まれているボディかと。
・エアロアバンテ
空力設計されたアバンテで、実車アバンテもこのボディである。
前衛的なデザインもかっこいいが、ミニ四駆サイズでは空力のダウンフォースの恩恵にはあやかれないかと。
・キャッチャーダンパー
ホエイルでも使用されているマシンの後方にミニ四駆キャッチャーの端材を取り付け、重みをつけることで着地衝撃をいなす役割をもつパーツ。
また、マシンの空中挙動にも関与するので、ジャンプの飛型の調整にも使われる。
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