第45話:恋バナ

「恋バナっしょ!」


 ほら来た。

 全国大会予選のときの迂闊だった発言、覚えてやがって。

 こんな話になると思ってたんだ……


「じーんー、好きな人の話聞かせてよ」

「あー、そういえばそんなこと言ってたねー、ケーキで忘れてたー」

「あ、私も興味深いです」

「そだそだ、話してみろよ」


 嘘ついて適当に濁すと勘づかれそうだ。

 女の勘ってのは鋭いと聞くし。

 仕方なく事の馴れ初めを語ってみることにした。


「……中学のとき、初めて会ったときからガレージのお姉さんのことが好きでさ」

「あー!ガレージのお姉さん、めっちゃ美人の人だ」

「あのお姉さん、綺麗で優しくて好きー」

「あ、たまにあまったパーツとか分けてくれたりします、お綺麗ですしとても良い方で」

「よりによってあの人かよ、たまげたわ」

「実は中3のときに告白ずみだったりするんだ」

「え、ってことは……」

「当然、断られた」

「だよなぁ。あの辺でミニ四駆やってるやつらのアイドルみたいな人だ、そりゃ無理ってもんよ」

「……だがな、ある条件が出されたんだよ」

「どんな条件なのー?」

「ミニ四駆チャンピオンになったら考えてくれるそうだ」


 みんながポカーンとしている。

 正直に話したのだが、信じ難い感じだっただろうか。


「……ぷっ、はははは、もしかしてミニ四駆を頑張ってる理由って、これ?」

「笑うなよレイ、本気なんだ」

「うん、ごめん……でもすごいな、そんな風に思ってもらえるっていいな」

「じゃぁお兄ちゃんを応援してあげなきゃねー」

「あ、そうですよ、私たちできる限りサポートします」

「おまえら……」


 ちょっと目頭が熱くなる。


「まぁ結果は見えてるが……おもしろそうだ、オレも力貸すぜ」

「ありがとう、ルキ」

「しかしあの人かよ……ちょっと面白くなりそうだぜ」

「何か知ってるのか?」

「そのうち教えてやるよ、まぁ今は目指せチャンピオンで行こうぜ!」

「おぅ!」


 協力が得られる事になったのはありがたいが、具体的に何がどうなるのかよくわからんな。


「俺の話はこんな感じだったが、みんなの話しはどんなk」

「おっとそろそろ消灯の時間だね」

「おやすみなさーい、すぴー」

「あ、急激な眠気が」

「じゃ電気消すぞ」

「ちょっとまてコラ」


 カチン


 ほんとに消しやがった……俺ばっかりずるい……グスン。

 でもまぁいっか、人に話せてまた目標意識が復活した気もする。

 明日からまたがんばろう。


 翌日。

 トラックのバックオーライの声で目覚める。

 時計を見ると9:20、ちょっと寝過ぎてしまったようだ。

 みんなはもう起きているのか、部屋には俺一人だった。


 どんどんどんどん


 階段を駆け上がって来る音がしてドアが開く。


「ジン、起きた?」

「おぅ、おはよう、なんだか騒がしいけど何かあったのか?」


 レイが始めて会った時のように息を切らし駆け込んできた。


「すごいよ、ちょっと来て!」

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