第41話:カモナ マイハウス
「じゃオレの部屋に行こうぜ」
2階に上がらせてもらいルキの部屋入る。
女子の部屋に入るのは生まれて初めてなので緊張するな。
いや、子どもの頃はルキのことを男だと思っていたから、そこはノーカンっていうか。
いやいや、あんまり構えすぎてるとキモいかな。
なんて、そんな緊張は秒で吹き飛んだ。
「んな!?」
20畳くらいある屋内にはなんとJCJC完備だ。
周りを見渡せば壁にはラックがずらり。
ミニ四駆パーツがショップのように飾り付けてある。
勉強机の他に作業用の机があり、リューターやタイヤ削り専用の機械、フライス盤まである。
部屋の隅にはベッドとソファ。
ここに生活のすべてが揃ってるんじゃないかって充実ぶり。
それでもスペースには余裕がある。
今回の合宿のために用意してくれたのだろうか、作業机の脇には人数分の椅子まで並んでいた。
「この広さ、すごいよねジン」
「広さもすごいがアミュニティの数々がすごいぞ、ミニ四駆的には理想空間だ」
「ひろいなー、うちのリビングよりひろいー」
「あ、そういえば見せたいものがあるとか、ルキさん何を見せてくれるんですか?」
「そうそう、これこれ、見てやってくれよ」
そういうと勉強机の上に出してあった大きな冊子を持ってきた。
「オレと狭間の小さいころのアルバムなんだけど、たぶんおまえら爆笑してくれると思うぞ」
なんだと……
うちの親はあまり写真とか撮らないから七五三のアルバムくらいしかなかったが……
「昔のお兄ちゃん、見てみたいでーす」
「じゃまずここからだな」
ページをめくると小さな男の子と女の子の写真が何枚か貼られていた。
「こっちがオレで、こっちが狭間な?」
ギザギザ頭で短パンランニング、元気そうな子がルキで、おかっぱ頭でフリフリワンピースの子が俺だ。
そういえばこの頃、おばちゃんがルキが着てくれないとかで、買ってあったかわいい服を俺に着せてたんだ。
「うっそでしょw逆じゃなくて!?」
「あ、師匠めちゃくちゃかわいい……」
「ルキちゃん真っ黒だねー、これはわんぱくだー」
だんだんと当時のいろいろを思い出してきたぞ。
白いフリルのワンピース、あまりにもおばちゃんが悲しそうだったから着てあげてたんだ。
今思えばアレって俺に着せるための芝居だったんだろうな。
着てからめちゃくちゃ写真撮られてたし。
「この写真とかすごい……美少女じゃん」
レイが指差した1枚はまさに奇跡の一枚と言える写真だった。
木陰の下、つぶらな瞳を大きく見開いた被写体が、スカートを揺らしてこちらを振り向いている。
逆光の中、輪郭が少しボケた感じの美しい写真だった。
「これ俺なのか……」
「これな、まじ天使だよな」
「うぎゃあ、こんな妹が欲しいー!」
レイがひっくり返って悶絶している。
パンツ全開だが、まぁ見ないようにしておこう。
「で、これが今、こうなってる訳よ」
「今の2人からは、全然想像できないにゃー」
「あ、これ今度焼き増ししてください」
「あぁぁもーやめ、やめ!恥ずかしくなってきた」
思わずアルバムを奪い取る。
「あぁんもー、もっと見ーたーいー!」
「ははっ、アルバムは他にもあるかんな、また別の日にでも見せてやるよ」
「はぁ……いかんいかん、目的はこんなことじゃないだろ、ジャパカップ対策だ」
「あ、それはいくらか考えてきました」
さすが我が部の戦略家である。
そのとき、階下からおばちゃんののんびりした声が響いた。
「みんなー、ご飯できたわよー」
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解説:
・タイヤ削り専用の機械
タイヤを薄く削る専用の機械が存在します。
タイヤセッターとかタイヤカッターって言われてるのかな。
エノシマサーキット、ポテンシャルレーシング、イーグル製が有名です。
とても便利なのですが、あなたはミニ四駆のタイヤ削るためだけに3万円出せますか?w
持ってる=ガチ勢認定機械の1つです。
・フライス盤
対象物を固定し、レバー操作でドリルを操作して穴開けなどを行う機械。
一般家庭でもDIY好きな方であれば持っている方も多いですが、女子高生で持ってる人はかなり少ないかと。
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