第4章:俺と合宿と恋せよ乙女
第39話:お嬢だん
「じゃぁよ、ウチで合宿しねぇか?」
ルキの家で?
合宿となるとこの人数で押しかけることになるのだが。
「ウチっておまえ、この人数大丈夫なのか?」
「……あー、なんつぅか、ウチめちゃデカいんだよな。5、6人くらい訳ない感じなんだよ。離れの小屋に練習用のコースも置いてるし機材もここに持ってきてるものより最新のものが揃ってるぜ」
ルキのミニ四駆環境は確かに興味深い。
しかしご迷惑ではないだろうか。
「ウチだったら顧問呼んだりとかしなくていいし、なんだ、単純にお泊まり会的な感じで気軽にやれると思うんだ」
「確かにどこか借りてやるとかだと、機材搬入やコース設置とか難しいよね、もし迷惑でなければルキんちがいいかも?」
「じゃあちょっと親に確認してみるわ」
スマホから漏れ聞こえる声からするに、どうやら親御さんも反対してはいないようだ。
しかしちょっと待てよ、合宿はいいがこれって女子の家にお泊まりしに行くってことだよな?
女子の、って言うか俺以外全員女子だぞ、大丈夫なのか。
恐る恐る聞いてみる。
「か、確認なんだがみんなOKなのか?」
するとレイたちはきょとんとした顔で答えた。
「ん?OKに決まってるじゃん、超楽しみ♪」
「あ、うちも大丈夫だと思います。ルキさんのミニ四駆環境見てみたいです」
「あたしも大丈夫だよー、お母さんに聞いてみるけど怒られたりはしないかなー」
「いや、そうじゃなくてな、その……お泊まり会っぽい感じのとこに男子が行くってことなんだが」
どうやらルキの電話が終わったようで、彼女ののんぴりした声が俺の疑問を遮る。
「OKだってさ、うち使えるぞー。てか狭間、どうした?」
「いや、女子の家に男子がお泊まりって、ちょっとどうなのかな、って」
「大丈夫だぞ、狭間が来るって言ったら母ちゃん喜んでたわ」
「なんで母親が喜ぶんだキミんちは」
どういう家なんだ。
男子が遊びに行くってだけでも年頃のお嬢さんをお持ちのお宅であれば、いろいろあるだろうに。
それとも俺の考え方が古いのか?
「つぅこって、冬休み最初あたり、2、3日泊まれる準備とミニ四駆持ってオレんちに集合な。ちょっと徒歩じゃ無理だからバス停の場所と地図のURLを送っておくんでそれでよろしく」
みんな普通に了解してしまった。
どうしよう、女子の家に行くだけでも緊張するだろうに……。
そして冬休み。
とりあえずなんとかなれーの心意気でバスでルキの家付近に来てみたが。
なんだろ、デジャブ感がある。
この公園とか、野っ原の感じとか、見覚えがある気がする。
地図を頼りに家のある辺りまで来てみたら。
「で、でかい……」
四方を生垣で囲まれた日本邸宅、古風な感じの家。
美しく整備された日本庭園、そこには錦鯉が泳ぐ池も見える。
離れがあると言っていたが、倉のような建物が何棟かあるように見える。
一言で言えば豪邸ってやつだ。
ぼんやりと屋敷を見ていると、背後からハクの声がした。
「ふぇぇーでっかいねー」
「お、おつかれ」
「お兄ちゃん終業式ぶりー、でっかいお家だねー、旅館みたいだー」
ハクを引き連れて入り口、と言うか門だなこれ。
インターホンに話しかけるとルキが出てきて開けてくれた。
「おつかれさま、もう他のみんなは来てるぞ」
門をくぐり中に入ると、さっきまで感じていた感覚が蘇る。
「……うん?」
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