第34話:CRASH!
「この勝負、もろたで!」
最終5週目、ほぼ並走して走る2台。
最後のドラゴンバックに突入する。
「お願い!艶雷!!」
2台同時のジャンプ。
その瞬間、空中で2台のフロントバンパーが接触したように見えた。
バランスを崩しながら着地するが、C-ATの艶雷は難無く着地しバンクを抜けて行く。
一方のレイスティンガーはフロントが上がりすぎて着地の衝撃がいなせず、そのままバンクから飛び出してしまった。
「なんやてぇーーーーっ!?」
そのまま艶雷のゴールイン、町田宮の勝利となった。
「よーーーっし!勝ったー!」
「んなアホな……空中でぶつかるなんて思わへんわ」
「あ、やっぱりあれ当たってたんだ。でもルール的には問題ないよね?」
「……まぁ問題ないで。狙ってやっとるわけやないやろしな。しっかし付け焼き刃な作戦じゃ無理やったか……まだまだ修行足らんかったちゅうこっちゃな」
俺たちは狂喜乱舞でレイに駆け寄った。
こんなギリギリの勝利で興奮するなと言う方が無理だろう。
「やったなレイ!見事な勝利だったぞ!」
「うん、なんとか勝てたみたい、でも勝負では負けてたかも」
麗子は苦々しい表情をしつつも、レイの勝利を称えてくれた。
「今回はウチらの負けや。でも次会うたらこうはいかんで」
「今回は運がよかっただけだし、今度やるときは決着つけよ!」
「望むところや、あんさんにはスタイル以外で負けるわけにはいかんからな!」
「スタイル?」
何の話だ。
「走りも美貌も完璧なウチやけどな、背丈だけは育たへんかった……」
「平均的な身長だと思うけど」
「平均じゃあかんねん!ウチの夢はモデルをしながら大会を総嘗めする『美しすぎるミニ四レーサー』やったんや……。もう諦めてもうたけど」
「ふ、ふーん?『ミニ四駆お笑い芸人』とかじゃダメだったの?」
「あかんあかん!『麗子』の名前に相応しく、美しゅうなきゃあかんのだわ。……そんで、レイ。あんさんはウチよりもちぃと背が高い」
「ええ……」
「そんでスタイルもええ!ボンキュッボンや!そんなんモデルさんやん!ウチはおんなじ『レーコ』として、あんさんに負けるわけにはいかんかったんよ〜!!」
まさかそんな理由で敵対視していたとは。
自分が失礼なことをしたのかと思っていたレイは、脱力したように笑った。
「……ははは、しょうもな」
「うっさいわ、次は絶対負けへんからな。あとそっちのなんやったか、ジンちゅうたか」
ん?今度は俺が何かしただろうか。
「俺にまでなんか吹っかける感じか?」
「ちゃうわ、そのなんだ、ちょっと……連絡先を教えろ……ください……」
なんだ、そんなことか。
さっきまでの威勢がなくなったから何かあったかと思ってしまった。
「全然いいよ、QRでいいか?」
「うん……ありがと……」
連絡先を交換したら満面の笑みでスマホを抱えている。
レースのときの顔と違い、ころころ表情が変わる様子は普通の女子高生。
なんだか見ているこちらも楽しくなってしまう。
「じゃ、また連絡するから、関西に遠征とかしたら声かけてぇな」
「おぅ、今度は俺とも走ってくれよ」
「うん!ほな、またなー!」
麗子は颯爽と仲間の元に走っていった。
「ジン……」
「どしたレイ?なんかあったのか」
振り返ってみると部員全員が不思議そうな表情でこちらを見ていた。
「おめぇ、けっこう鈍いよな」
「あ、なるほど、なるほど……」
「ジン、いろいろ気をつけないとダメだよ?」
何の話かよくわからんが、次戦に向けて気合いを入れねばならん。
「これで2回戦進出だ!次戦も勝ちに行くぞ!」
ーーーーーーーーーー
「はぁ……」
ーーーーーーーーーー
解説:
・空中で衝突
けっこう遭遇する事故で、大会によっては仕切り直しの場合もあるようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます