第16話:ガンバ!Fly high

「飛んで!艶雷!!」


 バンクを使い、カタパルトのように飛び出す2台。

 空中の飛距離はやはり艶雷が上だ。

 ストレート1枚分の差をつけてバックストレートに入る。

 そのまま先頭を走りきり、レイのマシンがチェッカーフラッグを受けた。

 そしてそれは俺たちの勝利を意味する。


「やった!勝ったー♪」


 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶレイ。

 いやおまえ、そのスカート丈で跳ねられると目のやり場に困る。


「……やったな、いい走りだ!」

「うん、ありがとジン。これでうちのガッコの勝ちってことだよね?」

「あぁ、そうだ。決勝戦に行けるぞ」

「やったねレイちゃん!……ん?あわわ、こっちくるー!!」


 ハクがあわわしてる方を見ると、青髪がこっちを睨みながらのしのし歩いて来るではないか。

 やばい、報復か?暴力か?

 レイは臆する様子もなく、真っ直ぐに青髪に向き直った。


「なによ?」

「……完敗だ。女だてらにとか言ってすまなかった。おまえら本当に速いんだな」


 あれ、こいつすごい笑顔……挨拶しにきてくれたのか。

 こっちも見た目で判断してただけだろうか、と考えると正直すまん。


「今更、そんなのいいよ。ミニ四駆に男も女もカンケーないって証明できたわけだしねっ。でもスタートの遅れが無かったら負けてたかも?あのスタートは何かあったの?」


 そうだ、あれがなければたぶん互角以上の結果だったハズだ。


「あぁ……あれはその……うち男子しかいないからさ……女子が側に来たから、その……緊張してしまって……」


 青髪が巨体を縮こめ、顔を赤らめモジモジしている。

 うん、男子校だもんな……。

 それはどうしようもないよな……。


「……ぷっ、ははははは!デッカいのにシャイなとこあるんだねwまた勝負しよ!」

「あぁ、またよろしくたのむ」

「ぶちょー、かえりましょうよー」


 赤髪が青髪の学ランを引く。

 どうやら俺たちと目を合わせたくないようだったが、ハクが思いきり大声を出した。


「あー、こいつズルっ子だー!」

「なにっ?こいつがなんかしたのか?」


 青髪は一気に険しい顔になった。

 どうやら彼は妨害には気づいていなかったらしい。

 ということは、さっきのスタートは部としての妨害ではなく、赤髪の単独犯ということか。

 被害者のルキは鼻じらんだような顔で言い捨てる。


「スタートでちょっと小突かれただけだ、大したことはない」

「なんだと……」

「……へっ……いや、あの、そんなアレじゃ……」


 ごちーーーん!


 会場中に響き渡るくらいの拳骨音。

 この巨体から繰り出される拳、きっと並の痛みでは済まないぞ。


「またやったのかこのアンポンタン!」

「ひぃーごめんなさいーーーーー」


 赤髪は逃げ帰るように会場を去っていく。

 それを青島学園の他のチームメイトたちがやれやれといった様子で見ていた。


「すまん、気づかなかった。あいつ以前も同じようなことしてたんだが……まったく」

「もういいよ、気にしてないから」

「あいつは平部員に降格だ。ミニ四駆のスポーツマンシップというものを俺が一から叩き込んでやる」

「ああ、それがいいな。実力で勝つのが一番気持ちいいって、教えてやってくれや」

「しかしあんたがRUKIか。話には聞いていたがほんとうにすごい走りだ」

「お、おぅ、ありがとよ」


 一通りの挨拶をすませ、青髪はチームのもとへと戻っていった。

 俺は思わず彼を呼び止める。


「今更で悪いが、俺は町田宮高一年のジン。狭間ジンだ。青髪の、あんた、名前聞いてなかったな」

「俺は青島学園二年、城田だ。じゃ、また会おうなジン。次はお前とも走りたい」

「あぁ、よろしくたのむよ」


 城田は話してみるとなかなかいいやつだった。

 今のところミニ四駆仲間に男子がいないから、知り合いが増えるのは嬉しい限り。


「さて、もう1組はどうなったんだ?」

「あ、はい、どうやら京商が勝ったみたいです」

「京華商業か……あそこは全国大会でも優勝してる強豪だ。気を引き締めていかなきゃな」


 決勝戦用にコースが組み替えられ行くのを眺めていると、背後から声をかけられた。


「決勝戦のお相手は、貴方達かしら?」


ーーーーーーーーーー


解説:


・カタパルト

飛行機などが飛び出すとき、補助として押し出す仕組みのこと。

強制的に速度を上げられるのだ。


・京商

青島の次はやっぱり最大のライバルとも言えるこちらでしょう!

ミニッツやりたいですw

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