第12話:秘密戦隊ゴレンジャー
「聞かせてくれ」
トモの観察眼は鋭い。
意見も参考になるはずだ。
「あ、はい、まず5人のマシンをスペックから眺めてみて客観的な数値で表してみました。加速、最高速、コーナー性能、回帰性、制振性の五角形、5段階評価で表にしています」
そういうと、カバンからプリント用紙を取り出し黒板に貼っていく。
それは写真とグラフと文章、綺麗なレイアウトで作られており、まるで社会人のプレゼンテーション資料のようだ。
「まずレイちゃんのマシンです」
レイ・艶雷
加速……4
最高速……4
コーナー……5
回帰性……5
制振性……4
合計22/25ポイント
「性能だけでいえば部内で最高得点です」
「マジか!うれしい♪」
「あ、ただ表にできない弱点として、3レーンのレーンチェンジ問題があります」
「あぁうん、それなぁ……」
レーンチェンジ問題。
マシンが速くなればなるほどレーサーを悩ませる。
レーンチェンジのためだけにスピードを削ぎ落とすか、それとも最適解を探して試作を繰り返し、レーンチェンジ対策機構を生み出すか。
マシンがレーンチェンジで錐揉み回転しながらコースアウトしていく姿はもののあわれと言うより他ない。
何か方法があると良いのだが。
「続いてハクちゃん」
ハク・ソニック
加速……3
最高速……2
コーナー……4
回帰性……3
制振性……3
合計15/25ポイント
「にゃぁ……まだまだ性能低いの……」
「あ、でも逆に言えば改善点を改修して速くすることもできるよ。それにバランス型のマシンになるから、低速アクロバティックな立体だったら安定してるソニックで行くべきです」
「なるほどな、確かに」
「そっかー!コースによってはあたしが一番!ってこともあるのね!すごいなミニ四駆!」
ここがミニ四駆のいいところだ。
どれだけ速くてもそれだけではダメで、コースによって考え方を変える必要がある。
「次は私です」
トモ・ブラックウイング
加速……5
最高速……5
コーナー……3
回帰性……2
制振性……3
合計18/25ポイント
「つまりソニックとは逆、高速コース向けだってことだね」
「あ、はい、そういう感じです。回帰性はどうしようもないから、他でカバーしていく感じかな。ノリオをヒクオに変えてみたいです。あとはまっすぐ飛んでしっかりコース内に入れる、この基本をしっかりできるようなマシンに仕上げたいです」
自分のマシンも客観的に見えているのがさすがだ。
「次にルキさん」
ルキ・青龍
加速……4
最高速……5
コーナー……4
回帰性……4
制振性……4
合計21/25ポイント
「万能でどんな場面でも走れて弱点もない、完璧なマシンと呼べる一台です」
「まぁそうだろうよ、自分でいうのもなんだがスキはねぇ」
「あ、はい、ただ尖った部分もないので、何かが特出したマシンには弱いかもです」
「それはしゃぁないわ……でもオレが負けるときはいつもそんな感じかもな」
的確な意見だと思う。
ただやはり油断がなければルキのマシンは部内では最強のマシンである。
「最後は師匠のリバティFです」
ジン・リバティF
加速……4
最高速……4
コーナー……3
回帰性……3
制振性……3
合計17/25ポイント
「……あれ?そんなもん?」
「あ、客観的に見て、ってだけですが。MAリジッドで中径ペラタイヤ24mm、MAの剛性を活かした安定感がポイントのマシンです。ただそのせいか、回帰性などが少し弱く、まっすぐ飛べるコースであれば大丈夫ですが、いつでもそんな走りができるかはわかりません。ギロチンも悪くはないですが、提灯やヒクオに比べたら性能は落ちます」
グゥの音も出ない。
詳しい人にマシンを見せると、必ず「お前、本当に勝つ気あんの?!」と言われてしまうのが俺のリバティだ。
電池もしっかり育てている。
モーターも厳選している。
でもそれ以上のことはしていない。
だってお姉さんにもらったこのボディ、ネジ穴などで傷つけたくはないのだ。
……しかし、やはり大会用マシンとして少し別マシンを組む必要があるだろうか。
「もちろん、この方向で突き詰めていって、硬い走りで完璧に作り込む道もあります。ただ職人なみの精度と走り込みが必要かな」
「厳しいお言葉、受け入れさせていただきます……」
この方向性でいくのは難しい。
わかってるんだ、でも俺はこのボディで勝ちたい、ジレンマだ。
「あ、そう言えばなぜプラボディなんですか?」
「これは……ぽ、ポリシーだ、俺はプラボディ至上主義なんだよ」
「うーん、であれば仕方ないです、なんとか考えていきましょう」
誤魔化せた……か。
恋の成就のため、とはなかなか言い出しづらい。
「で、これからどうする?」
ーーーーーーーーーー
解説:
・回帰性
戻ってくる能力、つまりジャンプしてコース内に戻って来れる性能のことです。
ATバンパーやアンカーのような仕組みが搭載されているかで決まります。
・制振性
着地性能のことです。
ジャンプ着地で跳ねないのが理想です。
マスダンパー、東北ダンパー、キャッチャーダンパーなどが搭載されているかで決まります。
・剛性
硬さとイメージしてください。
剛性が高いと捻れないので駆動が安定します。
ただし、ジャンプで引っかかると跳ね返りやすくもなります。
・プラボディ至上主義
プラボディで行く!と決めている人たちのことです。
ポリカーボネード製ボディのほうが軽くて衝撃にも強いのですが、全てのボディがポリカで販売されている訳ではないです。
やっぱりお気に入りのボディで走りたいですよね。
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