第28話 オルルに変化が?

「どうしたの? って何その種?」


「これはねー、希少種の種って言って……」


「ふむふむ……え、てことはオルルみたいなのが生まれるって事?」


「そゆこと」


 ゲームだと誰に使おうか凄く悩んだ記憶がある。

 だって希少種って珍しいスキルを覚えるんだよ?

 僕も手に入れた時は超興奮したなぁ。


「私みたいなのがもう一人?」


 うわー、どうしよどうしよ。

 いざ使うとしても相手が……ん?


「あっ」


 忘れてた。

 僕の従魔、というかオルルってもう希少種じゃん。

 だから使っても意味がない。


「うわぁ……そうだったぁ……」


「そういえばオルルって希少種よね? だから使っても意味がないのかしら?」


「マスター、もしかしてハズレ?」


「うーん、超貴重なアイテムだから売りたくないし……」


 オルルは凄く優秀だから外したくないんだよなぁ。

 でも使い道が……


「えいっ」


「「っ!?」」


 希少種の種をどうしようか悩んでいた時。

 オルルが急接近したかと思えば、例の種をついばんで飲み込んでしまった。


「ちょっと!! 吐き出しなさいよ!!」


「マスターの悩みの種は消す。だからやだ」


「余計に悩むハメになるわよ!? あーもう!!」


 やっちゃったかぁ……ま、終わった事だしいいや。

 そういえば希少種が希少種の種を使うとどうなるんだろ?

 

 誰も試したことがなかったから僕ですら知らない。

 多分、何も起きないとは思うけど。


「「ん?」」


 突然オルルの身体が光った。

 え、何かあるの?

 光るだけでドッキリでしたーっていうお遊び要素ならギリ納得が……


「うわぁ……すごーい」


「「へ?」」


 光が消えたと思ったら、そこには銀髪の女の子がちょこんと立っていた。


 ……誰?

 いや本当に誰!?


 というかオルルはどこ行った!?


「マスター、私人間になったのかな?」


「え……?」


 マスター?

 今、この子マスターって言った?

 僕をマスターだなんて珍しい呼び方をするのは、この世界でたった一人だけ。


「まさか……」


「う、嘘でしょ?」


 僕もエリザも信じる事ができない。

 というか認めろという方が無理だって。


 意味わかんないもん。

 そりゃあ希少種に希少種の種を使ったらどうなるかなんて知らなかったけどさぁ。


「私、オルルだよ?」


 ダークオウルが人間になるとか予想外すぎだよ!!


◇◇◇


「人間になった感想は?」


「動きやすい、歩きやすい、手が凄い便利」


「順応早いわね……」


 生まれたての小鹿どころか知らない身体のパーツをもう使いこなしている。

 流石は希少種……いや、この場合は希少種の希少種になるのかな?

 もうわっかんないよ。


「後、マスターにより密着できる。ぎゅー♡」


「うおっ!? こ、これはいいな……」


 美少女になったオルルに抱きつかれるという幸せ!!

 鳥だった時は可愛いペットだなーくらいにしか思わなかったけど、人間になると癒しといやらしさが倍増してる。


 しかも女の子の柔らかさと匂い!!

 何もかも変わってて凄いなぁ。


「あら、女の子の身体は高いのよ? オルル、お金取っちゃっていいんだからね?」


「私はいつでもどこでもタダだから。マスター限定だけど」


「だって? 感謝しなさいよ」


「感謝どころか拝みたいくらいだよ……」


 マスターでよかったぁ!!

 美少女にいっぱい好かれるー!!


 気分は最高。

 幸せいっぱい。


 あ、でも元はペットだから厳密には人間カウントしない方がいい?

 というかオルルって種族的に何に該当するんだ……ええい、細かい事は気にしないぞ。


 オルルだからいいんだ!! 

 それでいこう!!


「個人的にはエリザもギュってして欲しいけどなー」


「ア、アタシ!? い、いいけど、アタシはタダじゃないし軽くないし……」


「ほい、金貨一枚」


「うわちょおっ!? 貴重な金貨を投げないで!!」


「怒んなくてもいいじゃん……」


 金貨を指で弾いてエリザに渡すと結構マジで怒られた。

 前世の通貨と何もかも違うから、ちょっと雑に扱っちゃうんだよね。


「ま、まあでも……お金を払ってくれたのにやらないのはダメだし……」


 当のエリザは凄い恥ずかしがってる。

 顔を赤くしてうつむき、指と指を遊ばせながら身体を小刻みに震わせる。

 

 か、可愛い……

 ここまで乙女なエリザは始めてみた。

 見てるこっちまでドキドキしてくる。


 というか拒否しないんだね。

 

「感謝しなさいよ……?」


「おぉ……」


 そしてゆっくりと僕へ抱きついてくるエリザ。

 エリザはオルルよりも色んな所に肉が付いてるからか……まあ、その、めっちゃいい。


(あー……あー……)


 語彙力皆無で申し訳ないけど本当にそれしか言えない。

 

 凄い。

 ヤバい。

 めっちゃいい。

 

 小学生並の感想だけが頭の中に浮かび上がってくる。

 このまま幸せを夜まで楽しもうかと思い始めていた時、近くの瓦礫から物音が聞こえた。

 

「クッソがァ……」


「あれ? 生き残りいたんだ」


 瓦礫の中からボロボロに傷ついた盗賊が出てきた。

 だいぶ奥の方にいたから、ギルドマスターの”シャドウマリオネット”からも外れたのかな?

 ま、どうせ末路は同じなんだけど。


「ちょうどいい」


「オルル?」


 オルルが僕から離れたと思えば、急加速して盗賊の方へ近寄る。 


「ヒッ!?」


 そして、


「死ね」


 ズバズバズバァ!!

 死にかけの盗賊が風の刃で細切れにされた。


「結構使いやすい、この身体はマスターを守るのに最適かも」


「化け物が更に化け物になってるわよ……」


「可愛い化け物ってギャップで最高じゃない?」


「アンタの感性まで……ま、まぁオルルだから安心はできるけど」


 全体的に火力とスピードが上がってるような。

 やっぱり希少種の種が影響してるのかな?

 イレギュラーにイレギュラーを重ねたんだから、バグり散らかしたスペックになるのは当然か。


「そういえば元の姿には戻れるの?」


「こんな感じ?」


「おおー、いつものオルルだ」


 ダークオウルに戻ってパタパタと羽ばたくオルル。


 ま、詳しい検証は後回しだ。

 今はオルルとエリザを楽しもう。 


◇◇◇


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