第29話 雇いましょうか
「武器屋のおっちゃーん」
「んぁ?」
奥の方で作業をしていた店主を呼び出す。
ちなみに五分くらい前までオルルとエリザとイチャついていたから妙な空気だったりする。
「なんだ、もう逃げてきたのか」
「違うよ。盗賊ギルドを潰したから報告に来たんだよ」
「潰した? ははっ、面白い冗談を言うじゃねぇか」
「嘘じゃないって」
本当にギルドごと潰したのになーんで分かってくれないんだ。
スケールがデカそうな事だとは思うけどさ。
ま、少しは想定してたよ。
だから証拠をお見せしよう。
ゴンッ!!
「ほい、ギルドマスターの首」
「えっ!?」
テーブルの上に堂々と置かれた首に店主が驚く。
「……嘘だろ?」
「だから言ったじゃん」
盗賊ギルドのマスターなんて有名だろうから首を見せれば納得してくれる。
そう思って出したんだけど想像以上だ。
上から下までじーっと見回しながら店主が唸り続けた後、何かを結論づける合図のようにため息を吐く。
「俺ぁ武器屋やってて目に自信があるんだが、確かに盗賊ギルドのマスターだ。替え玉とかじゃねぇ」
「マスターが一人で倒した。だから褒めてもいいよ」
「すげぇ上から目線……って誰だこの子?」
「あー……その説明もしなきゃダメか」
ようやく認めたと思えばオルルの説明だ。
僕はかるーくオルルがこうなった原因を店主に説明する。
「従魔が人になるってすげぇな……元から人型だったわけじゃないんだろ?」
「うん。正真正銘ちょっと珍しい鳥だった」
「今も鳥だよー」
僕ですら夢みたいに思ってるもん。
マジで意味わかんない。
けど、この世界はゲームでは知らない情報がいっぱい出てくるから、そういうものだと思う事にした。
考えても仕方ないしね。
「というわけで報酬!! 強い武器作って!!」
「アタシも!! なるべくお高ーい素材がいいわね♪」
「じゃあオルルもー」
「なんか一人増えてる気がするが……まぁいいか」
想定外な事も多かったけど、これで新しい武器ができる!!
ほんと最高、テンション上がっちゃうよね。
マルチエッジも十分強いけど、やっぱサブウェポンも必要だと思うからさ。
どんどん強くなってどんどん強い相手に出会える……かな?
未来に期待しよう!!
◇◇◇
「ほい、盗賊ギルドマスターの首。いくらで買い取ってくれる?」
「へ……?」
武器の完成には時間がかかる。
という事で僕達は奪った貴金属や宝石、後は盗賊ギルドマスターの首を売りに来た。
場所は勿論、冒険者ギルド。
さっきの武器屋のようにカウンターへゴンッ!!って生首を置いたらまぁびっくり。
白金貨の取り扱いで緊張していたあの受付嬢ちゃんがプルプルと震えだして……
って白目むいちゃった。
「やっべぇ!! これやべぇぞ!! やばすぎるって!!」
「マスター!! ギルドマスター!! とんでもないのが来ましたよぉおおおおおお!?」
「なんだようるっせぇなぁ!! こっちはピリピリして……ってどぅわぁ!? んだこれ!?」
首を見て他の冒険者が驚く。
周りの受付嬢も驚く。
呼び出されたギルドマスターは手足をバタバタさせて一番驚いた。
コントかな?
「お前ら、まさか盗賊ギルドを……」
「うん!! ぶっ潰した!!」
Vサインだぞ、いえーい。
って口をあんぐり開けてどうした?
「やりすぎだろぉ……どうすんだこれ……」
「別に盗賊ギルドなんて消えても問題ないでしょ。何を悩んでるのさ」
「そうじゃねぇよ!! ああいうのは裏の繋がりがあって、報復とか仕返しとか後のリスクを考えねぇと……」
「大変だねー」
「大変ねー」
「お前らが持ち込んだんだろぉ!?」
それはそうだね、はい。
でも殺さないと武器作ってくれないし、だったらギルドごとぶっ潰した方が手っ取り早いと思ったんだよ。
後のことなんか気にしてない。
というか前しか見てなかった。
「ごめんね☆」
「一回ぶん殴っていいか?」
「マスターを殴ったら私が殺す」
「……こわ」
冗談じゃなくマジで殺ろうとしてるから気をつけてね?
こうなったら僕でも止められないからさ。
「まあ徹底的にやったから報復も難しいと思うわ。ギルドマスター含めてその場にいた盗賊はみーんな死んじゃったし」
「それもそうか……あーでも、盗賊ギルドには色々とあったし、消えてくれてラッキーか?」
「でしょー? いえいっ!!」
「それはそうと勝手にやる事じゃねえけどな」
ま、本当に報復が来たら楽しそうだけどね。
どうやって暗殺してくるのかなーとか、
どうやって僕に近づいてくるのかなーとか。
殺しのプロの技っていうのを是非とも味わってみたい。
「責任は全部リオに押し付けるといいわ。だって楽しそうだし」
「えー? 暗殺者ってマジで強そうじゃん。むしろこっちに来いよって話だよ」
「強そうな相手を笑顔で語るのはこえぇよ」
「流石マスター、大好き」
怖いもの知らずというか怖いものこっち来いってスタンス。
むしろ教えて欲しいくらいだね。
スリル、恐怖、死の淵は大歓迎だからさ!!
「けどどうしよっかなぁ。お前らポンポンやべぇの持ってくるから計算が間に合わねぇんだ」
「間に合わない? どゆこと?」
「買取に来るのはお前らだけじゃねぇってことだ。一応、増員もしているがデカい買取はどうしても時間もかかるし、何より仕事が溜まっていく」
「ふーーーん」
つまり他の仕事があるから無理!! ってこと?
冒険者っていっぱいいるもんね。
お金だって凄く動いてそうだし、素材の質とか市場の相場とか色々考えないといけない。
ゲームだと全部一律で決まってたけどね。
現実ベースだとそうは上手くいかない。
「あ、あのぉ……私、まだ他の仕事があるんですよぉ……」
「仕方ねぇだろ。買い取った人がそのまま精算するのがルールなんだからよっ」
「あんまりですよぉ!! これじゃあ時間がいくつあっても足りないー!!」
えー、受付がそのまま計算とかやってたんだ。
いくら何でもハードワークすぎない?
どこの世界に行ってもブラックというのは存在するらしい。
「ひぃん……」
あーあ、涙目になっちゃってる。
白金貨の時もこの子が精算してたのかな?
やだなぁ。
男は苦しもうが死のうがどうでもいいけど、可愛い女の子にはできるだけ優しくしたい。
必要なら殺す一歩手前まではいくけど。
さぁて、どうしようか。
僕達はお金が欲しい。
この子は仕事から開放されたい。
何かいい案は……
「あっ!!」
思いついちゃった!!
僕がめっちゃ得する最高の案が!!
「悪いこと考えてるでしょ」
「えー? 面白いと思うよー?」
「じゃ、言ってみなさい」
呆れた顔をするエリザはなんとなく察したらしい。
そんじゃ言おう。
「その子、僕が雇うね!!」
「「は!?」」
僕のアイデアを前にギルドマスターも受付嬢も固まった。
◇◇◇
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m(_ _)m
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