第26話 知らないスキル

「世間知らずの小僧がギルドを潰すなんざ考えない方がいい……死ぬぞ」


「忠告どーも」


 この世界について何も知らないし誰が正しくて間違ってるかとかどうでもいい。

 僕はこのスリルとこの世界の全てを楽しみたいんだ。


「ま、お前は倒すけどねっ!!」


 例えそれが自分の死に繋がるとしても。


「”シャドウゲート”」


 勢いのある突き。

 確かに当たったハズなのにそれは影によって消されていく。

 まるで幽霊に攻撃しているような不思議な感覚だ。


 なーるほど、まずは実体を探すところからね。

 攻略する楽しみが増えちゃった。


「”ホロシャドウズ”」


「わっ、更に増えた」


 影分身が何十体も展開される。

 しかも分身一体一体に意識があり、スキルも使えるみたいだ。


「あー……闇系で一番強いやつだ」


 思い出したよ。

 確か”スキルコピー”に対抗できた闇系スキルを。


 多すぎる分身と素早い攻撃からかなり上級者向けだったけど、油断できない相手だった。


「ま、あくまで”闇系の中では”だけどね」


 それでも最強は”スキルコピー”

 今からそれを証明しよう。


「”アクアボール”」


「ほぉ」


 僕は周りに大量の水球を生み出した。

 それを影分身に向けて一斉に放つ。


「無駄なことを……」


 だけど一発も当たらない。

 全部すり抜けてこっちにやってくる。 


 ギルドマスターの言う通り無駄な攻撃に見えたかもしれない。


「無駄じゃないよ」


 でもこれは陽動であり本物を見極めるための罠。

 今ので情報は十分集まっていた。


「”ステルス”」


「なっ!?」


 その場で姿を消す。

 消えるのはたった三秒間。 

 それまでに僕は見極めた本物へと近づき、剣に変形させたマルチエッジをグッと握りしめる。


「”マルチスラッシュ”!!」


「っ!?」


 え、今のをかわすの?

 相当戦い慣れてるなぁ。

 流石はギルドマスター、侮れないや。


「どうやって本物を見極めた」


「簡単だよ。影と本物じゃ水の付き方が違うから」


「……中々考えたな」


 影は実体とは違う。

 だから細かい部分で差が出てしまう。


 さっきの”アクアボール”も細かい部分を見極めるために使用した。

 一応、影にも水っぽいものはつくけど、重力とか張り付き方とか完全にはコピーできない。


 自然なのは本物だけ。

 後はそれを見つけたらENDってこと。


「もう影分身は使えないね。今の内に土下座して降参でもしたらー?」


「小僧、いつから影分身が通じないと過信した?」


「え?」


 いやだって、影分身にそれ以上はないよ?

 強がるのもいい加減に……


「”シャドウマリオネット”!!」


「え!?」


 何それ!?

 そんなスキル知らないよ!?


「うわっ!? か、身体が……!!」


「も、もっていかれる!? やめろ、やめてくれー!!」


 周りにいた盗賊達が苦しみ始める。

 身体から黒い影のようなものが漏れ出したかと思うと、その影は持ち主を包み込んだ。


「変わった?」


「変わったというか、全員ギルドマスターになってるじゃない!?」


「わーお……」


 他人を犠牲にした、更に精度が高い分身ってこと?

 辺りを見渡してもギルドマスターしかいないし、どれも同じような笑い方で気持ち悪い。


「ここにいるヤツらは俺の道具だ!! 俺様のスキルの為に犠牲にできる最高のゴミなんだよぉ!!」


 急にテンション上がってる。

 やだ怖い。


「もしかして乗っ取られた盗賊達って?」


「あぁ、みんな死んだよ」

 

「嘘……」


 エリザが絶句する。

 中々エグいスキルが存在したものだね。 

 人の命を犠牲にして成り立つなんてさ。


「じゃあお前を殺せば全部終わりじゃん」


「は?」


 馬鹿だよね。

 命を使うなら状況を考えて使わなきゃ。

 

「フハハハハハハハ!! さっきの分身と同じように見えたか!?」


 あっけらかんとした僕の態度をギルドマスターは笑い飛ばす。


「ありとあらゆる精度は向上しスキルだって宿主の物が使い放題!! どうだ、土下座して降参するなら今の内だぞ!?」

 

 自慢げに語る辺り、自分のスキルに相当自信があるらしい。

 なるほどね。


「エリザ、オルル、下がってて」


「う、うん……」


 問題はそのスキルに慢心しすぎてるとこなんだけど……まあ言う前に殺せばいいか。

 こういうやつは言っても聞かないだろうし、そもそも説明する義理もない。

 

「勘違いしてない? ”アクアボール”があればお前のスキルなんてコケ脅しなんだって」


「お前こそ勘違いしてるな。これはさっきのくだらない分身とはワケが……」


「あー……これだから馬鹿に説明するのは嫌なんだよ」


「は?」

 

 分かりやすく僕の煽りに引っかかってくれるねぇ。

 ほんとバカすぎて面白い。


「所詮は分身。僕の”アクアボール”で十分見切れる。バカでアホでマヌケなプライドの無駄に高いギルドマスター様に分かりやすく説明してやったんだけど?」


「き、さまぁ……!!」


 ギリギリとわかりやすく歯ぎしりをする。

 怒りの視線は僕へ。

 明らかに見下し、馬鹿にし、お前なんて眼中にないんだよと強く主張する。


(さぁさぁ、見せちゃいなよ~♪)


 知らないスキル。

 ヤバそうなオーラ。


 何それ超楽しそう!!

 早く使えよ、僕に全力を出せ!!


 お前のスキルを全力で味わいたいんだ。

 最高のスリルを見せてくれ!! 


「見下すのもいい加減にしろぉ!? テメェとの格の差を思い知らせてやる!!」


 そんな舐め腐った僕を消し去ろうと勢いよく襲いかかった。


◇◇◇


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