第21話 キメラの正体は?
「リオ!!」
「マスター」
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
キメラが動かなくなった後、僕は”怪力”を使って脱出し、無事に帰還することができた。
便利すぎるでしょこのスキル。
「え、ちょ、ちょっと!?」
「ん? うわっ、死体が溶けてる!?」
ちょっと目を離した隙にキメラの死体がドロドロに溶け始めていた。
生きるためのエネルギーがなくなったからかな?
それにしても不気味な光景だ……
「で、このコアで動いてたってワケか」
「何これ……いろんなコアがつぎはぎに合わさってるみたい」
まるで万華鏡のようにカラフルな色合いのコア。
いろんなモンスターのコアを取り込んだからだろうか?
(何で僕を狙っていたんだろう)
アイツの音声から察するに狙いは僕だった。
しかも殺すことではなく生け捕りで。
僕にしかできない何かがあるのかな?
「ま、とりあえずはギルドに報告かな」
「そうね」
考えたところで仕方がない。
気持ちを切り替えて、僕たちはギルドに向かって 足を進めるのだった。
◇◇◇
「クエスト完了です!! では、こちらが報酬になります!!」
「「おぉー!!」」
袋に入った硬貨がズシッとテーブルに置かれる。
あのクエストだけでこんなにもらえるの!?
冒険者って稼げる仕事なんだなぁ。
「んふふ、これだけあればお洋服も……♪」
「報酬はニ等分だからね?」
「わかってるわよ」
硬貨の量で夢を見ていたらしい。
残念だけど半分になるからちゃんと受け止めてね?
「あ、でもぉ……リオに買ってもらうのもありかしら♡」
「うぐっ!?」
「んふふ♪」
そのあざといポーズやめて!!
マジで刺さるから!!
すっかり自分の武器にしちゃってるね……
でも僕は幸せだから凄く複雑!!
「あ、そうだ。ポイズン スネークを倒した後、キメラみたいな化け物に出会ったんですけど……」
「キメラ?」
「これがコアです」
思い出したのと同時にテーブルの上へキメラのコアを置く。
「こ、これは!! 少々お待ちください!!」
「ん?」
すると職員さんの顔色が変わり、大慌てで奥の方に入って行った。
「急にどうしたのかしら?」
「やっぱこのコアに何かあるんだね」
少なくとも何か知っているみたい。
僕ですら知らない事だしここで何かの情報が得られるならありがたい。
職員さんが来るまでの間、エリザとオルルと話すこと約五分。
「待たせてすまない」
職員さんは戻ってきた。
知らないおっさんを連れてきて。
「誰?」
「ギ、ギルドマスター!? なんでここにいるの!?」
「ほー、これがギルマス……」
「アンタも挨拶しなさいっ!!」
「ぶべっ」
エリザに頭を掴まれて無理やりお辞儀させられる。
後でやるつもりだったのに。
いきなり出てきてびっくりしたんだよ。
「俺がギルドマスターのハゴンだ。お前らめんどくさい物を持って来たなぁ……」
「ギルドマスターはこれが何なのか知ってるの?」
「あぁ、嫌という程な」
苦い顔をしながら、ギルドマスターはキメラが何なのかを説明する。
「これは人工的に作られたモンスターのコアだ」
◇◇◇
「数か月前からキメラが出現したって大騒ぎでな。低ランクのモンスターしか出ない森にも現れるから、クエストの達成率が低くなって悩んでたんだよ」
「確かに強かったね」
あんなのに邪魔されちゃクエストなんて出来やしないよね。
僕たちはたまたまクエストが終わった後に遭遇したから良かったけど。
「しっかし、よく倒したな……お前ら新人だろ?」
「このスーパールーキーが化け物すぎるのよ。はっきり言ってイカれてるわ」
「でも楽しかったよ? 知らない上に強いし!!」
「……なるほどな」
なんでそんな顔するの?
不思議なことにこの世界で僕の考えを理解してくれる人は誰一人いない。
アニメや漫画だと戦闘狂の人って何人かいたと思うんだけど。
みんな生きるのに必死なんだね。
「で? なんであれが人工的に作られたってわかったの?」
「このコアの形状は自然では絶対に作れない。芸術作品としてコアをツギハギに組み合わせる技術があるんだが、俺はそれの応用だと確信した」
ほぉ、そんな技術が。
面白い文化があるんだという事とギルドマスターの知識の豊富さと洞察力に感心した。
「あのキメラをなんとかしろって国からはお願いされてるが……まぁ、出会ったときに適当に対処してくれればいい」
「あれ? てっきり絶対倒せって言うのかと」
「強すぎるし面倒な相手なんだよ。それに国を守るのは国の仕事だろ? 俺達を巻き込むなって話だ」
その辺に関してはシビアらしい。
まあ僕も無償で人を助けるなんてゴメンだけどさ。
ボルダーもそうだけど、ここの冒険者は少しクセが強い人が多いね。
あ、僕もかな?
「ま、こうして説明するのは仕事だ。一応、安全に気を付けてますよってアピールはしねぇといけねぇからな」
「そういうことね……で?」
「で?」
話が終わったのと同時にエリザがニコニコした顔でギルドマスターを見つめる。
「このコアはいくらで買い取ってくれるのかしら?」
「……前例が少ないからちょっと待ってろ」
さっすが。
こういう所は抜け目ないねぇ。
「ナイスエリザ」
「んふふ♪ 貰えるものは貰っておかなきゃ♪」
今日の晩御飯は少し豪華になるかも。
冒険者ライフがどんどん楽しくなってきた。
◇◇◇
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m(_ _)m
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