第20話 キメラ戦②
「さーて、どうやって倒そうかなぁ。あんまり強いスキルを使うと倍返しされちゃうし」
スキルをどれくらい”吸収”できるのか気になるけど”スキルコピー”のスキルは一発一発の火力がそこまで高いワケじゃない。
大火力でドカン!!っていうタイプじゃないからなぁ。
何かこう、スキル以外でダメージを与える方法があればいいんだけど……
「あ、そっか!! スキルを使わずに倒せばいいんだ!!」
「簡単そうに難しい事を言わないでくれる!? スキルなしでどうやってダメージを出すのよ!!」
「それはねー……」
全く考えてなかったので今から考える。
スキルは攻撃だけじゃなくて身体強化とか色んなスキルがある。
だからその辺うまーく使えば……
「よし、思い付いた」
「ほんとに?」
「多分これで行けるハズ。ダメだったらやり直せばいいだけだし」
「このピンチを楽しめる程、アタシは強くないってのに……はぁ」
耳元で作戦を話した後、やれやれといった顔で再びキメラに向き直るエリザ。
確かに賭けみたいなものだけどさ、強敵を攻略する楽しみっていうのをエリザにも共有したいよ。
「ppp……」
「準備はできた? いくよー!!」
「りょーかいっ!!」
僕の号令と共に作戦を開始した。
「”ファイア”!!」
「”サンダー”!!」
「”吸収”」
まずは真正面に向かってそれなりの威力でスキルを放つ。
予想通りキメラはスキルを魔法陣で無効化し”吸収”してきた。
「”射出”」
「おっとぉ!! けど、”メガサンダー”よりは弱いね」
「元が弱いと倍にしても弱いのね……これならアタシでも対処できるわ!!」
そして吸収したスキルを倍にして跳ね返す。
が、元の威力がそんなに高くないので、倍にした所で凄く強いってワケでもない。
僕達は跳ね返されたスキルを完全に見切り、余裕で回避した。
「ほらほらー、こっちだよー」
「ppp……?」
途中、声を出したりスキルを使いながらキメラを煽っていく。
(うまく誘導できたね)
ただ煽ってるわけじゃない。
とある作戦の為にキメラの注意を惹く必要があったんだ。
「もう一度!! ”ファイア”!!」
「”サンダー”!!」
「”吸収”」
そして先程と同じ行動を繰り返す。
作戦は順調に進んでるね。
このまま長引かせる事が出来れば……
「”メガポイズン”」
「「へ?」」
若干余裕が生まれていた時、キメラは突然口から大量の毒液を吐き出した。
「ひゃあ!? こ、こいつポイズンスネークのスキルも使えるの!?」
「ポイズンスネークのコアを喰った影響かな……だったら長引くとマズいかも」
まさかコアの所有者のスキルも使える感じ?
だとしたら長期戦とポイズンスネークのスキルはかなり相性が悪い。
「”ガトリングファイア”」
「あっぶないわねぇ!! ”サンダーバリア”!!」
オマケに他のモンスターのスキルも使えるみたいだし。
今の所こちらもスキルで対処はできているけど、このまま押し込まれるとマズイ。
戦闘可能なエリアが徐々にキメラに侵食されていっている。
「っ!! このぉ!!」
「ppp……」
逃げ道が少なくなっていく中、エリザに向けてキメラのスキルが発射される。
エリザは間一髪の所でかわし、直撃だけは避けることができた。
「エリザ!!」
「アタシは大丈夫よ!! オルルもいるし!!」
「私を信用しすぎ、でも嬉しい」
本格的に追い込まれ始めている。
でもこちらの作戦も終盤に向かっている。
最後の〆を行うべく、オルルがキメラの近くまで羽ばたいた。
「”ウィンドタックル”」
「ppp……損傷確認……」
高速で近づいたオルルの突撃にダメージを負うキメラ。
これならいける!!
そう確信した僕は手を大きく振りながら大声をあげた。
「おーい!! そこのバケモノさんこっちにこーいー!!」
「んふっ、今なら食べるチャンスよー♪」
「……モンスターにあざといポーズって効くの?」
「生き物ならワンチャンあるでしょ!! アタシは可愛いんだから!!」
「それはそう」
こっちに来てくれたらなんでもいいんだけどさ。
流石にモンスター相手に美少女のあざといポーズは意味ないんじゃないかなー?
僕に対しては効果抜群だけど。
「ppp……排除、排除……」
「ほら来た!!」
「なんだかわからないけど……よし!!」
多分あざといポーズが原因ではないけど、こちらに来てくれた。
その行動を逃さず、僕は地面を蹴って宙を舞った。
「ちょっと地面に挨拶してなっ!!」
「ppp……損傷確認……」
手に握りしめたマルチエッジをハンマーに変形させ、”怪力”を発動させた状態で思いっきりキメラに叩きつける。
キメラは勢いよく落下し、激しい音と共に地面に叩きつけられた。
「ppp……異常発生……異常発生……」
そしてキメラが叩きつけられた地面が崩れる。
崩れた地面には大穴が空いており、そこにはエリザの”エレキネット”と僕のグラビティが展開されていた。
そう、これは罠付きの落とし穴だ。
”エレキネットは”電撃のくもの巣。
”グラビティ”は対象を吸い込んだり押し戻したりできる。
この二つを落とし穴に組み合わせることで、ちょっとやそっとでは抜けられないトラップが完成した。
「ほ、ほんとに引っかかったの……」
「まだまだ!! ここからが本番だよ!!」
これだけでキメラはくたばらない。
僕は追い打ちをかけるべく、近くの大岩に触れた。
「へ!? ア、アンタそんな重い物を持ち上げられたの!?」
「怪力レベルMAXは伊達じゃないからね~」
低級スキルの中でも”怪力”は凄まじい。
僕の何倍もの大きさはある大岩を持ち上げられるんだから。
初級段階から優秀なのは凄い助かるよね〜。
「名付けて”ロックサンド”!! そりゃあああああ!!」
「ppp……」
そして持ち上げた大岩を穴に引っかかっているキメラに向けて落とした。
大岩にサンドされるようにキメラがぺしゃんこに潰れ、辺りに大量の血肉を撒き散らす。
「これで終わり?」
「いや、僕の予想ではこの岩を壊して……」
説明する前にさっき落とした岩が崩れる。
そして、高速で突撃してきたキメラに僕の身体は捕まってしまった。
「ppp……脱出……対象の確保完了」
「リオ!!」
なるほど、目的は僕を生け捕りにすることか。
動きに殺意が無さすぎるなーって思ってたよ。
「いいねぇ……このヤバいって感覚が最高に楽しいよ」
このままだと連れ去られる。
負けてしまう。
下手したら殺されるかも?
でも、そんなピンチが僕は楽しくて仕方がなかった。
「けどもう終わりなんだ。またね」
まるで夢中だったゲームの電源を切る時みたい。
名残惜しい気持ちの中、僕は”怪力”で力を増した状態でマルチエッジの剣でキメラを突き刺した。
◇◇◇
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