第19話 キメラ戦①
「あれはモンスター、なのかな?」
「モンスターに決まってるでしょ……でも不気味ね」
身体の部位全てが違うモンスターで構成されている。
明らかに外部から付けられたような、自然に構成されたような感じじゃない。
それと機械のような謎の鳴き声……鳴き声でいいのかな?
機械っていうのがこの世界にない概念だけど、何から何まで不思議な要素満載だ。
「口の周りに血がついてる……こいつがポイズンスネークをやったのかな?」
「みたいね。コアだけ狙う理由はわかんないけど」
てことはBランク以上は確定ってことか。
かなり強いモンスターみたいだね。
「違う」
「オルル?」
「あれはモンスターじゃない。正確には生き物ですらない」
「生き物じゃない? じゃあゾンビってこと?」
「ゾンビとは少し違うけど……うまく説明できない」
同じモンスターのオルルがあいつをモンスターじゃないと言い切っている。
生物の本能的に何かが違う?
後、僕が一番気になっているのが……
(あんなモンスター、レバティ・フロンティアにはいなかった……)
全ダンジョン、全ステージを攻略した僕ですら知らないモンスターだという事。
イベント限定モンスターとか?
一応、初期から今に至るまで全イベントやっていたつもりだけど。
「ppp……!!」
「へ?」
今、僕を見た?
ギョロリと飛び出した目玉が僕を捉えた瞬間、猛スピードで飛び掛かってくる。
「うわっ!? 急に襲い掛かってきた!?」
「リオ!! あーもう、二連戦はしんどいってのに!!」
後ろに回転しながらかわし、マルチエッジを取り出す。
エリザやオルルもすぐに戦闘態勢へと入り、謎のキメラに向けてスキルを使用する。
「”メガサンダー”!!」
強力な電撃波がキメラに向けて発射される。
さぁ、どうでる?
その羽で素早くかわすか、
それとも真正面で受け止めるか、
”メガサンダー”は中級の中でも強力なスキル。
エリザのスキルに対する動きでキメラの弱点を探るとしよう。
「ppp……”吸収”」
「え? ア、アタシのスキルは!?」
「吸い込まれたのかな?」
なんとキメラは前方に魔法陣を展開し、エリザのスキルを吸収してしまった。
そんなスキルあった?
吸収なんてかーなりぶっ壊れだ。
正直使えるなら僕も欲しい。
けど、スキルを使ったから僕の”スキルコピー”が発動して……
「あれ? コピーアナウンスは?」
何も反応がない?
キメラがスキルを使ってから結構経っているのに、スキル獲得のアナウンスが流れない?
「どうしたのよリオ!!」
「”スキルコピー”が反応しない!! こいつ何かおかしいよ!!」
「じゃあさっきのはスキルじゃないの!?」
人間だろうとモンスターだろうとスキルを使えば確実にコピーできる。
それが”スキルコピー”なのに、それが反応しないってどゆこと!?
キメラが使うスキルはスキルではない別の扱いって事?
それともコピーできない特別なスキル?
わからない……
何もかもが想定外すぎて僕ですら混乱している。
「”射出”」
キメラの口元からバチバチとした黄色いエネルギーが溜まっている。
あれってエリザのスキル?
射出とか言ってたし、キメラがやろうとしていることって……
「うわぁ!?」
「エリザ!!」
エリザに向けて”メガサンダー”がキメラの口から放たれる。
しかもエリザのより高速かつ巨大な姿で。
ヤバい!! 速すぎてエリザが避けられない!!
自分のスピードでも追いつかないと判断した僕は風スキルをエリザの足元に向けて発動した。
「”ウィンドショット”!!」
「きゃっ!?」
「ちょっとだけ我慢してねっ!!」
”ウィンドショット”でエリザの身体を浮かせて”メガサンダー”を回避。
そして宙に舞い上がったエリザに僕が飛び込んでそのままキャッチする。
「はい、マスター」
「ありがとうオルル」
「えへへ」
着地する瞬間、オルルが風魔法で落下スピードを落とす。
衝撃なく着地できた……これはオルルをいっぱい褒めてあげよう。
お礼に頭を撫でてあげると、オルルはわかりやすく喜んでくれた。
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「あ、ありがとう……情けない所見せちゃったわね」
「相手が規格外だから仕方ないって」
自分のスキルが”吸収”されてそれを倍にして跳ね返すなんて誰も想像できないよ。
油断していたら僕だって直撃してたかもしれないし。
「……」
「エリザ?」
「あぁ、なんでもないわ」
ただエリザの様子が少しおかしい。
集中してるというか気を紛らわせているような?
「ppp……対象の確保を優先」
「また僕!? 何か関わりあったかなぁ!?」
再び僕に向かって襲いかかるキメラ。
キメラと関わったことなんて一度もないけど、やられっぱなしではいられない。
「”ダークショット”!!」
僕は威力を最低限に落としつつ、サイズを大きくした”ダークショット”をキメラの目元に向かって撃った。
”ダークショット”は視界を奪うのにも有効だ。
威力も抑え目にしたし、仮に吸収されたとしても大した威力にはならないハズ。
「ppp……」
「視界じゃない……ってことは別の部分で感知してるんだ」
目悪そうだもんね。
暗闇や閃光デバフが効かないモンスターなら今まで何体もいたからこれは想定済み。
「考えられるのは音と温度!! だったら!!」
考えられるセンサーを全て潰す。
僕は両手でスキルを発動し、それを一つにまとめた。
「”ファイア”で”ウォーター”を熱くして巨大化……そーれっ!!」
まとめたスキル……というか熱湯になったウォーターを上空に向けて発射し、軽い雨のようなものを生成する。
周囲に熱湯が降り注ぎ、地面からは湯気が出始めていた。
「ぷへっ……ここがバスルームだったら最高の温度なのに」
「後でたっぷり入ればいいじゃん?」
こんなシャワー僕だって嫌だけどさ。
僕は次の手に出るべくオルルに指示を出す。
「オルル!! スキルを適当な地面に撃ち続けて!!」
「了解」
オルルが風系スキルを地面に向けて乱射し始めた。
土をえぐるどころか破壊しているのは少しやりすぎ感があるけど、これで僕の作戦の準備が整った。
後はキメラの反応次第だけど……
「ppp……ppp……?」
「全部塞げば問題なさそうかな!! いくぞー!!」
予想通り!!
目、音、温度の全てを感知できなくなったキメラは僕達を見失って必死に探している。
その隙を逃さず、僕はハンマーに変形させたマルチエッジにスキルを込め、そのままキメラに向けて全力で突撃した。
「”マルチインパクト”!!」
全てのスキルを込めた一撃がキメラの身体にクリーンヒットする。
キメラは木々を何本も巻き込みながら勢いよく吹き飛ばされていった。
「これでどうかな……?」
「流石に死んだでしょ。元から生きてないみたいだけど」
それをフラグって言うんだけど、大丈夫かなー?
「ppp……」
「わーお、結構しぶといね」
「というかダメージ入ってるの? 見た感じピンピンしてるし」
やっぱり生きてた。
けど、一応外傷はあるし血も出ている。
ダメージがないというより痛みを感じないのかな?
だったら”吸収”されないよう何度も攻撃すればいいだけ。
なんだけど、僕はそれ以上に……
「規格外、未知、強敵……」
この戦いを楽しんでいた。
知らないモンスターでしかも滅茶苦茶強い。
更には”スキルコピー”に対する謎のメタも張ってきてさ。
イチからこのモンスターを、しかも手探りで攻略できる。
こんなスリルは中々味わえない。
僕の知らないレバティ・フロンティアが目の前に広がっている。
最高だ……追い込まれてるのにテンションが上がっていく!!
「こんな時に笑うなんて、ほんとイカれた精神してるわよね」
「だって楽しいじゃん。こんなにヤバそうなモンスターと戦えるなんてさ」
「あーあー。わからないしわかりたくないから聞きませーん」
この戦いが続く事に喜びを感じつつ、再びキメラと向き合う。
謎の化け物さん、僕に最高のスリルを味わせてね?
◇◇◇
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m(_ _)m
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