第18話 謎の生物

「で? さっきのは何なのよ。リオが使えるスキルって全部最低ランクじゃなかったの?」


「これがマルチエッジの力だよ。いろんな武器にできるし、スキルを合わせて火力を倍増できちゃう♪」


「そんなのデメリットがないようなものじゃない……」


 その通りではある。

 実際、初心者救済武器のマルチエッジがぶっ壊れと化したのは”スキルコピー”が原因なんだから。

 

 無限にスキルを覚えられるってやばいよね。

 他のスキルじゃマルチエッジの真価を1ミリも発揮できないのに。


「マスター、漁らなくていいの?」


「あっ、そうだそうだ。ポイズンスネークの解体をしないと」


「アタシもするー!! 肉や魔石は高く売れるんだから♪」


 全員がノリノリの状態でポイズンスネークの解体を行う。

 周りが毒まみれで大変だったけど、毒消しのポーションを多めに持って来てたから、なんとか浄化しながら作業はできた。


「というか肉って売れるの? 毒まみれで食べる部分がないような……」


「こーいう特殊なモンスターを扱う職人がいるのよ。ポイズンスネークも浄化方法があるし、うまく解体すれば高く売れるわ」


「はぇー、フグみたいなものかな?」


 この蛇を食べようと思ったのは凄いけど、この世界だと食べられるものは何でも食べるという考えなのかな?

 蛇って鶏肉みたいな味がするってネットで見たけど、ポイズンスネークはどうなんだろ。


 というか毒を撒き散らすモンスターを食べようとするご先祖様は中々のチャレンジャーだ。


「わぉ、魔石〜♪ おっきくて綺麗で高く売れそう♪」


「……ん?」


 魔石ではしゃいでいるエリザを横目に見つつ、僕は依頼内容について考えていた。


 目的はポイズンスネークの討伐。

 それ自体は達成したし証拠の素材も回収できた。


 ただ依頼書に書いていたポイズンスネークの数は……


「もう一体はどこ?」


 二体。

 このダンジョンにポイズンスネークは二体生息していると記載されていた。

 

 別に二体とも討伐しろとは書かれてないし、単に素材を持って帰ってくればそれで大丈夫。


 でももう一体のポイズンスネークはどこに行ったんだろう?


「そういえばここには一体しかいなかったわね。狩りにでも行ってるのかしら?」


「だとしたら今の騒ぎで来ると思うけど……」


「遠くもオルルが見てた。けどポイズンスネークはいなかった」


 じゃあこのダンジョンにポイズンスネークはいない?

 オルルが見落としている可能性もゼロではないけど、少なくとも大きい気配は存在しない。


「考えても仕方ないか……残りを解体して戻ろう」


「「おけー」」  


 無いものに不安を感じてもしょうがない。

 仮に別の場所で現れたとしても勝てばいいだけだ。


 実際、僕達はポイズンスネークに勝利している。


 不意打ちでもない限り対処はできるだろう。


(なーんか引っかかる)


 なのに妙な胸騒ぎが収まらないのは何故?


◇◇◇


「大量大量!! ふふーん、今までで一番稼げたかも!!」


「報酬は僕と二分割だからそれは無いんじゃない?」


「そうだった!? でも二分割してもそれなりに貰える!! だから大丈夫よ!!」


 驚いたり笑ったりエリザは面白いなぁ。

 ダンジョンから抜けた後、僕達は素材を抱えながらホムーンに帰ろうとしていた。


 あ、まだ日が落ちてない。

 結構早く終わったからかな?


 定時前に帰れるってこんな感じ?

 ちょっと幸せだ。


「っ……マスター、ちょっと偵察してくる。ここで待ってて」 


「え? あぁ、うん……」


 と、オルルが急に透明になって飛び立った。


「どうしたの? なにか見つけた?」


「みたいだけど……待ってて欲しいという事は何かヤバい気配を感じたのかも」


「気配って……基本的にダンジョン近くの外に強いモンスターは出ないわよ」


「え?」


 何それ。

 そんな話聞いたことないんだけど。


「どゆこと?」


「モンスターにとってダンジョンの中が一番居心地がいいのよ。魔素は濃いし獲物も多いし、何より隠れる場所だって豊富なの」


「わざわざ外に出る理由はないって事?」


「そーいうこと」


 モンスターの生態的に外の環境よりダンジョン内の方が合ってたんだね。

 凄い引きこもりさんだ。


 獲物にするモンスターだって多く住んでるし食物連鎖も自然と形成されてるんだなぁ。


「マスター、こっちこっち」


「ん、わかった」


 少ししてオルルが姿を現す。

 バサバサと翼を羽ばたかせてアピールし、こちらに来るよう僕達を誘導した。


 オルルが警戒するほど強い気配の正体。

 それは……


「「え?」」


 ポイズンスネークの……死体?

 腹部付近をズタズタに引き裂かれて、ぴくりとも動かないその姿。


 こいつがもう一体のポイズンスネーク?

 でもなんでこんな所に死体が……


「誰かが倒した? でも外にいるのはおかしいよね」


「少なくとも冒険者ではなさそうね……ほら、魔石だけ綺麗に取られてる」


「あ、ほんとだ」


 よく見ると魔石があった位置に空洞ができている。

 犯人は魔石を狙ってポイズンスネークを殺したってこと?


「Bランクモンスターの肉は高く売れるって冒険者の間では当たり前なのに、それを捨てるなんてありえないわ」


「じゃあモンスターが倒したってこと? でもポイズンスネークに勝てるモンスターなんて……っ!?」


 その時、ダンジョンで感じていた胸騒ぎが再び蘇った。

 ゾクゾクするけど恐ろしい、不思議な感覚。


「え……?」


「どうしたのリオ?」


 胸騒ぎだけじゃない。

 今まで感じたことがない恐ろしい気配。


 人間? モンスター?


 どちらでもない。

 いや、どちらでもある……?


 なんだこれ。

 僕は一体何を感じ取っているんだ?


「上だ!!」


「へっ……!?」


「何あれ」


 上空から謎の気配が。

 一斉に警戒態勢に入り上を見上げると、


「ppp……」


「キメラ……?」

 

 色んなモンスターをぐちゃぐちゃに混ぜたような、不気味な生命体が空を飛んでいた。


◇◇◇


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