第16話 vsポイズンスネーク

「この先の洞穴で寝ていたよ。襲うなら今がチャンスかも」


「へぇ……じゃあ寝ている間に殺してやりましょ」


「えっぐい事考えてる……」


 冒険者としては正しいんだけどね。

 リスクより安全を取るのが普通なのだから。


「……zZ」


「あっ、あれじゃない?」


 奥の方にチラッと見える大きな影。

 長い巨体を丸めて静かに眠る蛇のモンスター。


 ポイズンスネークだ。

 まだ近づいてなのに凄い迫力だなぁ。


「ぐーすか寝ちゃって……ふふっ、今から丸焦げになるとは知らないのね」


 エリザが不敵な笑みを浮かべ、右手からバチバチと雷スキルを発動する。

 さて、ポイズンスネークはゲームでも強敵だった。

 Bランクであるエリザの攻撃がどれくらい効くか見てみよう。


「”メガサンダー”!!」


 強い閃光と共に大きめの雷撃が放たれる。

 雷撃はポイズンスネークに高速で迫り、このまま直撃すると思っていたけど。


「っ!! シャオッ!!」


「えっ!? 今のをかわすの!?」


 ポイズンスネークは一瞬で起きた後、巨大な身体に見合わないスピードで雷撃を回避した。

 やっぱ反応速度が異常だ。

 ハードモードだから警戒心もノーマルより高いってワケか。


 これは僕でも少し手こずるかも?


「オルル、毒に対しては風スキルで対処して!! こちら側に毒煙を寄せないようにお願い!!」


「りょーかいっ」


 バサバサと飛びながらオルルは風スキルを放つ。

 

 ポイズンスネーク最大の武器は毒。

 レバティ・フロンティアで状態異常はかなり強めに設定されており、ベテランのプレイヤーが下層のモンスターから貰った毒でやられた、なんて話があるくらいだ。


 勿論、僕もその一人。

 

 だから毒系スキルは手に入れたかったんだけど、相手にするのは厄介なんだよね。


「ショオオオオオオ!!」


「うわっ!! 毒液が波みたいになってる!?」


「これはオルルだけでもしんどいかな……”連続ウィンドショット”!!」


 オルルの風スキルと僕の風スキルを合わせてポイズンスネークの毒を吹き飛ばす。

 二つの強風によって毒液は阻まれ、こちら側まで届くことはなかった。


『スキル:ポイズンショットを習得しました』


 お、スキルをゲットした。

 これで一つ目の目的は達成かな?


「”デュアルサンダー”!!」


「ショオッ!!」


「二連でもダメなの!? これがBランクの恐ろしさってことかしら……」


 隙を見てエリザが攻撃するけどカスりもしない。


 エリザが弱いんじゃない。

 ポイズンスネークが早すぎるんだ。


 エリザの電撃を受け止めずにかわす辺り、喰らったらヤバいってことはポイズンスネークも理解してるし。


「エリザ、色んな方向から攻撃しよう」


「わかったわ!!」


「マスター、私も行く」


 全員かわしながらスキルを発射する準備をした。

 視線で合図をし、なるべく複数方向から攻撃できるスキルをポイズンスネークに向かって発射する。


「”ガトリングサンダー”!!」


「”連続ファイア”!!」


「”ツイントルネード”」


 さぁ、どう出る?


「ショォオオオオオオ!!」


「「「っ!!」」」


 なんとポイズンスネークは僕たちのいる正面に向かって飛び込んできた。

 連射系だから一発一発が弱いと判断したのか!!

 

 モンスターの癖に賢い。

 流石ハードモード!!


「”ギガトルネード”」


「ショアッ!?」


 でも突撃をただ喰らうワケじゃないよ?

 オルルはいち早く反応し、強力な風スキルをポイズンスネークに向けて放つ。

 ポイズンスネークの動きを止める……事はできなかったが、動きに大きくブレーキがかかった。


「”サンダースラッシュ”!!」


「”トリプルスラッシュ”!!」


 その隙を僕たちは逃さない。

 僕とエリザは腰から剣を抜き、スキルを付与した斬撃をポイズンスネークの巨体へ振り下ろした。


「ショアアアアアアアアアッ!!」


「剣も使えるんだ、すごいねー」


「元貴族だから一応ね。というかアンタの武器変形しなかった? どうなってるのよ?」 


 ポイズンスネークが悲痛な叫び声をあげながら倒れていく。

 巨体の割に耐久力はないらしい。

 この感じなら、攻撃を当て続ければ勝てるかな?


「ァアアアアアアアアア!!」


「うわっ!! 完全に怒ってるじゃない!!」


 だけどポイズンスネークもただやられるだけではない。

 全身を使って地鳴らしを起こし、僕たちに向けて強い怒りを表し始める。


「シィアアアアアッ!!」


 巨大なしっぽを利用して崩れた岩を掴み、それを僕たちの方へ投げる。 

 一度だけじゃない。

 落ちている岩がある限り何度も何度もだ。


「わーお、意外と力持ちだねぇ」  


「言ってる場合!? これじゃさっきみたいに斬るのも難しそうね……」


 いくら耐久力がないといっても、一定以上のダメージは必要。

 先ほどの斬撃に勝る攻撃を当てれば、ポイズンスネークは確実に倒せる。


「ショアアアアアアア!!」


「今度は毒液の連射!? それならアタシだって!!」


 当てれば勝てる。

 だけど当てられない。


 防ぐだけで戦況は動かないし、時間が経てば毒液が広がってこちらが不利になるだけ。


 目的のスキルはゲットできたんだけどなぁ。

 前世程アイテムや所持スキルが充実してるワケでもないしどうしようか。


「このぉ!!」


「ショアッ!?」


「ん?」


 今、毒液を電撃が貫通した?

 僅かだけど、毒液をエリザの電撃が通り抜けたように見えた。

 しかも素早いハズのポイズンスネークに当たったみたいだし……


「そっか!!」


 攻略方法が見えた!!

 撃破までの道を構築した僕は早速オルルとエリザに指示を出す。


「二人共!! あの毒液を五秒くらい止めることはできる!?」


「えぇ!? ……そこの煽り鳥が協力してくれるなら」 


「強力すれば行けると思う。本人はノリ気じゃないけど」


「よっし!! じゃあお願いね!!」


 マルチエッジを別の武器に変形させる。

 銃のようなトリガーに弓がくっついたような外見。

 

 クロスボウだっけ?

 猟師が狩りに使うヤツ。


 その名もスナイパーモード。


「あぁもう!! アタシへの命令は贅沢だって知ってる!?」


「そう言いつつやってくれるエリザが好きだよ」


「お褒めの言葉をどうもありがとっ!!」


 スナイパーモードに変形させた後、全体にスキルを溜め込んでいく。

 このモードはチャージに時間がかかるからソロプレイで活用するのは少し難しい。


 だけどサポートしてくれる仲間がいるなら、こいつのフルスペックを発揮することができる。


「もうヤバそうなんだけどぉ!?」


「マスター、私もちょっとしんどい」


 二人が張ってくれた電撃と風の壁が崩れそうになる。

 その時だった。


「大丈夫、もういけるよ」


 戦いを終わらせる一撃が完成した。


「”マルチシューティング”」

 

 僕の持つ全スキルをつぎ込んだ最強の弾。

 それがクロスボウから勢いよく発射される。


「嘘ォ!? 毒液ごと消し飛ばしてる!?」


「マスターすごーい……」


 弾の威力は凄まじかった。

 壁として立ちはだかる毒液をいとも簡単に貫通し、それどころか周りの毒液をかき消してしまう程。


「ショアアアアアアアアアアアッ!!」


 そんな一撃をポイズンスネークが耐えられるワケもなく。

 むしろ自らが放った毒液が視界を防ぎ、かわす余裕すら与えられない。


 弾はポイズンスネークに直撃し、そのまま巨体を真っ二つにしてしまった。


「なんなのこれ……リオって何者なの?」


「マスターはマスター」


「それはわかってんのよ」


 苦笑いを浮かべるエリザ。

 スキルコピーもマルチエッジもぶっ壊れだもん。

 驚く気持ちもなんとなーくわかる。


(ま、まぁ僕もここまでとは思わなかったけど……)


 毒液を貫通すればよかったのに、周りの毒液ごと掻き消すなんて想定外だ。

 弾っていうかレーザービームじゃん。

 もっとスキルを獲得したらどうなっちゃうんだろう。


「ま、今後が楽しみって事で!! さー解体解体!!」


「よくのんきにいられるわね……はぁ」


 こうしてポイズンスネークの討伐クエストは幕を閉じた。


◇◇◇


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