第15話 エリザの秘密

「スキルコピーだよね? えーっと……」


 とりあえずスキル説明が表示されたウィンドウをエリザに見せる。

 エリザはスキル説明をじっくり読んだ後、呆れたような声で呟いた。


「……弱くない?」


「文章だけだとね」


 本当にその通り。

 初級スキルしかコピーできないスキルを高く評価する人はいないだろう。

 百歩譲って便利だと言う人はいるかもしれないけど。


「僕も最初はゴミスキルだと思ってたよ。どんなに強いスキルをコピーしても成長段階が初級の状態で習得しちゃうし」


「そうよね……え、でもリオがさっき撃った”サンダー”は初級の威力じゃなかったわよ?」


「ふっふっふっ、それはスキルの隠し効果が関係してるんだよ」


「隠し効果?」


 だけど”スキルコピー”はそこで終わらない。

 こいつに隠された能力こそ、スキルコピーの本領であり最強である理由。

 

「コピーしたスキルのレベルを100にする」


「へっ……!?」


 その驚きの効果にエリザですら動揺した。


「ひゃ、100ですって!? アタシのスキルですら4〜50が最高なのに……」


「50もあったんだ。結構強いじゃん」


「100に言われても素直に喜べないわよ……」


 スキルは40を超えた辺りからレベルアップに必要な経験値がグンと上昇する。

 だから50まで上げているスキルがあるエリザは相当頑張り屋さんってことだ。

  

 100の前だと霞んで見えちゃうのは……まあ仕方ない。


「だから初級スキルなのに威力がハンパじゃなかったのね……とんでもないぶっ壊れスキルじゃない」


「だよねー。皆もぶっ壊れだ修正しろって運営に言ってたくらいだし」


「修正? 運営?」


「ん゛んっ!! な、なんでもないよ?」


 ヤバい、また前世の言葉を使っちゃった。

 この世界ではゲームの世界が現実なんだからあまり口にしないようにしないと。 


「でも隠し効果なんてよく気づいたわねー、研究でもしてたの?」


「そんなとこかな。実家だと見放されてたせいで時間はあったし」


「ふーん……」


 ネットに情報が乗ってたから、なんて理由で説明はできないのでそれっぽい理由で誤魔化す。

 

「ねぇ、アンタって元貴族でしょ?」


「うん……え、なんで分かったの?」


「実家で見放されてたって言ってたじゃない。強いスキルに固執するのは冒険者か貴族家くらいだし、アンタの身なりは貴族出身って感じだったから」 


「へぇー」


 鋭いなぁ。

 僕の嘘が下手な可能性もあるけど、僅かな情報でここまで考察されるなんて。

 

 実際は貴族の前に前世での生活があったんだけどね。

 そこまで見抜くのは無理だし、エリザは凄いという事でオチをつけよう。


「ま、アタシも貴族の生まれなんだけど」


「えっ?」


 とか思っていたら、エリザからとんでもない秘密を暴露される。


「言っていいの?」


「隠してるわけじゃないし平気よ。その道の人間には見抜かれるだろうし」


 伯爵家を相手にできたのはそれかぁ。

 確かに貴族家出身なら伯爵くらい見慣れてるか。


「なんで冒険者になったの?」


「単純よ。自由になりたかっただけ」


 エリザの口から今までの経緯が語られる。


「それなりに力のある侯爵家だったんだけどねー。毎日礼儀作法とか座学ばかりでつまんなかったの」


「で、逃げたと?」 


「そういうこと。このまま家にいてもお飾り令嬢かどこかの側室になってたし、優秀な姉もいるから大丈夫だと思ったのよ」


「だとしても大胆だねぇ」


 普通なら貴族の暮らしに満足するはず。

 この世界は格差が激しいから尚更そう思う。


 なのに、エリザは地位も名誉も何もかも捨てて自由を選んだ。

 ここまで大胆な行動を起こせる人は中々いないよ。


「大変だったんじゃない? たった一人で冒険者になるなんてさ」


「当たり前よ。生きるのがこんなに難しいんだって実感したわ」


 自由というのはいいことのように聞こえるけど、実際は膨大な選択肢の中から自分で選ぶという責任がある。 


 それが正しいのが間違っているのか。

 誰にもわからないし誰も教えてくれない。


「大変だったけど、それ以上に自由は素晴らしいなって思ったの。だから後悔はしてない」


 でも膨大だからこそ楽しいと思う。

 ある程度縛られた方がいいって人も多いと思うけど、僕たちはそうじゃない。

 

 それだけのことだ。


「じゃあ僕と同じだね。僕も自由とスリルを求めて旅をしてるからさ」


「アタシはリオみたいにスリルを求めてないけど?」


「えー? 一度知ったらクセになるよ?」


「自ら死ぬような真似は嫌よ。できるだけ長生きしたいもん」


 それに関しては同意。

 確かにスリルは求めているけど、死にたいとは思っていない。

 

 死ぬ一歩手前のギリギリを生きたいんだ。

 巨大なドラゴンとか過酷なダンジョンとかそういう場所。


 だからこそ、スリル満点な生き方をする為に今以上の実力をつける必要があるんだけどね。


「マスター」


「あ、おかえりオルル」


 二人で雑談に花を咲かせていると、ちょうどオルルが戻ってきた。


「どうだった?」


「向こう側に蛇みたいなモンスターがいたよ。多分ポイズンスネークだと思う」


「マジか!! ナイスだオルル!!」


「えへへ」 


 偵察という任務をやり遂げてくれたオルルになでなでと干し肉のご褒美を与える。

 この先ってことは結構近かったんだね。


「毒消しのポーションは持ってるわよね?」


「勿論!! 予備も含めて買ってあるよ」


「よろしい。じゃ、早速討伐に行きましょ」


 でも、やっと本格的にモンスターと戦えるな~!!

 ここのモンスターは手ごたえがなかったから楽しみだ。 


◇◇◇


面白かったら、フォロー・♡応援・★レビュー して頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る