第13話 まさかの提案?

「あ、ここの高級スイーツ、一度食べてみたかったのよねー」


「遠慮しないなぁ。全然いいけど」


「お話するならいい場所でしなきゃ、んふふっ♪」


 完全に利用されてるような気が……

 まぁ悪い思いはしてないし問題はない。


「ふぅ……で? アタシとお話したいって言ってたけど、何について話したいの?」


「えっ? あー、いい天気ですね?」


「それ本気……?」


「冗談だって。えーと」


 テーブル席に着いた後、僕は本題を切り出す。


「さっきの店もだけど、この国ってなんで治安悪いの? いくらなんでも酷すぎじゃない?」


「そうかしら? どこでも似たようなものだし、ここは比較的マシな方よ」


「マシ!? あれで!?」


 平然とテロや暴行、やりたい放題する貴族がいるのにマシなんだ。

 この世界の価値観はどうなってるの?

 

 ゲームでも揉め事は起きてたけど、ここまで酷くなかったっていうか……

 僕が知っているレバティ・フロンティアと少し違うのかな?


「魔王軍が倒されたって話は知ってる?」


「うん。それが原因で優秀な冒険者や兵士が減ってるって」


「そ、魔王を倒したはいいけど、後のことを何も考えてなかったのよ」


 運ばれてきたケーキに手を伸ばしながら、エリザは語り出す。


「人も貨幣も資源も……何もかも多すぎたの。戦争中はそれで良かったのだけど、終わった途端に保たれていたバランスが一気に崩壊しちゃって」


「それがこの世界の格差を生み出した原因?」


「あくまで一つの要因ね。けど、崩壊したバランスは多くの犠牲を生み出したし、治安だって悪くなった」


 保たれていたバランスが魔王軍を倒したことによって崩れた。

 それはこの世界の人々の暮らしを大きく変えてしまい、テロや暴行が当たり前になってしまった。 


 魔王という最大の敵を倒したというのに。


「それで国に対する信用が無くなったのよ。だから兵士は堕落してるし冒険者だって金にうるさい野蛮なヤツらが多い」


「でもそれは普通の事じゃない? 人間なんだし」


「少なくとも兵士くらいはしっかりして欲しいでしょ? アンタもここに来るまで変な兵士に会わなかった?」


「あー……」


 ホムーンの門番がそうだったね。

 ああいう兵士が多いから、事件に対しても対処しきれないって事か……なるほど。


「それに冒険者だって弱いのよ。現に南側の森はほとんど攻略が進んでないから……」


「え? 僕、そこから来たんだけど」


「はい?」


 楽しみに取っていたであろうイチゴにフォークが突き刺さったのと同時にエリザの動きが止まった。


「あの森のモンスター、異常に強いなーって思ってたけど、やっぱここ基準でも難しかったんだ。早めに抜けてよかったぁ」


「ま、待って。それじゃ、アンタはあの森のモンスターを倒したってこと?」 


「そんなにおかしいの?」


「おかしいわよ!!」


 エリザが妙に興奮している。

 僕があの森で戦ったと知ると急に席を立って前へ乗り出した。


「黒煙の森は指定ランクAの高難易度。弱いモンスターだって多いけど、バケモノみたいなモンスターだって生息する危険な場所よ!!」


「バケモノ? ってあぁ、マッスルベアとかビッグミミックとか?」


「そうそうそんなヤツ……ってまさか?」


「倒したよ」


「……」


 そんなに変な事を言ったかな?

 確かに強いの事実だし危険な場所だってわかるけど、エリザくらいの実力なら全然戦えると思うけどなぁ。

 当のエリザは僕に対して気難しい顔で唸っているけど。


「報酬はどれくらい貰ったの?」


「金貨三枚と白金貨」


「はっ……え、白金!?」


 嘘だと思われたくないので僕は懐から白金貨を取り出す。


「すっご……アタシも始めて見た」


「これで信じてくれる?」


「従魔が話したり色んなスキルが使えるから変だと思ったけど……想像以上ね」


 従魔が話せるのは僕も驚いたよ。

 希少種に出会えると思ってなかったし、持ってるスキルだってぶっ壊れだったから。


「……」


 と、エリザは再び考え込む。

 指をトントンとテーブルに向けて動かし、何かを呟きながら数分が経つと再び口を開く。 


「ねぇ、リオ」


「ん?」


「アタシとパーティ組まない?」


「えぇ!?」


 まさかすぎる提案。

 お話だけじゃなくてパーティまで!?

 今日の僕、確変入ってない!?


「オルル、もしかして僕ってナンパの才能が……」


「ないと思う」


「アタシも同意見」


「そうですか……」


 二人共ただの偶然だと言いたいらしい。

 そんな直接的に言わなくてもいいじゃん。


「勿論タダとは言わないわ。ちゃんと報酬も分けるから……」


「い、いいの!? 僕にしかメリットないよ!?」


「え? なんでアンタにしかメリットないの? 普通逆でしょ?」


「だって可愛い子と仕事できるなんてメリットしかないじゃん」


「呆れた……単純すぎよ」


 僕は単純な生き物なんですよ。

 自由とスリルと可愛い子がいれば大体満足する。

 つまり、今の僕は大満足ということだ。


「いーい? アンタは自分が思ってる以上に強い。それはわかってる?」


「自信はあるし強いとは思うけど?」


「ならよし。じゃ、食べ終わったらギルドに向かいましょう」


 まさかエリザとパーティを組むなんて。

 ただのスキル試しが思わぬ幸運を呼んでくれた。

 どんどん冒険が楽しくなるなぁ。


「あ、追加でもう一つ頼みましょっ♪」


「食いしん坊だねぇ」


「甘いものには目が無いの。すみませーん」


 結局エリザは一つどころか二つ頼んでいた。

 それもほぼ全部エリザが食べた。


 胃が大きいのかな?

 それとも冒険者だから摂取カロリーが多いとか。


 女の子は謎が多いや……


◇◇◇


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