第12話 新しい出会い

「バカめ!! 貴族様に逆らうとどうなるか、その体に教えこんでやる!!」


 続々と現れる兵士達。

 たった一人だけの子守りのために、これだけの兵士を使うなんて。

 伯爵様は金遣いが荒いねぇ。


「”ボルトショット”」


「ガッ!?」


「た、弾が見えねぇ!?」


「当然でしょ、雷だもの」


 目にも止まらぬ速さで雷の弾を撃ち込み続ける女の子。

 ”ボルトショット”は弾の速度こそ凄まじいが威力はそこまででもない。

 急所を的確に狙っているんだと思う。


「な、何故だ!! 何故こんな女一人を相手にするのに!?」


「強いて言うなら格の差ってやつかしら? 温室育ちの貴方では到底理解できないでしょうけどね」


「このぉ!! このこのこのぉ!!」


 分かりやすく足をドンドンして悔しがる伯爵。

 ここまで戦いの流れは完全にあの女の子が握っている。

 スキルが使えないのは残念だけど、ここは任せた方が良さそ……


「マスター、後ろに怪しいヤツがいる」


「後ろ?」


 オルルの言うとおり後ろへ振り返る。

 ここには見世物のように戦いを楽しむ観客しかいない。

 

 しかし、何人か怪しい動きをするやつがいる。

 懐に手を入れてじっと女の子の方を見ている。


 まさかあの伯爵の兵士?

 隙を見ているのかな?

 

「ちょうどいいかも」


 せっかくだし利用させてもらおう。

 手に入れたばかりのスキルも試せるし。


 僕は人混みから離れ、怪しい奴らの動きを観察し続けた。

 そして……


「っ!!」


 指が光った!!

 スキルだ!!


 あれで女の子を仕留める気だな?

 女の子は目の前にいる伯爵に集中して見えていないみたいだし。


 ここは僕が片づけよう。


「”ステルス”」

 

 スキルを使用した途端、体が透明になっていく。

 オルルからコピーしたスキルだけど、僕が使うと使用時間がたったの三秒しかない。


 あくまで低級スキルだからね。

 でも、ヤツらへ近づくには十分だ。


「やっほ♪」


「っ!? だ、誰だおま……」


「”サンダー”」


 振り返った瞬間、首元に雷スキルを当てて気絶させる。

 お、いい感じじゃん。

 流石にあの女の子ほど火力は出ないと思うけど、気絶させるくらいなら大丈夫そうだ。


 それじゃ残りの兵士も片づけますか。


「そーれっ」

 

 今度は銃弾のように”サンダー”を放つ。

 遠くだからさっきよりも火力は強めに。


 さてさて、上手くいくかなぁ……って凄くバチバチしてない?

 頭の中のイメージより少し強そうに見えるんだけど……


「「ぎゃああああああ!?」」


「あっ」


 ヤバッ、火力強すぎた。

 二人の兵士が全身に電撃を流しながら絶叫する。

 ちょっと気絶させるだけのハズなのに失敗しちゃったな。 


「黒焦げだねー」


「”ファイア”よりも調整が難しい……イメージが悪かったのかな?」


 ゲームだと電撃系スキルは他スキルとは少し違う扱いをされていた。

 だからイメージに関しても専用のやり方があるのかな?


「えっ? 何々?」


「誰だこいつら?」


「ま、まさか隠れていた兵士まで倒したのか!? なんて女だ……僕ちんに勝てるワケがなかったんだぁ……」


「え? あれはアタシじゃ……」


 なんか大事になってきたな。

 騒ぎに巻き込まれないようさっさと逃げようか。


 僕はオルルと共に”ステルス”を発動しその場を去った。


「……今のって」


 その瞬間をとある人物に見られたとは気づかずに。


◇◇◇

 

「ふぅ、ここまで来たら大丈夫かな?」


「マスターお疲れ様」


「うん、オルルもありがとうね」


 誰もいなさそうな路地裏に入り、オルルにご褒美の干し肉を渡す。


(あの女の子といつか話してみたいな~)


 何でもズバズバ言う上に実力も高い。

 そして雷系統というレアなスキル持ちで容姿が物凄く可愛い。

 

 繰り返す、容姿が物凄く可愛い。


 何で二回も言ったかというと僕はあの子が気になったのだ。


(美少女と旅をするっていうのも楽しそうだよねぇ)


 せっかく異世界に来たんだし、冒険に花をもたらせる子がいるとより楽しくなる気がする。

 問題はあの子をどうやって説得するんだよっていう話だけど。

 そもそも彼女とは一切の繋がりがないし。

 

 ナンパでもする?

 いやー、我の強そうなあの子がナンパに乗る未来が全く……


「アンタでしょ、隠れてた兵士をやっつけたのは」


「へ?」


 声の方向へ振り替えると、そこには例の赤髪サイドテールの女の子がいた。

 うわ、接点できた!!

 これって奇跡じゃない!? ヤバ!!


「あの、黙ってないで話して欲しいんだけど?」


「あっ」


 っといけない取り乱しちゃった。

 ここは冷静に話をしなくちゃ。


「あぁ、うん。ちょうどスキルが試したくてさ」


「スキルを? はぁ、くだらない理由でアタシに貸しを作らないでよ」


「貸し?」


「アタシは他人に借りを作るのが嫌なの。自分が得をする事しか行動したくないし」


 話が見えてこない。

 てっきり、「悪いやつは許せない!!」っていう正義感かと思ったけど。


「じゃあ店を守ったのは?」


「あそこは店の雰囲気が好きだったの。で、アタシがあのクソ貴族から店を守ってあげれば、店側はお礼として何かしらのサービスをしてくれるでしょ♪」

 

「ほうほう」


 今のウインクめっちゃ可愛い。

 じゃなくて……あの行動は自分が得すると思っただけ?

 損得勘定で動く子なのか……ふむ。


「いいね」


「はい?」


 こういうリアリストな子は結構好きだ。

 正義感も悪くないけど、この子はこの子で話してて楽しそう。


「あぁそうだ、僕はリオ。こっちの従魔がオルルね」


「よろしくー」


「そういえば名乗ってなかったわね……アタシはエリザよ」


 お互いに名乗り合う。

 しかし本当に可愛い子だなぁ。

 

 街を歩くだけで何人か寄ってきそうだけど大丈夫かな?

 ……あ、でも冷たくあしらわれる場面が想像できる。


「あら、もしかしてアタシに惚れちゃった? 男ってたーんじゅんっ♡」


「うぐっ!? あ、あざといのは好きだけど惚れるまでじゃないよ。気になってはいるけど」


「ふーん?」


 ドストレートで僕の好みに刺さる仕草をするね……

 下手すると利用されてコロコロ転がされそうだ。


 でも幸せだからアリかも。 


「それで? アタシはアンタに何を返せばいいの? 正直借りっぱなしはヤなんだけど」


「ん? そうだなぁ……」


 別に何かしてもらいたいわけじゃないのに。

 こうしてお話して繋がりが持てただけで僕として十分すぎるご褒美だ。

 でもこれじゃあエリザは満足しないみたいだし、


「じゃあ、お茶でもしながらもう少し話さない?」


「え?」


 お話続行!!

 ついでにこの世界の事やホムーンについて色々教えてもらおう!!


◇◇◇


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