第11話 雷使いの女の子

「ご、ごゆっくりどうぞー……」


「ありがとね〜♪」


 店長は怯えながら料理を運び終わると、急いでその場を去った。

 事の経緯はこれだ。


 報酬が入ったのでご飯にしようと飲食店に入ったのだが、出迎えてくれた店長の態度があまりにも悪すぎた。


 座るだけでお金を取るとか、

 子供に分かる味ではないとか、

 あげく、オルルの事を置物の鳥だと声を上げて爆笑していた。


 流石にそこまでされたら僕もムカつき、上空へ向かって思いっきり”ファイア”をぶっぱなした。

 

『まだ何かある?』


『お、お代はいりません……だから殺さないでお願いします』


 するとどうだろう。

 店長は思いっきり態度を変えて、僕を丁重におもてなしし始めた。

 この世界って強さを見せつけないと舐められるんだなーと教訓にしつつ、僕は運ばれてきたシチューを食べ始める。


 お、意外と美味しい。

 接客態度は最悪だけど結構いい料理作るじゃん。


「もぐもぐ……結構美味しいねー」


「オルルが気に入ったなら何よりだよ」


 オルルも皿に並べられた焼肉をクチバシでもぐもぐ食べていく。

 食いしん坊だなぁ……人間の普通盛りサイズなのにクチバシの動きは止まる様子を見せない。


「そういえばオルルって何で僕に懐いてるの?」


「んー?」


 前から少し疑問に思っていたこと。


 ”テイム”で仲間にしたモンスターは最初から好感度が高いわけじゃない。

 主に攻撃するなら可愛いもので、酷い場合は戦闘中に命令を全く聞かない事だってある。


 特に希少種は性格のクセが強く、上級者ですら完璧な好感度上げのフローが構築できなかった程だ。

 なのにオルルは最初から懐いてくれて、むしろ僕に対して滅茶苦茶甘えている。


 希少種とはいえ元が低ランクモンスターだから……?

 という線も考えたけど、ゲームでスライムを”テイム”した時はちょっと好感度上げをしていたね。


「ぷはっ……んとね」


 オルルは食べていたお肉を飲み込んだ後、答えてくれた。


「簡単だよ。人について行った方が色んな美味しいものが食べられると思ったから」


 想像通りの答え。

 出会ってからも食に対する執着は強かったし、外の世界で色んなものを食べたかったのだろう。 


「後……マスターは他の人とは違う面白さがあるから」


「面白い?」


 で、意外だったのはここ。

 強いならわかるけど面白いって何?


「僕が面白人間にでも見えるの?」


「見える。現にこの世界を楽しんでいるのが一番面白い」 


「ふーん……」


 この世界は楽しいに決まってるのに。


 やり込んだゲームの世界で、何より”スキルコピー”っていうぶっ壊れスキルまで手に入れてた。

 オマケにリアルなモンスターとの戦いで新しい楽しみ方を覚えてしまったし。


 現にやりたい事や行きたい所が山ほどある。

 そんな僕の姿はこの世界の人達にとっては異質に見えたのかな?


「ねぇ、この世界の人達って……」 


 普段の日常に対してどう思ってるの?

 そう言おうとした時、向かい側の店から騒がしい声が聞こえた。


「何かあったのかな? あ、店長これお代ね」


「えぇ!? お、お代は結構と……」


「ご飯美味しかったから!! あ、でも次は丁重にもてなしてね?」


「は、はい!! 全力でお迎えいたします!!」


 お代分キッチリとテーブルの上に置いた後、僕達は騒ぎの起きた店へと移動する。

 本当は払うつもり無かったけど、美味しかったからね。

 

「この店は汚くてマズイものしかない!! オマケに女の質も悪いなぁ!?」


「きゃっ!!」


 騒ぎを起こしているのは……貴族か? 


 へそが出るほど太った身体に見合わない高貴な衣装。

 そいつが店の娘を蹴り飛ばして好き放題しているらしい。

 

(さーて、どうしよっかなぁ)


 相手が貴族なのは少し厄介だ。

 下手したら相手の家が出てきて死ぬまで追いかけて来そう。


「ぐへへ……貧乏人をいじめるのは最高だねぇ!!」


 正直僕とは関係ないし無視して帰ってもいいけど……あっそうだ。

 ”あのスキル”を使えばバレずに倒せそう。

 まだまともに使ったこと無かったし、テストに丁度いいかも。


 よーし、とりあえず近づいて……


「うっさいわね。邪魔だからどっか行きなさいよ」


「あ?」


 奥の方で黙々とご飯を食べながら、横暴な貴族に対して思いっきり睨みつける金髪サイドテールの女の子。


 冒険者かな?

 貴族に対してタメ口で物申せるなんて、随分と肝が座った子だなぁ。 


「オルル、”ステルス”であいつらの近くを偵察して」


「ん」


 周りに潜んでいる護衛を探るべくオルルに偵察を任せた。

 さて、彼女はどう出るかな?


「き、貴様……僕ちんを何だと思っている? バークレイ伯爵家の長男だぞ!?」


「伯爵? アンタみたいに品のない人間が長男だなんて、バークレイ家は随分と落ちぶれてるのね」


「品のない……だと!?」


 おー、ズバズバ言うねえ。

 皆が思っていた事だと思うけど。


 ああいう正直な子は結構好きかも。

 オマケにクッソ可愛いし。


「お前らこの女を処刑しろ!! バークレイ家に逆らうという事がどれほど愚かであるか教えてやれ!!」


「「「はっ!!」」」 


 伯爵の周りにいた護衛達が女の子に向かって武器を突きつける。

 長男が長男なら周りにいる取り巻きも同レベルか。

 相当重症だね。


「大人しくしてろよ……」


「今、楽にしてやるからなぁ?」


 けど女の子からすれば囲まれて逃げ場は無い。

 一対複数人の状況をどう突破するかな?


「”サンダー”」


「「ガッ!?」」


 突如、女の子の周りに電撃が流れ、近づいた取り巻き達が感電した。

 ビリビリ!!という痛そうな音と共に、取り巻き達は一瞬の内に気絶させられてしまう。


『スキル:サンダーを習得しました』


 雷系統か、珍しいね。

 あれは属性攻撃の中でも優秀で高火力なスキルも多かったハズ。

 ただ倒すだけじゃなく気絶も狙いやすいから生け捕り系のクエストでは重宝したっけ。


「まだやる気? アタシは徹底的にやるけど」


「ぐぎぎぎ!!」


 これは……面白い事になってきたなぁ。


◇◇◇


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