第6話 隠し部屋の報酬は?
「ここが隠し部屋?」
「狭いね」
「隠されてるからね。広かったら怖いよ」
狭い上にホコリっぽい。
天井には蜘蛛の巣が張ってあるし、長い間誰も訪れていなかったのかな?
この森って一応冒険者とか来ていたよな。
そんな長い間発見されないとかあるのか?
「”ファイア”」
炎スキルで中を照らしながら進んでいく。
うぇっ、少し入っただけでゴホゴホするなぁ。
深いダンジョン用に質のいいマスクでも買おうか?
「モンスターはいない?」
「みたいだね。私も何も感じない」
隠し部屋とはいえ、普通は何か住み着いていてもおかしくないのに。
何かとんでもない物でも眠っているのか?
ゲームだと完全ランダムに生成されるせいで、僕もよくわからない。
「お、あれかな?」
先に進むと少し開けた部屋がでてきた。
奥には以下にも取ってくださいと言わんばかりの宝箱が二つ置いてある。
ははーん、あれが隠し部屋の報酬って事か。
だったら最初にやることがある。
「”ウィンドショット”」
あの宝箱が罠かどうか判断することだ。
風系スキルで宝箱周辺を軽く攻撃し、罠や隠れてるモンスターを徹底的に探した。
が、何も反応しない。
どうやら本当に宝しか無いらしい。
”アイツ”がいると思ったんだけど、警戒しすぎか?
「空けてみよっか」
「大丈夫?」
「警戒はしてるって。それに中に入ってるのが気になるんだよっと!!」
勢いよく二つ同時に宝箱を開ける。
そこに入っていたのは……
「おぉ!! 宝石だ!!」
一つ目には自分はお宝です!!と言ってるようなもの、宝石が入っていた。
これ、本物だよな……?
光り方はパチモンのプラスチックって感じてもないし、この辺は後で鑑定してもらえばいいか。
仮に本物だとしたら臨時報酬としては破格すぎる。
下手したらしばらく遊んで暮らせるかもしれない。
色んな所に行きたいから遊ぶだけの生活にはしないけどさ。
で、もう一つの方はどうだ?
「棒……?」
二つ目の宝箱の中には不思議な棒が入っていた。
剣のようだが先端は確かに鉄の棒そのもの。
なんか変な武器だなー。
棍棒にしては綺麗に作られてる気がするし。
「ん?」
待てよ。
これ見た事あるかも。
というか使ってことがあるような。
デザインとかあんま気にした事なかったから記憶が曖昧なんだけど……あっ!!
「これマルチエッジか!!」
僕は思い出した。
この不思議な棒が神器であることを。
そして前世で愛用していた最強クラスの武器だっていうことを。
「マルチエッジ? 何それ?」
「汎用性がクッッッソ高い神器だね。まさかここで出会えるとは思わなかったけど……」
「ふーん?」
イマイチピンと来てないって感じかな。
こいつの凄さは実際に見てみないと分からない。
オルルへのアピール兼この世界でのマルチエッジに慣れるために早速使お……
ドォオオオオオオオオオン!!
「「っ!?」」
突然、天井から爆発音が聞こえた。
まさか崩れるのか!?
一瞬でピンチを察した僕とオルルはその場を離れ、細い道へと戻ろうとした時。
宝箱があった付近が瓦礫に埋もれた。
「あっぶなー……」
「あれが罠だったんだね」
宝箱の物を取らないと罠が作動しないのね。
中々エグいトラップを仕掛けるじゃねぇか運営……って運営はこの世界にいるのか?
トラップに備えて罠感知系のスキルを持ったヤツを探したいなーと考えていた時。
「瓦礫が動いてる?」
ゴゴゴゴゴゴ……
崩れた瓦礫が揺れ動いていた。
地面の揺れって感じじゃない。
これは超能力とかポルターガイスト的な不自然な動き方だ。
という事は?
「ミミミミミミィ!!」
「やっぱいるじゃんモンスター!!」
さっきの宝箱が合体?してデカい宝箱型のモンスターに変身していた。
ビッグミミックだっけ?
ダンジョンの宝箱とか隠し部屋にはだいたいスポーンしてるイメージだ。
「ミミィッ!!」
「おっと!!」
ビッグミミックは僕達を見た瞬間、口から黒い弾を発射してきた。
弾は僕達の足元に当たり、周囲に強い衝撃と轟音を響かせる。
『スキル:ダークショットを習得しました』
新しいスキルも貰ったところだし僕も動くとしよう。
「まずは剣でいこうか」
マルチエッジを握りしめ、頭の中で剣をイメージする。
するとただの棒だったマルチエッジが剣に変化した。
「え? 剣だったのそれ?」
「正確に言えば剣でもある……かな? オルルは下がって見守ってて」
剣に変化したマルチエッジにスキルを込める。
すると剣先が黒く染まり暗黒の剣へと変化した。
マルチエッジ特有の反応を確認した僕は剣の柄をグッと握る。
実物で見ると興奮するな。
頬をニヤつかせながら僕はビッグミミックの正面へと飛び出す。
「”ダークスラッシュ”」
闇の剣をビッグミミックへと振り下ろすと、硬そうな宝箱の身体に深くて大きい斬撃の後が残った。
「ミミィイイイイイ!?」
突然の大ダメージにひっくり返ってジタバタするビッグミミック。
マルチエッジは下級限定でスキルを溜め込める。
それだけじゃない。
溜め込んだスキルを二倍にするという下級だから許されたとんでも効果まで持っているのだ。
実際はスキルコピーが原因でぶっ壊れてしまったが。
「ミミィイイイイイ!!」
ビッグミミックが周囲の瓦礫を浮かして僕目掛けて岩のガトリングをお見舞いする。
雪崩のように降り注ぐ岩を僕はかわしたりスキルで消し飛ばしたりしてやり過ごす。
そして、
『スキル:グラビティを習得しました』
「これで一気に割るか」
再び棒に戻ったマルチエッジが半分くらいのサイズまで棒が短くなった。
そして再び棒が何かに変化すると……
「ハンマー?」
「正解!!」
マルチエッジが小型のハンマーになった。
状況に応じて多彩な武器に変化する。
それがマルチエッジの強みであり高すぎる汎用性を証明していた。
「いーくぞっ!!」
再び飛び上がる。
先程習得したスキルを込めてハンマーの周りにスキルのオーラを漂わせていく。
「”グラビティハンマー”!!」
「ミ゛ッ……」
小型のハンマーが傷ついたビッグミミックの身体へと振り下ろされる。
重力の力によってハンマーの破壊力が増し、硬そうな身体が粉々に砕け散った。
「ふぅ」
ライブの紙吹雪のようにキラキラと落ちていくビッグミミックだった物の破片。
その中心で僕は地面に落ちた魔石を手に取る。
「やっぱ最高だな、異世界は」
もっとこの世界にいたい。
もっとこの世界で自由とスリルを楽しみたい。
その思いがより強くなった瞬間だった。
◇◇◇
「昨日のマスター、凄かった」
「ふふーん。スキルコピーとマルチエッジが揃えば怖いものなんてないんだよー」
「だよー」
オウムじゃないのに僕の真似をするオルルはなんか可愛らしい。
無意識に頭をナデナデしてしまう。
さて、あれから一夜明けたがどうしようか。
いつまでも森の中って言うわけにはいかないし、流石に別の所へ行ってみたい。
「マスター、近くにおっきい街があるよ」
「マジ!? どこどこどこ!?」
「ここから真っ直ぐ抜けた先。結構広くて人もいっぱいいた」
まさかこの先に街があるとは。
どこから出れば辿り着けるのか曖昧だったから、ここで知れたのは大きい。
前にも冒険者が来ていたし稼ぎ場所としてちょうどいいのだろう。
「じゃあ街に行ってみよっか!! 美味しいものもいっぱい食べられるよ!!」
「美味しいものいっぱい? 楽しみー」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるオルル。
乗り気みたいだし街で色んな物を見てみるか。
ついでにこの世界の住人がどういう生活を送っているのか気になるし。
テントを片付け終わった僕達は街へと歩み始めた。
◇◇◇
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m(_ _)m
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