第4話 新しい従魔
「てか名前決めてないじゃん。どうしよっかなぁ」
「マスターが決める名前なら何でもいいよ」
そう言われましてもね……
名前って決めるの大変なんですよ?
キャラメイクとかニックネームとか結構悩むタイプだし。
でもさっさと決めないと今後の探索に影響が出るのは事実。
何がいいかなぁ。
えーとフクロウだから、フクロウだから……
「オルルとかどう? オウルから取ったんだけど」
「いいね、気に入った♪」
「わっ」
パタパタと嬉しそうに羽を羽ばたかせながら僕の肩に乗っかってくるオルル。
そんなにいい名前かな?
まあ気に入ってくれるのならいいけどさ。
「そうだ、マスターに私のスキルを見せないとね」
「あぁ、頼む」
さて、オルル改めダークオウルのスキル確認だ。
希少種とはいえ下級モンスターだし、そんな凄いスキルがあるとは思わない。
というか期待していない。
えーと、これって主人が見れたりしないかな?
僕の時と同じようにウィンドウみたいなものが……
ブォン
【ステルス】
周りの景色に溶け込んで透明になれる。
「は?」
なんかやっばいスキル持ってない?
「マスター、消えてる?」
「へ? うぉっ!? どこ行ったのオルル!?」
肩に乗っていたハズのオルルがどこにもいない。
飛んだ素振りも気配も感じなかったのに。
待って。
肩の感触が残っているような?
「ばあっ」
「っ!? ずっと肩の上にいたんだ……」
「そうだよ。マスターとずっと一緒♪」
「好きでいてくれてありがとう……よしよし」
オルルの頭を撫でながらスキルの効果を整理する。
ダークオウルは本来風系のスキルしか使えないハズ。
なのにオルルは”ステルス”という強力なスキルを持っていた。
何でだ?
希少種のオルルのスキルがレベルMAXになった影響かな?
「ねぇ、ステルスって制限時間とかあるの?」
「疲れない限りは無限だよ」
「そっ、そうですか……」
うわぁ、ぶっ壊れじゃん。
無限に透明化してくるモンスターとか恐怖以外の何者でもないよ。
味方だから頼もしく思えるけど、敵に回った事を想像するとヤベェ。
『スキル”ステルス”を習得しました』
オルルのスキルを見たからステルスが使えるようになった。
こんな序盤からステルスが使えていいのかな?
ありがたく使わせてもらうけどさ。
「後は風系のスキル。マスターはもう使えるみたいだけど」
「そこは普通のダークオウルと同じか」
「うん」
しかし、希少種ってのは恐ろしいね。
下級モンスターでさえぶっ壊れスキルを持っているんだから。
これが上級とかになるとどうなるんだろう。
先の事を考えても仕方ないけど想像してしまう。
あれ、そういえば希少種って……
「あああああああああっ!?」
「わっ、どうしたのマスター?」
「あっ、ごめんねオルル。ちょっと気づいたことがあって……」
希少種でとんでもない事を思い出してしまった。
確か希少種って出現率が低い上に出現条件も限られているんだ。
で、その出現条件っていうのが
「ハードモードでゲームをプレイする事……」
妙に敵が強い原因がわかってしまった。
これはただのレバティ・フロンティアじゃない。
ハードモードという熟練者向けの難易度の世界なんだ。
マジかぁ。
えっ、マジかぁ……
思わず二回言っちゃったよ。
「マスター大丈夫?」
「あぁ、大丈夫……問題が解決して新しい問題が生まれた所だよ」
「???」
ゲームの世界って言ってもオルルには通じないから一旦置いておいて。
とにかくハードモードはヤバい。
序盤の森ですら中級レベルのモンスターがウヨウヨいるのに、動きやスキルだって殺意が高い。
一応、ゲームではハードモードでバリバリやり込んでたよ?
でも楽しく自由な日常を求めてるのにハードモードかぁ。
正直ノーマルモードで楽々イージープレイがしたかっただけに少し残念だ。
「ま、なんとかなるか」
こっちに来るまではハードモードをメインにやり込んでいたし大丈夫でしょ。
幸いにも僕が手に入れたのは”スキルコピー”という最強クラスのスキルだ。
それに中級レベルのモンスターがいるって事はそれだけ強力なスキルをコピーする事ができる。
僕の知識と合わせれば……意外となんとかなるのでは?
「オルル、とりあえず周辺の偵察をお願いしてもいい?」
「わかった」
透明になってバサバサと羽ばたくオルル。
こういう時に空が飛べるというのは便利だねー。
しかも透明だから敵に気づかれにくい。
「まずはテントを張った跡地に戻ろう。夜になったらテントも建てられないし」
まだ日は落ちていないがのんびりしていられない。
せっかくテントに使えそうな大きな布を手に入れたんだ。
早く帰ってテントの作りを良くしないと。
◇◇◇
「グォオオオオ!!」
「”ファイア”」
「グォッ!?」
飛び出してきたワーウルフを一瞬で黒焦げにする。
気配でバレバレなんだよなぁ。
ハードモードとはいえ、所詮は下級モンスターか。
死体が無くならない程度に燃やせるようになったし、この調子でスキルのコントロールを極めていこう。
お、僕がテントを張ろうとした跡地が見えた。
「マスター、ただいま」
「おかえりオルル」
ちょうどオルルも帰って来たらしい。
ん? なんか袋みたいなもの持ってない?
どこで手に入れたんだ。
「ヤバそうなヤツとかいた?」
「んー、美味しそうなモンスターは何体かいたけど」
「モンスター?」
と、オルルが袋を地面に降ろすと、その中からモンスターの死体が何体も出てきた。
ワーウルフとか同種であるハズのダークオウルとか。
えっ、これ全部オルルが一人でやったの?
この短時間で?
希少種ってすごい……
でも、おかげで食料が手に入った。
「ナイスオルル。今晩はごちそうだね」
「んっ♪」
主人の身体に頬をスリスリさせるオルル。
一種の求愛行動かな?
好かれるのは嬉しいけど、テイムの力って凄いねぇ。
「というかオルルって何を食べるの?」
「肉、魚、後は野菜も食べるよ」
「めっちゃバランスいいね……」
鳥って肉食べるんだ。
そういえば肉食の鳥もいるって生き物図鑑で見た事があるような。
まあいい。
テントを作ったら飯にしよう。
”ファイア”のおかげで焼き肉にはできるし。
あっ、でも調味料がないや。
せめて塩とか欲しかったな……
「こんなものかな?」
骨組みの上から大きな布を被せ、しっかりしてそうな小枝で地面に固定する。
素人建築にしては意外と形になったんじゃないか?
「ご飯ー」
「もう少し待ってて。今すぐ準備するから」
ナイフで肉を切っていく。
前世でちょっとだけ料理していてよかった。
血とか油が多い部分は避けて、美味しそうな部分を食べやすく切っていく。
オルルは口が小さいからもう少し細かく切った方がいいかな?
後は葉と木を集めて適当に火をつければ……
「おー、いけたいけた」
パチパチと激しく燃え盛る炎。
その炎の上に平べったい石を置いて鉄板代わりにする。
勿論、ちゃんと洗ってはいる。
ある程度熱くなったのを確認した僕は一枚ずつ肉を置いて焼いていった。
「おぉ……」
「いいねー」
ジュウウウウウ……と肉が焼けていく音。
全部イチから集めたもので作り上げたからか、前世以上に感動する。
ただ余韻に浸っている暇はない。
一枚一枚丁寧に焼いていき、簡易的な焼肉が遂に完成した。
「ほい、これがオルルの分ね」
「わーい」
皿はない。
鉄板から直に取るワイルドスタイル。
それでも十分だった。
パンッと手を合わせた後、僕は待ちわびていた肉を口の中へ入れた。
「うまっ」
調味料の一切ない素材の味。
だけど意外と美味しかった。
多分、肉の質がよかったんだろうな。
前世でお世話になった焼肉のタレを頭に浮かべながら、肉を次々と頬張っていく。
「ん、美味しい」
「オルルも気に入った? ならよかった」
頭を激しく動かしながら肉へ喰らいつく姿はまさに野生動物って感じだった。
ちょっと衝撃的な光景……
何にせよ、腹を満たすには十分な量だ。
今の内にしっかり味わっておこう。
ガサガサッ
「「ん?」」
だが忘れてはいけない。
ここはモンスターが生息する森で、そんな場所でのんきに飯を食っていたらどうなるか。
「「「「グォアアアアアアアア!!」」」」
「……わぁお」
「いっぱい出てきたね」
草木の茂みからモンスターが何体も姿を現した。
見慣れたワーウルフにまだ出会っていないクマなようなモンスター。
気分は無双ゲーって感じかな……アウェーな状況だけどさ。
「食後の運動にはちょうどいいかな?」
「そんなに食べてないよ?」
「ははっ、それもそっか」
さぁて、スキル集めといこう。
◇◇◇
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m(_ _)m
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