第3話 新しいスキルと仲間

「なんでスライムしかいないんだよ!! ゴブリンとかワーウルフとか色んなのいたよね!?」


 探索し始めて約三十分。

 歩いても歩いても布は見つからないしモンスターもスライムしか出現しない。


 おっかしいなー?

 序盤の森とはいえモンスターが一種類なんて聞いた事ないぞ?


「ゲームでいうスポーンするポイントがおかしくなってるのかな? だったらここはスライムしかスポーンしない場所……?」


 その仮説が当たってたら最悪だ。

 スライムは魔石しか出さないし、得られるスキルも”アクアボール”一つのみ。

 いくら”スキルコピー”がぶっ壊れとはいえ、所有スキルが少なかったらゴミ同然だ。


 え? レベルMAXなら最強だろって?

 最低ランクのスキルですよ?


 MAXレベルとはいえ最低ランクにも限界はあるんだよ。

 その弱点を補うためにもスキルの数が必要で……ん?


 ガサガサッ!!


「ウォーン!!」


「狼の声!! って事はワーウルフか!!」


 草むらから突然姿を現した狼のモンスター。

 ワーウルフきたー!!

 ようやくスライム以外のモンスターに出会えた!!


 毛皮はフッサフサだし、鋭い牙もアイテムとしてドロップする。

 そして新しいモンスターだから新しいスキルも……!!


「よーし!! スキルだスキル!! スキル来い!!」


「ワォ……?」


 あの狼め、呆れやがって!!

 こっちは必死に祈ってるんだよ!!

 

 ”スキルコピー”の発動条件はこの目でスキルが発動するところを見ないといけない。

 だからワーウルフがスキルを発動する所をずっと待っている。


「ワォオオオ!!」


「うおっ!?」


 早速やってきたのはスキル……ではなくただの突進。

 スキル以外の攻撃もするか!!


 まあ生き物なんだし当たり前なんだけどさ。

 ちょっとびっくりしたよね。


「舐めてるからスキルを使わないの? だったら使わせてやる!!」


 右手に魔力を込めて水球を生成する。


「”アクアボール”!!」


 生成した水球をワーウルフの足元へと発射する。

 直撃させると死んでしまう為、敢えて外させてもらった。


 しかし、その威力は絶大で当たった地面を深く削り、それを見たワーウルフは本能で僕を警戒し始めた。


「グルルル……!!」


 ワーウルフの全身の毛が逆立ち、周りに強い風が巻き上がる。


「グゥア!!」


 そしてとてつもない強風が僕へと襲い掛かった。

 周りの木々をミシミシと揺れ動かし、土煙が舞っていく。

 転生して力を得た僕でさえ、強風を前に強く踏ん張らないといけない程だった。


「ほっ」


 だが僕は逆に利用した。

 踏ん張っていた足をあえて緩めて空中へ舞うように動いたのだ。


「グゥオオオオ!!」


 僕の身体が宙を舞う。

 その瞬間、ワーウルフは風の力を弱めて僕の方へと突撃してきた。

 

「”ファイア”」


「グゥオ!?」


 それが僕の狙い通りだとは気づかずに。

 ワーウルフの元へ炎の弾が迫ったと同時に身体ごと焼き尽くした。

 ドォオオオオン!!という爆発音が周囲に響き、煙の先にはワーウルフの魔石だけが残っていた。


『スキル”ウィンドショット”を習得しました』


「お、スキル獲得か。でも死体ごと焼き尽くすのは……食べる部分が無くなるなぁ」


 スキルは獲得できたが食料はない。

 そして欲しかった毛皮も……残念だ。


 ファイアの火力が高すぎるからか?

 うーん、ゲームと違って火力の調整はできると思うけど、この辺は検証かな。

 

 とりあえず習得したスキルを使ってみよう。


「”ウィンドショット”」

 

 右手を前に出して魔力を込めると風の弾が勢いよく発射された。

 目の前の木々は大きく揺れ、当たった箇所には分かりやすく傷がついている。

 

 貫通性能というより吹き飛ばしに優れた感じかな?

 相手を殺さず無力化させるならピッタリかもしれない。

 

「しかし、あのワーウルフ意外と強かったな」


 思い返せばスライムもそうだった。

 溶かす液体も出すスピードが思ってた以上に早かったし、ワーウルフの暴風も僕が耐えきれるか不安に感じるくらい強かった。

 

 真っ向勝負でゴリ押し、というゲームでは当たり前の戦法が少し難しい気がする。

 ゲームと現実の差?

 

「いや……」


 違う。

 ゲームだとスキルを使う前にモーションが挟まってたのに、こいつらはモーションが早くて隙が少ない。

 明らかに序盤の強さではないと思う。 


 僕が経験した序盤のレバティ・フロンティアと何かが変わっている。

 もしかして難易度がノーマルじゃなくてハードだったり……


「ま、考えても仕方ないか。油断しないように進もう」


 今はゲーム的な思考をして過酷な森の生活を誤魔化している。

 だからといって命の軽さまでゲーム基準にしてはいけない。

 

 ゲームオーバーは死と同じだ。

 やり直しなんて一切できない。


 気になる事は多いけど今は目の前のことに集中しよう。


「お?」


 森の中を散策していると、カーペットくらい大きな布が落ちていた。

 これならテントにできそうだな。

 誰が落としたのか知らないけど、ありがたく使わせてもらおう。


「”テイム”」


「っ!!」


 人の声だ。 

 木の近くに身を隠し、声がした方向を覗き見る。


「お前のテイムは便利だよなぁ」


「ふふん♪ 可愛いウサギちゃんを仲間にしちゃった♪」


「でもこいつ角が痛そ……あだっ!?」


 三人組のパーティかな?

 あんなモンスターがいたんだなぁ……と思いながら、女性冒険者がウサギのモンスターをテイムする様子を眺める。


『キュウウン……』


 おー、魔法陣にウサギが包まれている。

 神秘的でいいねぇ。

 僕もああいうスキルが欲し……


『スキル”テイム”を習得しました』


 おお!! こんな序盤にテイムを!!

 そっか、今のでテイムのスキルをコピーしたのか。

 

 どれどれ、おさらいも兼ねて能力を見てみよう。

 自分のスキルを見る時は……スキルオープンでいいのかな?

 おっ、出た出た。


 【テイム】

 下級モンスターを一体だけ使役することができる。 

 

「下級か……」


 要はスライムやゴブリンを使役できるって事かな?

 ”スキルコピー”の隠し効果を反映させてレベルMAX状態にできるのは大きいが、テイムは一体だけ。

 何体も使役できるオリジナルと比較して余りにも制限が多い。

 

 誰を使役しようかなぁ。

 下級モンスター限定とはいえ、適当にゴブリンやスライムを使役するワケにはいかないし……


 バサバサッ……


「ん?」


 羽が羽ばたく音。

 音の方向を見れば、黒い体毛に覆われたずんぐりむっくりなフクロウのようなモンスターが小枝に止まって休んでいた。

 

 うおっ、ダークオウルだ。

 下級なのに出現率が低いレアモンスターじゃん。


「空も飛べるし、それなりにスキルも優秀だから策敵に使えそうだな……よし」


 決めた、あいつをテイムしよう。


「”テイム”」


 ダークオウルへと手を向けてスキルを詠唱する。

 誰もいないからと無警戒で休んでいるダークオウルの周りに魔法陣が展開され、光の中へと包まれていく。

 

 意外と範囲広いな。

 ダークオウルも大人しくて凄く助かる。

 ゲームでも範囲を指定して魔法陣を展開、と罠のような使い方ができて便利だったんだよなぁ。


『ダークオウルのテイムに成功しました』


 ほっ、よかった。

 低級モンスターだから失敗は無いと思ってたけど、少し緊張した。

 これが上級以上だと失敗しやすくて、弱らせたり状態異常をかけたりしないといけないから大変なんだよなぁ。

 

 さーて、ここからはテイムしたモンスターの使役だ。

 ゲームだと色んな選択肢の中から選んで支持する形だったけど、現実だと選択肢は無限かな?

 とりあえず使えるスキルだけ見ておこう。


「ダークオウル、君が使えるスキルを見せてくれ」


「ん、わかった」


 おお、素直でいい子だ。

 気難しいタイプだったらどうしようかと思ったが、この感じなら上手くやっていけ……


「喋った?」


「喋ってないホー」


「いや喋ってるじゃん!?」


 モンスターが人間の言葉を話してる!?

 おかしい。モンスターは基本言葉を話さないハズ。

 話したとしても、それは最上位種か確率1%で出会える希少種しかいない。


 え、待って。

 てことはこのダークオウルって。


「君って希少種なの?」


「かもしれない」


 思わず口をあんぐりと開けてしまう。


 マジか。

 出会っちゃったのか。

 テイムしてしまったのか。

 

 とんでもない豪運を前に僕は状況がイマイチ呑み込めていなかった。


「よろしくっ、マスター♪」


「あ、あぁ……」


 ただわかっているのは、このダークオウルが人懐こくて甘えん坊だってこと。

 今も僕の足にスリスリと身体をこすり付けているし。


 なんか、とんでもない事をしちゃったな……


◇◇◇


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m(_ _)m

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