予知能力者2
アレックスは物分かりの悪い生徒を前にした教師のようにため息をついて言った。
「つまりね、殺人鬼の強行を事前に感知する能力者が必要なのよ」
「なぁんだ、それなら最初から言ってよぉ。よくわかんなかったよ。それで、アレックス。その能力者はどこにいるの?」
キティが陽気に聞いた。アレックスはさらにため息をついた。
「それがわかれば苦労はないわ。予知の能力が覚醒すれば、殺人鬼が近づいてもすぐに逃げる事ができるから、もし予知の覚醒者がいれば、おそらく生き残っている。もしまだ能力が覚醒していなければ、それを待つしかないわね」
予知能力。レイチェルはぼんやりともの思いにふけった。レイチェルの大切な親友エイミーは、最期の時おかしな事を言っていた。
あいつが正面玄関の方に行こうとしている。裏口から逃げよう。
あの時のレイチェルは気が動転していて、エイミーの言葉の意味を深く考えなかったのだが、エイミーはまるで羊男が見えていたような口ぶりだった。
「もしかしたら、エイミーが予知の能力者なのかも」
「えっ?レイチェル、今何と言ったの?」
レイチェルは無意識のうちにひとり言を呟いていたようだ。アレックスが首をかしげている。レイチェルは頭におもいうかんだ事を話した。
「エイミーがね、言ったの。あいつが正面玄関の方に向かっているって、だから裏口から逃げようって」
「・・・。そうね。もしかすると、エイミーは予知の能力に覚醒していたのかもね、」
アレックスは納得したようにうなづいてから口をつぐんだ。アレックスはレイチェルに気を使って黙ったのだ。もしエイミーが予知能力者だとすれば、生存すべきはレイチェルではなくエイミーだったのだ。
レイチェルが羊男に殺されて、エイミーが生き残れば、アレックスは生存者であるエイミーを保護しただろう。そうすれば、エイミーの能力により、ジネットたちは助かったかもしれない。そこまで考えて、レイチェルは真っ青になった。
自分がおめおめと生き残ったせいで、たくさんの人が死んでしまった。レイチェルは胸がドキドキして、呼吸が苦しくなった。
レイチェルの変化に気づいたアレックスは、レイチェルの手を強く握って言った。
「レイチェル!おかしな事考えないで!もしエイミーが予知の能力者だったなら、エイミーは覚悟を持ってレイチェルを助けたの!レイチェルが自分を責めてはエイミーに失礼よ!」
「・・・。うん、わかってる。だけどね、私がもっと早く念動力の力に気づいていたら、エイミーも助かったんじゃないかって思って、」
アレックスは眉根を寄せて黙った。レイチェルも疲れたように静かになった。
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