猿男の反撃

 猿男は、アレックス、レイチェル、キティの三方から銃を発射されているのにも関わらず、鮮やかな身体さばきで銃弾を逃れていた。


 猿男は背中に隠していたであろうナイフを両手に持つと、レイチェルたちに反撃して来た。


 アレックスは驚異的な反射神経で猿男の一撃をかわしていたが、レイチェルとキティはそうはいかなかった。


 猿男に間合いを詰められ、アッと思った瞬間に、キティは首をかき斬られ、レイチェルは肩から胸にかけて深々と斬り裂かれてしまった。


 身体が燃えるように熱かった。絶叫しそうな苦痛がレイチェルを襲った。だが泣き叫んでいる場合ではない。


 レイチェルは、吹っ飛んだキティの頭部に念動力をかけると、彼女の生首はフワフワと胴体に向かって飛んで行き、自身の胴体にくっついた。キティは手で自身の頭をギュッとグッと胴体に押し付けるような動作をした。どうやらこれでくっついたらしい。


 キティは小走りに駆け寄ってレイチェルの手を掴んだ。レイチェルの傷の痛みが少しやわらいだ。


「キティ。私は後でいいから、まずは自分の治癒を先にして!」

「大丈夫!同時にできるよ」


 心配するレイチェルに、キティは力強い笑顔で答えた。レイチェルの胸元の傷は、綺麗に治癒した。だが大量の血液が抜けてしまったため、ふらふらする。レイチェルが動けるうちに早く戦いを終えなければ。


「レイチェル!キティ!」

「大丈夫!戦えるわ!」

「うん!あたしも平気!」


 アレックスの心配の声に、レイチェルとキティは強く答えた。レイチェルは手放してしまったかたわらに落ちている鎖に念動力をかけた。


 鎖はレイチェルの身体の周りをぐるぐる回っている。まるでとぐろをまくヘビのようだ。


 レイチェルは鎖に指示を出した。猿男を捕えろ、と。鎖は意思を持った生き物のように猿男に向かって飛びついて行った。


 猿男は鎖を嫌ってアクロバットな体さばきで鎖をかわしていた。猿男は服の中に隠していたのだろうか、両手にナイフを持ち、攻撃をしかけてくる鎖に投げつけた。


 ナイフは見事鎖の輪っかに刺さり、鎖を地面に固定する事に成功した。そこに猿男の油断があったのだろう。


 レイチェルは、猿男が鎖とかくとうしている間に、アレックスに三本の鎖を作ってもらっていたのだ。


 レイチェルは三本の鎖を、ヘビが獲物にゆっくりと近づくように、猿男の様子をうかがいながら近づけていた。


 猿男が一本の鎖を地面にはりつけた直後、三本の鎖が猿男に襲いかかった。猿男は三本の鎖からのがれようとやたらめったらにあばれたが、鎖は猿男をギュウギュウと締め上げた。


 ついに猿男は地面にいも虫のように転がった。

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