キティの後悔

 レイチェルはぼう然とジネットを見下ろしていた。ジネットを助けられなかった。


「・・・。あたしのせいだ。あたし、ジネットに大丈夫って言ったのに。助けられなかった」


 レイチェルはキティのか細く震える声にギクリとした。レイチェルが正面を向くと、キティの顔が真っ青だった。これはまずい。


 レイチェルはキティに駆け寄ると、彼女を強く抱きしめた。


「キティ!それは違う!キティはジネットにできるかぎりの事をしたの。ジネットの呼吸を楽にしてあげられたじゃない。自分を責めちゃダメ!私たちはジネットを一人で行かせなかった」


 キティは静かにシクシクとすすり泣いた。レイチェルはキティをジッと抱きしめていた。


 突然、ドーンという爆発音がロッジからした。アレックスが爆弾のたぐいを使ったのだろう。遅れてドアがバンッと開き、ショットガンを持ったアレックスが飛び出して来た。


 アレックスの次に、何とも形容しがたいおかしなモノが出て来た。それは手足がとても長くて、長い手足を持てあますように背中を丸めていた。顔にはゴム製の猿のマスクをつけていた。


 猿男。レイチェルたちが倒した羊男でもない、アレックスの言うライオン男でもない、キティを襲ったニワトリ男でもない。新たな殺人鬼の姿だった。


 猿男はまるで本物の猿のようにヒョコヒョコとアレックスに近づいて来た。アレックスは充分に猿男を引きつけてから引き金を引いた。


 ドンッという発砲音、驚いた事に猿男は側転をしてアレックスの放った弾丸を避けたのだ。


「コイツは動きが素早い!動けなくしてから仕留める!レイチェル!キティ!戦闘態勢!」

「はい!」

「うん!」


 アレックスの号令にレイチェルたちはただちに反応した。アレックスは手から鉄の鎖を取り出してレイチェルに投げてよこした。レイチェルは鎖を受け取ると念動力をかけた。


 鎖はまるでかま首を持ち上げたヘビのように動いている。アレックスとキティは猿男の足元に向かって銃を発射した。猿男は側転やらバック転をして器用に避けている。


 猿男の行動に、レイチェルにはある考えが浮かんだ。レイチェルたちがこの間対じした羊男は、巨漢だった。何度も銃弾を受けても、その度に起き上がった。


 だが目の前の猿男は弾丸に当たる事を避けている。もしかすると羊男ほどの頑丈さがないのかもしれない。


「レイチェル!キティ!ヤツの足元を狙って撃って!」


 アレックスもレイチェルと同じ考えにいたったのだろう。猿男の行動を制限しようとしているのだ。


 レイチェルとキティは顔を見合わせてから拳銃を構えた。


 


 

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