レイチェルの挑戦2

 三人目の男が、夜目にも顔を真っ赤にしてどなった。


「このアマ!痛い目にあわせてやる!」


 男はポケットからバタフライナイフを取り出し、レイチェルに向けた。レイチェルはため息をついた。


 レイチェルは素手でのナイフ取りは苦手だ。アレックスのように、ナイフで刺してこようとする相手を紙一重で避けて、拘束する事もできない。キティのように的確なけりで、ナイフを持った相手の手をけり、ナイフをなね飛ばす事もできない。


 レイチェルはアレックスとキティと、何度もゴム製の安全なナイフで、ナイフ取りの練習をしたが、すべて自身の身体に当たり、これが本当のナイフだったら大量出血必死の状況だった。


 レイチェルは肉弾戦をやめ、念動力を使う事にした。レイチェルは腰に巻いている革製のベルトからナイフを三本取り出した。このナイフはアレックスが作ってくれたものだ。


 レイチェルは二本のナイフを左手で持ち、一本のナイフを空中に投げて持ち手をキャッチしながら、ナイフを構えている男に言った。


「貴方は私にナイフを向けた。それなら私にナイフに刺されてもいいって事よね?」

「やってみろよクソアマ!綺麗な顔を切り刻んでやる!」


 男たちは三人がかりでレイチェルに走り寄って来た。レイチェルは三本のナイフを念動力で浮かすと、男たちの周りに飛び回された。


 男たちは飛び回るナイフに斬り裂かれてギャァギャァと悲鳴をあげていた。この場にはキティがいないため、レイチェルは男たちの服と皮ふの表面だけをナイフで斬りつけているだけなのに、おおげさすぎやしないだろうか。


 ナイフを持った男にかんしては、レイチェルの顔を斬り刻むと宣言していたほどなのに。


 レイチェルは三本のナイフを操りながら、男たちのこっけいな踊りを見ていた。


 しまいには男たちは悲鳴を上げながら逃げていった。レイチェルの一人での度胸試しは終了した。


 ガラの悪い男たちと戦って、レイチェルの問題が浮き上がった。レイチェルにはまだ人を傷つける覚悟が無いのだ。


 アレックスとキティにはそれがある。彼女たちは責任と覚悟を持って戦っているのだ。


 レイチェルには戦う心構えが必要だった。

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